• SaaS系スタートアップの資金調達が相次ぐ
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資金調達やプロダクトのリリース、ファンド組成、人事異動──日々、さまざまな動きがあるスタートアップ業界。今週(2月7日から2月10日)はどんな動きがあったのだろうか。

いま、押さえておくべき「スタートアップ業界のニュース」をDIAMOND SIGNAL編集部が独自の視点からピックアップしてお伝えする。今週はSaaS系のスタートアップの調達が相次いだほか、D2C企業の調達、CVCの設立などがあった。

SaaS系スタートアップの資金調達が相次ぐ

健康管理システム「Carely」を開発するiCAREが19億円の資金調達

従業員の健康管理を企業が経営的視点から考え、戦略的に健康の促進に投資する、いわゆる「健康経営」の考え方がここ数年、広がりつつある。特にコロナ禍になってから、テレワークの促進などによる環境の変化やストレスによって、心身に不調をきたす人も増加。より一層、企業が社員の健康の維持、増進に取り組むことが求められるようになっている。

そうした中、従業員の健康診断やストレスチェック、長時間労働の状況把握や産業医面談の記録をクラウド上で管理できる健康管理システムとして、ニーズが拡大しているのが「Carely(ケアリィ)」だ。

もともと、Carelyは人事・総務が抱える健康管理(健康診断・ストレスチェック・長時間労働対策等)を自動化し、業務工数を削減するSaaSとしてサービスを提供していた。データの一元管理や業務の自動化により、人事労務担当者や産業医・看護師などの産業保健スタッフの業務負担軽減をサポートしていたが、2020年9月からCarelyに蓄積された健康ビッグデータを活用した健康経営コンサルティングを開始した。

2022年1月時点の累計契約企業数は500社を超えており、アカウント数はサービス開始の2016年から年平均成長率121%で伸び続けているという。

運営元であるiCAREは成長をさらに加速させるべく、2月7日にインキュベイトファンド、グローバル・ブレイン、Salesforce Ventures、三井住友海上キャピタルを引受先とした第三者割当増資および複数の金融機関からの融資によって総額19億円の資金調達を発表した。

今回調達した資金はCarelyの認知拡大、健康ビッグデータをより一層活用するプロダクト開発に加えて、人材採用と組織体制の強化に充てる予定とのこと。

NTTデータ経営研究所が実施した「働く人のメンタルヘルスとサービス・ギャップの実態調査」によれば、働いている人の約2人に1人において精神的健康度が低く、うつ病や不安障がいなどの精神疾患を発症するリスクが高いという。また、同調査によればコロナ禍以降、6割の人がストレスや悩みが増加しているそうで、社員の健康管理の重要性はますます高まりそうだ。

顧客体験のパーソナライズを目指すMicoworksが12億円の資金調達

スマートフォンが普及し、LINEやInstagramなどアプリで他者とコミュニケーションできるようになっても、いまだにマーケティングや販促活動のツールといえばメールや電話、チラシやハガキなどが主流。

個人の情報収集の変化に合わせ、情報発信の方法を変えていく必要性を感じている企業も多くいるが、なかなか対応できていないのが現状だ。

そうした企業に向けて、顧客一人ひとりの興味や関心に応じたメッセージを最適なタイミングで届けるコミュニケーションプラットフォーム「MicoCloud」を提供しているのが、Micoworksだ。同サービスはLINE公式アカウントを起点にCRM(顧客関係管理)を構築しパーソナライズされたコミュニケーションでファン化を促進、企業の売上増加に貢献するプラットフォーム。また複数拠点・複数スタッフからのアクセスやさまざまなデータの一元管理によって業務効率化も実現する。

BtoC事業を展開する企業を中心に、美容サロンや学習塾、百貨店や小売業、人材紹介業や不動産業など、幅広い業種への導入が進んでおり、2021年12月末時点で導入アカウント数は500アカウントを超え、約500万人のエンドユーザーに利用されているという。

現在はLINEを起点にサービスを提供しているが、将来的には他サービスへの対応や、年代、性別、居住地だけでなく顧客一人ひとりのリアルタイムデータを反映したマーケティング活動をする「ダイナミックセグメンテーション」を活用し、顧客体験のパーソナライゼーションの実現を目指すという。そのための資金として、2月9日にMicoworksはALL STAR SAAS FUND、Eight Roads Ventures Japanを引受先として第三者割当増資および新株予約権付社債によって、総額約12億円の資金調達を実施した。

今回調達した資金をもとに開発体制を増強し、MicoCloudのさらなる機能拡充やEC特化の新規プロダクト開発に注力するほか、セールスやマーケティングへの投資、CxOクラスやマネージャークラスの採用を強化していくという。

ビデオメッセージで顧客対応を効率化する「Quden」提供のジパンクが5000万円の資金調達

コロナ禍でリモートワークが促進された2020年7月ごろ、米Evernoteの創業者であるフィル・リービン氏がZoom、Google Meet、YouTubeなどの動画システムで使える背景やエフェクト追加アプリ「mmhmm」を発表したのを覚えているだろうか。

ZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議におけるビデオコミュニケーションをより伝わりやすく、より魅力的にする目的で開発された同アプリは、オンライン会議を退屈に感じている人も多かったことから、瞬く間に注目を集めた。

そんなmmhmmと似たようなコンセプトのもと、オンラインにおける話者の映像とPC画面を自由に組み合わせた動画を簡単に作成・共有できるサービス「Quden(クデン)」を提供しているのが、ジパンクだ。

Qudenは、テクニカルサポートや自社サービスの機能説明といったカスタマーサクセス業務に活用することで、顧客対応の効率化や顧客満足度の改善に役立てることができる。また、社内トレーニング用動画コンテンツや業務フィードバックに用いることで、繰り返し発生する定型業務やビデオ会議の削減、組織の生産性を向上することも可能だ。

Qudenは2021年9月にベータ版として提供を開始し、2022年2月からフリープラン、機能を拡張したチームプラン(年払いは月額750円、月払いは月額950円)を加えて正式リリースされた。今後、プロダクト開発体制を強化するためにジパンクは2月7日、One Capitalから総額5000万円の資金調達を実施した。

コロナ禍で時間や場所に制約のない働き方が求められるようになり、オンラインでコミュニケーションを取る機会は引き続き増えていくだろう。そうした中、Qudenは効率的にコミュニケーションをとる方法として、企業から重宝されそうだ。

その他のスタートアップニュース

QPS研究所、シリーズBセカンドクローズで約10.5億円の資金調達を実施

100kg級小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うQPS研究所は2月8日、2021年12月9日に公表されたシリーズBラウンド ファーストクローズに続き、スパークス・アセット・マネジメント、SMBC日興証券、みずほキャピタル、山口キャピタル、大分ベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、新たに約10.5億円の資金調達を実施した。ファーストクローズの38.5億円とあわせ、シリーズBラウンドでの調達資金は総額49億円となった。

VRサービスを開発するHIKKYがシリーズAのセカンドクローズで5億円の資金調達

VRイベント「バーチャルマーケット」をはじめとしたVRサービスの開発ソリューションを提供するHIKKYは2月8日、メディアドゥを引受先とした第三者割当増資によって、シリーズAのセカンドクローズで5億円の資金調達を実施したと発表した。

両社は2022年1月18日に資本・業務提携の締結も発表している。HIKKYは2021年10月にNTTドコモを引受先としたファーストクローズで65億円を調達しており、シリーズAラウンドで総額70億円の資金調達となった。

クラウド型住宅ローン業務支援システムを提供するiYellが35億円の資金調達

住宅事業者向けクラウド型住宅ローン業務支援システムを提供するiYellは2月9日、フィデリティ・インターナショナル、ソフトバンク、三井住友信託銀行、SREホールディングスなど合計15社を引受先とした第三者割当増資により合計35億円の資金調達を発表した。

LA発和菓子D2C提供のCashi Cake inc.が約1.2億円の資金調達

ロサンゼルスで和菓子D2C「MISAKY.TOKYO(ミサキ・トウキョウ)」を筆頭に、海藻を中心としたフードテック事業を展開するCashi Cake inc.は2月9日、千葉道場ファンド、ココナラスキルパートナーズ、Headline Asiaなどから約1.2億円の資金調達を発表した。

吸水ショーツのブランド「Nagi(ナギ)」を運営するBLASTが1.5億円の資金調達

吸水ショーツのブランド「Nagi(ナギ)」を運営するBLASTは2月9日、エンジェル投資家の赤坂優氏らが運営するAAファンド、ANRI、セゾン・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資および日本政策金融公庫などからの融資を合わせ、総額1.5億円の資金調達を発表した。

ココナラ、協調投資に特化したファンド「ココナラスキルパートナーズ」を設立

スキルマーケット「ココナラ」などを運営するココナラは2月9日、100%出資の子会社「ココナラスキルパートナーズ」を設立。シード・アーリーステージの起業家と、志を支援したいスキルパートナーとの出会いを生み出す、マッチングプラットフォーム型のベンチャーキャピタルを立ち上げた。

医師向け臨床支援アプリ「HOKUTO」の運営元が8億円超の資金調達

医師向け臨床支援アプリ「HOKUTO」を運営するHOKUTOは2月8日、グローバル・ブレイン、シェネシアベンチャーズ、GMO VenturePartners、グリーベンチャー、East Venturesと個⼈投資家などから2021年12月に8.25億円の資金調達を実施していたことを発表した。

SaaS事業者向けのSaaSを提供するアルプが12.5億円の資金調達

SaaS・サブスクリプション事業者のための販売・請求管理SaaS「Scalebase(スケールベース)」を開発するアルプは2月9日、グロービス・キャピタル・パートナーズ、DNX Ventures、GMO VenturePartners、電通ベンチャーズから総額12.5億円の資金調達を発表した。