カジュアル面談サービス「Meety」は2021年の8月からユーザーを拡大し、現在は月間で7万人以上が活用する
カジュアル面談サービス「Meety」。トークテーマを軸に企業の中の人と、その人に話を聞きたい人をマッチングする
  • ミートアップ支援サービスからスタートも、コロナで大打撃
  • スタートアップ採用激化で「ファンベース型の採用」が重要に

オンラインでカジュアル面談が実施できるサービス「Meety」が好調だ。

2021年8月から急速にユーザーを増やし、現在の月間利用者数は7万人を超える。スクラム採用(全社が一丸となって取り組む採用手法)を加速させるためのツールとしてMeetyを取り入れる企業が増えており、すでに500社以上が活用している。

Meetyは企業の「中の人(面談を募集したいユーザー)」が自分の話せるトークテーマをサービス上に掲載し、それに興味を持った個人をマッチングする仕組みだ。

企業が求人を掲載できるメディア自体はいくつも存在するが、Meetyの場合はあくまでも企業の中の個人が主体となり、各々がコンテンツを作る。そのため応募するユーザーはあらかじめ「誰と」「どのようなテーマで話ができるのか」がわかった状態で、申し込める。

掲載されるコンテンツも従来の採用サイトとは異なり、Meetyには“一見採用には直結しないようにも思える”コンテンツが多い。「信託型ストックオプションの詳細をお話します」のように特定のノウハウを共有するようなものから、「(ゲームの)スプラトゥーンを一緒にやりたい人募集」など一緒に趣味を楽しむ仲間を募るものまで、採用サービスとは思えないようなコンテンツがいくつも存在する。

こうしたコンテンツがMeetyの特徴になっていると同時に、企業の採用においてもプラスに働いているのだそう。Meetyで代表取締役を務める中村拓哉氏によると、実際にMeetyをうまく活用している企業ではこうした参加ハードルが低いコンテンツを取り入れながらいろいろな人材との接点を設け、会社のファンを増やしながら採用活動を進めているという。

Meetyが活用されるシーンと活用用途。会社やチームの紹介だけでなく、ノウハウの共有や同職種での交流など参加ハードルの低いテーマのコンテンツも多い
Meetyが活用されるシーンと活用用途。会社やチームの紹介だけでなく、ノウハウの共有や同職種での交流など参加ハードルの低いテーマのコンテンツも多い

ノウハウの共有や同じ職種同士での交流を育む場所としてはミートアップや勉強会がその役割を担うことが多かったが、こうした機会もコロナ禍で減少してしまった。Meetyはその受け皿としても活用されており、2021年10月からは1対1のカジュアル面談に加えて、10人まで同時に参加できるグループトーク機能の提供もスタートしている。

ミートアップ支援サービスからスタートも、コロナで大打撃

Meetyは2019年5月の創業。もともとは中村氏が前職のSpeeeで採用活動に携わっていた際の経験や当時の課題感を踏まえ、企業のミートアップを支援するサービスを手がけていた。

同社にとって1つの転機となったのがコロナ禍だ。立ち上げ自体は順調に進んだものの、コロナの影響でミートアップ自体が激減。事業の方向転換を余儀なくされた。

別領域も含めて複数の事業案を検討したが、最終的には“カジュアル面談”を軸に採用領域で再び挑戦することを決めた。カジュアル面談に着目したのは、50人以上へのヒアリングを通じて「カジュアル面談というていで行ってみたが実際は選考だった」「どんな人と話をするのかが当時までわからない」など改善点が多く見つかったからだ。

Meety代表取締役の中村拓哉氏
Meety代表取締役の中村拓哉氏

2020年10月に現在のかたちで再スタートを切ったが、本格的に成長軌道に乗ったのは約10カ月後の2021年8月ごろから。LayerXなど急成長企業の経営陣を始めスタートアップ領域で名の知れた個人が使い始めたことや応募ハードルの低さなどをきっかけに、SNSを通じてサービスの認知度が広がった。

「ようやく自分たちの価値が明確になってきました。応募するユーザー側にとっては1番気軽に企業とコミュニーションが取れる場所であり、企業側にとっては全員採用を後押しすることで採用力を底上げするメディアだと考えています。ユーザーはカジュアル面談が保証された状態で、自分が気になった人と直接つながれる。一方で企業はMeetyを活用することで経営者や人事だけが頑張るのではなく、全メンバーが自発的に採用に関わるムードを醸成しながら採用活動に取り組むことができます」(中村氏)

スタートアップ採用激化で「ファンベース型の採用」が重要に

冒頭で触れた通り現在Meetyの月間利用者数は7万人以上、利用企業数は500社以上となっている。

直近3カ月でも1カ月当たりに公開されるカジュアル面談の数は平均で1000件を超えており、平均2200件以上のマッチングが発生しているそうだ。今のところは利用企業のほとんどがIT系だが、パイオニアや鹿島アントラーズなど、少しずつ異業種にも広がり始めているという。

Meetyの利用が増えてきている背景には、スタートアップを中心とした採用市場の変化も大きく影響している。

近年はエンジニアを筆頭に、スタートアップにおける人材獲得競争が激化。少しでも優秀な人材を採用するための仕組みとして信託型のストップオプションやフルリモートワークなどの環境を整える企業が増えているほか、副業や業務委託による採用も珍しく無くなってきた。

転職エージェントに通常の手数料より多くの金額を還元する「フィーアップ求人」も増加傾向にあり、転職エージェントのギークリーの調査によると年収の100%分の手数料を支払うケースもある。

このように採用の難易度が高くなってきているからこそ、自社の認知度を広げていくための取り組みやブランド作りの重要度が今まで以上に増している。中村氏が言うところの「ファンベース採用」だ。

Meety上に会社ページのようなものを開設する「ウラ凸」と呼ばれる企画も好評
Meety上に会社ページのようなものを開設する「ウラ凸」と呼ばれる企画も好評。最近では資金調達などのタイミングに合わせて、複数の社員がMeetyのコンテンツを作り、全社で採用に取り組むような例も増えてきている

一方で「これだけ市場が変わってきているにも関わらず、候補者の体験自体はあまり変わっていない」というのが中村氏の考え。求人サービスのスカウトの体験やカジュアル面談の体験など、候補者体験の観点では改善できる余地はまだまだ残されており、それがMeetyにとっては事業のチャンスにもなりうるという。

同社では2021年3月にHIRAC FUND、ANOBAKA、XTech Venturesを引受先とする第三者割当増資により総額1.9億円を調達し、サービス開発を進めてきた。これまでは完全無料でサービスを展開してきたが、2022年内には企業向けの有料プランも提供する計画だ。

「現時点では(スタートアップなど新興企業を中心とした)狭いコミュニティの中で、熱量の高いユーザーや企業の方々に使っていただいている状態です。今後の課題は優れた候補者体験を実現しながら、どこまで広げていけるか。特に有料プランを始めると企業の採用に目線が行ってしまいやすくなると思いますが、今後も候補者体験にこだわってチャレンジを続けていきます」(中村氏)