ミラティブ代表取締役の赤川隼一氏
ミラティブ代表取締役の赤川隼一氏

ゲームとゲーム実況を融合した体験「ライブゲーミング」が、ゲーム業界における次のトレンドになるかもしれない。

スマホゲーム実況サービス「Mirrativ」を展開するミラティブは、2021年12月における同サービス上でのユーザー課金売上のうち、ライブゲーミング関連のみの売上が1億円を突破したことを明かした。

内訳は大きく「自社開発のオリジナルゲーム」と「他社が展開する既存ゲームとのライブゲーム連携」の2つだ。

前者に関してはアクションレース型のライブゲーム「エモモバトルドロップ」が伸びており、12月には単体の売上が月間で5000万円を超えた。後者についても以前から進めてきたゲーム会社との連携が広がっていて、2021年12月には75本のスマホゲームと共同でコミュニティ施策に取り組んだ。

既存ゲームとのライブゲーム連携による売上も単月で約5000万円規模に成長しており、これらとエモモバトルドロップを含めたオリジナルゲームの売上を合わせた月商が1億円を突破したという。

ゲームとライブ配信の融合によって生まれる新たなゲーム体験

ミラティブが2021年2月から運営しているエモモバトルドロップは、配信者が視聴者と4人でチームを組み、他チームと対戦をしていくアクションレース型のゲームだ。

エモモバトルドロップの画面イメージ
エモモバトルドロップの画面イメージ

内容はシンプルで、武器や特殊能力を使いながら相手プレイヤーをレース上から落としていき、最後まで生き残ったチームが勝者となる仕組み。現在はMirrativ内で遊べるゲームとして、毎月一定期間のみ配信されている。2021年12月1日〜9日に開催されたSeason10では、9日間で約5000万円の売上を達成した。

エモモバトルドロップの大きな特徴が「視聴者がゲームに介入できる」こと。配信者から視聴者をリアルタイムにゲームに誘えるため、視聴者は配信者の声を聞きながら一緒にゲームを楽しめる。またゲーム内で使えるマシンや特殊効果のついたアバターをギフトアイテムとして配信者にプレゼントできるため、直接ゲームをプレイする以外の方法で介入することも可能だ。

ミラティブ代表取締役の赤川隼一氏によると、同社では2018年からライブゲーミングに関連するR&Dに取り組んでおり、エモモバトルドロップはそこから生まれたタイトルの1つだという。

なぜ今、ライブゲーミングなのか。背景にあるのが「ゲーム実況」のマスコンテンツ化だ。

ゲーム実況が広がったことで「ゲーム実況映えするかどうか」が、ゲームがヒットする重要な要素の1つになってきたと赤川氏は話す。実際にゲームクリエイターたちの間でも、ゲーム実況で盛り上がることを意識しながら開発に取り組むような流れが生まれ始めているという。

このマクロな変化にゲーム会社や実況プラットフォームが対応することで「ライブ配信やゲーム実況とゲームの融合」が加速し、ライブゲーミングとして新たなゲーム体験が広がっていくというのが赤川氏の考えだ。

エモモバトルドロップにも取り入れられている「ライブ配信ならではの一体感」や「配信中のゲームに視聴者が介入できる体験」はライブゲーミングの重要なポイント。これまでもゲーム実況では「コメント」を通じて配信者と視聴者がインタラクティブに交流できたが、「協力プレイ」や「ギフトやアイテムを通じた介入」など、その関わり方はもっと多様化していく可能性がある。

ゲームとゲーム実況・ライブ配信の融合が加速していくことで、ゲーム体験にも変化が生まれ始めている
ゲームとゲーム実況・ライブ配信の融合が加速していくことで、ゲーム体験にも変化が生まれ始めている

ライブゲーミングの投資加速、新タイトル開発や既存ゲームとの連携強化へ

ミラティブではこうした流れを踏まえて、数年前から大きく2つのアプローチでライブゲーミングにまつわる取り組みを進めてきた。

1つはエモモバトルドロップのようにライブゲーミングのモデルケースになるようなタイトルを自社で開発すること。たとえばソーシャルゲームの黎明期においてもディー・エヌ・エー(DeNA)の「怪盗ロワイヤル」やグリー(GREE)の「釣り★スタ!」など、いくつかのタイトルがお手本となり、それをオープン化するようなかたちでさまざまな開発者が参入し、市場が急速に広がった。

ディー・エヌ・エー出身の赤川氏は当事者の1人としてその時代を経験しており、ライブゲーミングの市場を作っていく上でも同じような取り組みが必要だと考え、社内でオリジナルゲームの開発に取り組んできたという。

またオリジナルゲームの開発と並行して力を入れてきたのが、ゲーム会社との連携による「既存ゲームのライブゲーミング化」だ。

既存のゲームとMirrativが連携することで実況ニーズに対応し、ゲームの売上や継続率の向上に繋がる事例が増加。冒頭でも触れたように、2021年12月には共同で取り組みを実施するスマホゲームタイトルが75本にまで拡大している。

今後ミラティブではライブゲーミングに大規模な投資を行い、取り組みを加速させていく計画。ゼロからライブゲーミングに最適化したタイトルを生み出すという観点では、先行開発パートナーを募集し、エモモバトルドロップに続くタイトルを協同開発していくことを目指す。将来的には外部の開発者が独自でMirrativと連携したゲームを作れるように、API(アプリケーション・プログラム・インターフェース)やSDK(ソフトウェア開発キット)のオープン化にも取り組む予定だ。

また他社との連携による既存タイトルのライブゲーム連携も引き続き進めていくという。