• 短期分割が中心の海外、一括後払い中心の日本
  • 日本ではユーザーが安心を求めて後払いを利用
  • 後払いのニーズはBtoBでも同じ

モバイル決済サービスのSquareがオーストラリアの後払いサービス「Afterpay」を3兆円超で買収したほか、スウェーデン発の後払いサービス「Klana」の企業価値が5兆円を突破するなど、海外のBNPL(Buy Now, Pay Laterの略:後払い決済)市場も大きな盛り上がりを見せている。

連載第2回となる本稿では、ネットプロテクションズ代表取締役の柴田紳氏が日本、そして世界におけるBNPLの利用状況について解説する。

短期分割が中心の海外、一括後払い中心の日本

世界に目を向けてみると、BNPLの大手ベンダーとして決済取扱高が最も大きいのはスウェーデン発のKlarnaです。彼らは2005年にビジネスを展開するなど、グローバル企業の中でも早いタイミングでBNPL市場に参入しています。その背景には、北欧にも日本と同じように後払いの文化があったからだと思います。2021年に日本総研が実施した調査によれば、Klarnaの決済取扱高は年間で約3.7兆円と言われており、世界最大のBNPL事業者になっています。

そのKlarnaに続くかたちで、オーストラリアのAfterPayは約9091億円、米国のAffirmは約4907億円の決済取扱高を記録しています。これらのグローバルベンダーは、複数の国でサービスを展開しているのが特徴ですが、私たちネットプロテクションズは、一部台湾にも進出しているものの、基本的には日本でビジネスを行っています。現在の決済取扱高は、年間約4300億円まで成長しています。

またBNPLのサービスには、一括の後払い、短期の分割払い、長期の分割払いの3つがあります。Klarnaは一括の後払いも提供していますが、海外のBNPLベンダーの多くは4分割など短期の分割や長期分割のサービスがビジネスの中心となっています。

それに対して、ネットプロテクションズでは国内向けに請求書型の「NP後払い」、スマホ型の「atone」といういずれも一括の後払いサービスを提供しています。他の国内BNPLサービスも一括の後払いが中心。このように分割が多い海外とは異なり、国内市場は独自の一括後払いサービスを中心に成長してきた背景があります。

日本ではユーザーが安心を求めて後払いを利用

欧米豪の地域では、クレジットカードからBNPLに決済ニーズがシフトしている現状もあります。クレジットカードで分割払いをすると手数料がかかるため、分割払いでも手数料のかからないBNPLサービスが人気となっているのです。また東南アジア地域ではECの急成長はあるものの、もともとクレジットカードの保持率が低いため、BNPLが主流となっています。

こうした海外の動きに対して、日本は世界とあまりリンクしておらず、「安心」をキーワードにBNPLの価値が独自に普及していきました。

日本では情報流出の懸念などから、「ECサイトでクレジットカードを使うのが怖い」という感覚があります。そのリスクを回避したいというニーズにBNPLが貢献してきました。そのため私たちは、「後払いは安心だ」と伝えることを大事にしています。

例えば、日本の通販でよく利用されている「代引き」も、後払いに近い決済と言えるでしょう。これも今までは安全な決済方法と思われてきましたが、荷物を配達してきた人に対応して直接支払いをするのが嫌な人もたくさんいます。また、荷物が届いた際にいちいち現金で払わなければならないのも、面倒だということもあります。

実際にネットプロテクションズの後払いサービスを選択するユーザーは40代が最も多く、20代から50代の幅広い層に使われています。中でも女性の利用率が高く、さらにすでにクレジットカードを保有している人の利用率も70%と高い数値です。これは若者のクレジットカードの代替と言うよりも、買い手となる消費者にとって安心感がある決済方法として選ばれているのではないか、と私たちは分析しています。

後払いのニーズはBtoBでも同じ

ネットプロテクションズでは、海外BNPLベンダーのように分割後払いでビジネスを拡大する方針をとっていません。その代わりにBtoC向けの後払いだけでなく、BtoBの後払いサービス「NP掛け払い」を2012年から提供することで、ビジネスの幅を拡げています。

実は後払いのビジネスモデルを考えていた当初のメモに、「BtoCだけでなくBtoBのビジネスもやる」と書いてありました。そういう意味では当初の想定通りにビジネスを展開していることになります。当時は5年で実現できると思っていましたが、予想以上に難易度は高くもう少しかかってしまいました。その分経験も積み、今では自信を持ってサービスを提供できています。

NP掛け払いの請求書送付先企業は41万社を突破。中小企業白書によれば日本の中小企業数は359万社とのことなので、8社に1社がNP掛け払いを利用しているほどの規模感にまで成長させることができています。