葬儀サービス「よりそうお葬式」のイメージ
葬儀サービス「よりそうお葬式」のイメージ

大企業からメガベンチャー、スタートアップまでもが参入し、競争が激化する葬儀や僧侶の手配といったライフエンディング領域。2009年には大阪に本社を置くユニクエストの「小さなお葬式」や、イオン子会社・イオンライフの「イオンのお葬式」といった、明瞭な価格設定をうたう葬儀サービスがスタート。2013年にはスタートアップのよりそう(旧社名:みんれび)が「よりそうお葬式(旧サービス名:シンプルなお葬式)」を開始した。

以降も、2018年にはDMM.comが終活ねっとを買収して葬儀業界に参入するなど、市場は混み合ってきた。だが、いずれのサービスも強みは「(既存事業者と比較した)分かりやすい料金体系」と「僧侶の派遣」だ。細かいサービス内容こそ違えど、ユーザーからすると差異が見えづらい。

競合との差別化を図るため、大型調達により、幅広いニーズに応えるプラットフォームとしての拡大を目指すのがよりそうだ。そのための資金として、同社は1月12日、シリーズEラウンドで約35億円の大型調達を実施した。内訳は、第三者割当増資が30.9億円で、 融資が4.3億円。第三者割当増資の引受先は海外機関投資家投のFidelity International、農林中金キャピタル、Sumisei Innovation Fund、博報堂DYベンチャーズ、Sony Innovation Fund by IGV、香港を拠点とするベンチャーキャピタル(VC)のHT Asia Technology Fund、そして福祉用具レンタルなどを手がけるヤマシタだ。

資金調達の詳細と今後の展開について、よりそう代表取締役社長の芦沢雅治氏に聞いた。

ライフエンディング領域のプラットフォームとして拡大を目指す

よりそうは2009年3月設立のスタートアップだ。前述のとおり2013年より、葬儀サービスの「よりそうお葬式」、そして僧侶の派遣サービス「よりそうお坊さん便(旧サービス名:お坊さん便)」を展開する。

2018年3月以降は葬儀、法要、供養などのライフエンディング領域のサービスをワンストップで提供するプラットフォーム「よりそう」として展開。今では仏壇選びを支援する「よりそう仏壇選び」や定額で海洋散骨を提供する「よりそう海洋散骨」、寺が家族に代わって墓を供養する「よりそう永代供養墓」なども提供する。今後同社では調達した資金をもとに、既存サービスの拡充、そしてさらなる新規サービスの創出を目指す。

よりそう代表取締役社長の芦沢雅治氏
よりそう代表取締役社長の芦沢雅治氏

「我々は“ライフエンディングプラットフォーム構想”を掲げ、葬式、供養、相続手続きなどの一元サポートを目指してきました。今後も調達した資金をもとに、より強固なプラットフォームを目指していきます」(芦沢氏)

今回の資金調達には多くの事業会社が参加しており、芦沢氏は各社とのシナジーを活かした事業提携も進めていきたいと話す。例えば、住友生命とは保険領域(編集部注:Sumisei Innovation Fundは住友生命のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC))、ヤマシタとは介護領域での連携を検討する。加えて「葬儀社や僧侶向けの業務支援サービスも提供していきたい」とも同氏は言う。

芦沢氏はよりそうの売上や評価額については明言しなかったが、テレビCMの効果もあり、2021年上半期の問合せ総数は前年同期比で「大幅な伸長を果たした」と説明する。

2社の海外投資家もラウンドに参加

今回の資金調達には2社の海外投資家が参加している。芦沢氏いわく、市場の規模や可能性、そしてサービスの形式に注目が集まり、海外投資からの出資に繋がったという。

日本は高齢化・多死社会化が進む「課題先進国」だ。内閣府が公表する「令和3年版高齢社会白書」によれば、2040年には年間死亡者数が約168万人に達する見通しのため、市場規模は今後もさらに拡大していく見込みだ。

「課題先進国だからこそ、ライフエンディング領域のサービスは他国に先駆けて発展してきたのだと思います。海外では葬儀の比較メディアは存在してきましたが、葬儀をパッケージ化し、提携パートナーを募り、明瞭価格で全国展開するようなサービス形式は斬新だと、海外投資家から注目を浴びました」(芦沢氏)