家具のサブスクリプションサービス「subsclife」
ソーシャルインテリアが展開する家具のサブスクリプションサービス「サブスクライフ」
  • 600ブランドとタッグ、約12万種類の商品をサブスクで展開
  • 法人向けのサブスクが拡大、SDGs/ESG対応の目的で導入する企業も増加
  • 22億円調達で事業強化、家具の循環型社会づくり推進目指す

製品を“所有”するのではなく、必要な時に必要な分だけを“利用”する──。さまざまな領域に広がる「モノのサブスクリプションサービス」の中でも、この新たな選択肢が浸透し始めているのが家具や家電のサブスクだ。

2018年にスタートした「サブスクライフ(subsclife)」は代表的な家具のサブスクサービスの1つ。600のブランドとタッグを組み、約12万種類の新品家具や家電を月額500円から手軽に利用できる仕組みを作っている。個人でも法人でも利用できるが、現在は特に法人向けのサービスが好調で契約企業数は1000社を超えた。

運営元のソーシャルインテリア(subsclifeより社名変更)では家具のサブスクに加え、2021年1月よりメーカーの遊休在庫や法人のリユース品をお得に買える「サブスクライフ オフプライス」を始めるなど事業の幅を広げているが、今後さらにこれらの取り組みを強化していく計画。そのための資金として以下の投資家を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資により、総額約22億円を調達した。

  • JICベンチャー・グロース・インベストメンツ
  • サイバーエージェント・キャピタル(既存株主)
  • みずほキャピタル(既存株主)

600ブランドとタッグ、約12万種類の商品をサブスクで展開

現在ソーシャルインテリアでは個人向けの家具サブスク、法人向けの家具サブスク、家具のオフプライスマーケットという3つの切り口でサービスを展開している。

家具のサブスクについてはこれまで顧客種別にかかわらず、サブスクライフというブランドに統一していたが、社名変更と合わせて法人向けのサービスを「ソーシャルインテリア オフィス構築支援」として切り分けた。またサブスクライフ オフプライスについてもローンチ時の「subsclife SHARE」から名称を変えて再スタートを切っている。

主軸事業であるサブスクサービスの特徴は「豊富な商品ラインナップ」だ。

もともと2018年3月にベータ版をローンチした当初は自社で製造した家具を中心に扱っていたが、ユーザーが伸び悩んだことから方向性を転換。既存の家具ブランドとタッグを組むかたちに変え、2018年9月に現在の名称で正式にサービスを始めた。

大きかったのが、当時から新品の家具のみを扱い、返却された家具は二次流通業者に販売する方針で事業を展開してきたこと。このやり方であれば同じ家具を何度も使ってもらうことで利益を積み上げるモデルとは異なるため、既存の家具ブランドと対立しにくい。結果的にメーカーとの取り組みが加速し、今では連携するブランドが600まで増加。サブスクライフの大きな強みになっている。

ソーシャルインテリア代表取締役の町野健氏
ソーシャルインテリア代表取締役の町野健氏

ユーザーの視点では「使い続けても商品価格(定価)を超えない」点がレンタルとは異なるポイントだ。ユーザーは使用期間満了後に「継続」「購入」「返却」の3つの選択肢から好きなものを選ぶが、継続する場合でも商品価格に達すればそれ以上は課金されないため、長期間にわたって使いやすい。

また2021年に始めたサブスクライフ オフプライスを通じて、サブスク事業で返却された家具やメーカーが保有する有休在庫を販売できるマーケットプレイスを構築。家具を保有するメーカーや法人にとっては本来廃棄していた家具を“それを必要とする誰か”へと売却でき、購入するユーザー側も通常より安価に欲しい家具を手に入れられるようになった。

法人向けのサブスクが拡大、SDGs/ESG対応の目的で導入する企業も増加

これらのサービスの中でも、特に近年ソーシャルインテリアのビジネスを牽引してきたのが法人向けのサブスク事業だ。

新型コロナウイルスの影響に伴い先行きが不透明な状況に陥る企業も増えた中で、リスクマネジメントやキャッシュフローを改善する目的で家具のサブスクに関心を持つ企業が増えた。

代表取締役の町野健氏によると直近では「オフィスは不要か、必要か」といった極論の議論は減ってきているが、その分"ハイブリッドな出社方針”を打ち出す企業が増え、オフィス環境最適化の需要と自宅環境充実化の需要の双方にアクセスできるようになったという。

さらに大手企業を中心にSDGsやESG対応を強化する動きが加速しており、その観点から家具のサブスクを導入する事例も増え始めているそうだ。

企業側の新たなニーズをうまく取り込むことで事業も成長し、2022年2月時点のGMV(流通総額)は昨対比で4倍、全体の売上も3倍に拡大。割合としては法人の部分が大きく、約7割を占める。

売上や契約者数といった数字の部分に加え、以前からサービスに興味を示していたものの取り組みにはつながっていなかった大手企業や大手メーカーから問い合わせがくることも増えてきた。こうした変化も含めて「事業のフェーズが変わってきたという手応えを掴めている」と町野氏は話す。

「(2020年9月に実施した)前回の資金調達時は成長が期待できるよう段階で、事業を作るフェーズでした。今はそこから確実な成長が見込め、それを大きく伸ばしていく状態へと変わってきていると感じています」(町野氏)

特に法人向けの家具サブスクサービスの需要が高まっているという
特に法人向けの家具サブスクサービスの需要が高まっているという

22億円調達で事業強化、家具の循環型社会づくり推進目指す

家具のサブスクは領域自体が年々広がりつつあり、2021年9月に運営元が約21億円を調達した「CLAS」や、大塚家具と提携を結ぶ「airRoom」など複数のサービスが台頭。自前でサブスクサービスを展開する無印良品も3月に対象アイテムを拡充するなど事業を強化している。

市場が拡大する中で、町野氏が事業の勝ち筋として挙げるのが「前回調達時と変わらず、認知のさらなる拡大」だ。

「モノをサブスクで提供することは事業会社でも一般化しつつあるため、モノのサブスク化は今後も加速していきます。当社は600ブランドと連携しており、これはサブスクでは国内でも最大級の取引ブランド数です。今回の社名変更にもつながりますが、SDGs/ESG対応と家具の循環型社会づくりを、600のブランドとともに推進していきたい。直近ではウクライナ情勢やインフレによる物価高騰という危機が家具業界にもきていますが、いいものをサブスクやオフプライス事業を通じて提供することで、事業成長と社会貢献の双方の実現を目指します」(町野氏)

ソーシャルインテリアとしてはSDGsに関連する提案やリペア/ユーズド企業との協業にも力を入れていく方針。また以前から町野氏が「部屋の中にあるもの」はすべて同社のサブスクの対象になりうると話しているように、今後はインテリアなど他の領域へ拡充する計画もあるという。