
- 3つの領域で生まれる「新しい職種」を狙う
- 専門化によって生まれる新職種
- 職種の境界線上から生まれる新職種
- 主戦場が移った際に生まれる新職種
リクルートからビズリーチ、メルカリ、スマートニュースと、次々にユニコーン企業への転職を実現してきた森山大朗氏。7回の転職を経て、今ではテクニカルプロダクトマネージャーとして開発をリードする立場だが、新卒時代は人事や営業職からキャリアをスタートしたという。
その森山氏がどのようにテック領域の急成長企業を渡り歩き、テック人材として活躍できるようになったのか。その秘訣を森山氏は「急成長企業に身を置くこと」と断言する。
テック企業の最前線で働くための「自分という商品」の設計の仕方、市場価値をつくる方法のひとつとして森山氏は、まだ名前のついていない「新しい職種」を狙うことを挙げている。それは、いったいどのような職種なのか。森山氏に3つの具体的なパターンを解説してもらう。
※本稿は、森山大朗『Work in Tech!(ワーク・イン・テック!) ユニコーン企業への招待』(扶桑社)を一部抜粋・再編集したものです。
3つの領域で生まれる「新しい職種」を狙う
世の中には「名前がついてない職種」が常にあります。
テクノロジーが世界を変えていく最前線で働いていると、すでにニーズがあって、仕事をしている人もいるのに、「まだそのスキルや職種、ポジションに明確な呼称がついていない」というケースを頻繁に目にします。
そうした定義される前の「新職種」は、まだ競争相手が少ない状態であり、キャリアを考えるうえで有効な選択 になり得ます。
ここでは、その「新職種」が生まれるパターンを3つほど紹介しましょう。
専門化によって生まれる新職種
例えば「ソフトウェアエンジニア」という職種は良くも悪くも、その得意分野に応じて「バックエンド」「フロントエンド」というふうに、専門特化するように枝分かれしていきました。
同じように、僕が以前、Airbnbのデータサイエンス系の募集要項を眺めていたら、データサイエンスの職種が3種類の専門に分かれていたのです。
① データサイエンス:アナリスト
② データサイエンス:マシンラーニングスペシャリスト
③ データサイエンス:統計家
このように3つに分かれた背景が、なかなかに興味深いものでした。一概にデータサイエンスといっても、「どういったスキルをメインに使っていくのか」「どの分野に明るいのか」によって、現場業務における向き・不向きに違いが出たらしいのです。
なかでも興味深いのは「アナリスト」と「統計家」の違いです。
アナリストは分析業務に明るく、かなり複雑なSQLでも自分で書き、データを集計するのは朝めし前です。しかし、数学的な専門知識が豊富であるとは限りません。
一方で、集計された数字に表れる差に果たして意味があるのか、それとも誤差の範囲なのかという確かな見解を導くには別のスキル、つまり統計スキルが必要です。しかし、そういう人材は、アナリストのようなデータ集計のスキルに乏しかったりします。
そこで、統計に明るい彼らを「別職種」としてくくり、アナリストと区別したというわけです。
マシンラーニングを扱う職種にも「リサーチャー」という、世界中の論文を読んで改善の種を探す仕事もあれば、実際に論文の内容を自社のシステムに落とし込み応用していく「アプライドエンジニア」という職種もあり、枝分かれして新職種が生みだされてきました。
「テクニカルプロダクトマネージャー」、通称「Tech PM」や「TPM」と呼ばれる職種も、プロダクトマネージャーが、より高度な技術を扱える方向に専門特化したことで出現した新職種です。
あらゆる職種は、生まれたその瞬間から何かに特化したり、細分化していく圧力にさらされているのです。
職種の境界線上から生まれる新職種
職種や部門の境界線上を行ったり来たりしながら介在価値を発揮している人に、あとから名前がつくケースがあります。
プロダクトマネージャーという職種はエンジニアの素養を生かして開発をリードする「プロダクトの責任者」であり、ミニCEOとも呼ばれるその管掌範囲は、ほっておくと無限に広くなる傾向があります。
SaaSなどではまさにそうですが、プロダクトの性質によってはセールスサイドやカスタマーサクセスへの深い理解も必要で、とても一人では手が回らないわけです。
そこで、プロダクトマネージャーと対をなすようにしてセールス側から現れたのが「プロダクトスペシャリスト」という新職種でした。
彼らのミッションは、専門分野への特化というよりもビジネスとプロダクトの境界線上に立って橋渡しをする役割です。
シリコンバレーに出張した際、Google本社のオフィスで様々な“グーグラー”たちに話を聞く機会があったのですが、Googleの組織構成についての話になった際に、この「プロダクトスペシャリスト」という職種を知りました。
プロダクトや開発サイドではなく、セールスサイドに所属するプロダクトスペシャリストが、お客さまにもっとサービスを使ってもらうためにはどうするか、市場をどう攻略するか、日々情報収集して戦略を立てていると教えてもらったのです。
主戦場が移った際に生まれる新職種
この2つとは別に、「新しい領域に、既存の職種が装いも新たに現れる」というパターンもあります。
例えば、最近はリモートが浸透して、オンラインイベントが当たり前になってきました。そこでは、これまでイベント企画や運営する仕事を担当していた人でも、オンライン上で快適なイベントを開催するためには別のITスキルが必要になってきています。

また、「インスタグラム接客」という言葉も出てきているように、ソーシャルコマース、つまりSNS上でお客さまが動画やライブを見ながらモノを買うようになっています。そこでは、既存の接客業でのスキルが、また一味違うかたちで生かされるはずなのです。
しかも、FacebookがMetaへと社名変更したことがきっかけで、名だたる企業によるメタバース領域への参入が増えてきました。それに関連して、仮想空間上のショップでの商品説明のアルバイトといった「仮想空間でのお仕事」も出てきています。
まさに「店頭で商品説明をする」という既存の仕事が、オンライン上や仮想空間上に装いも新たに復活してきているのです。
※この記事にあるリンクを経由して商品を購入すると、アフィリエイト契約により、編集部が一定割合の利益を得ます。