
- 国土交通省のファンドがスタートアップに投資
- jinjerが約51億円の資金調達
- その他のスタートアップニュース
2027年までにユニコーン企業の数を100社に増やす──この目標の実現に向け、経団連は先日、法人設立手続きの簡素化や公的機関の投資拡大、スタートアップ育成に関する政策の司令塔となる「スタートアップ庁」の設立などの提言を発表した。
ここ数年、欧州が官民の連携によるスタートアップの支援によって経済成長の好循環を生み出したように、日本でも政府を巻き込んだスタートアップ支援の流れが出来つつある。例えば、国土交通省が立ち上げたファンド「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」がスタートアップに25億円を投資する、という事例も生まれている。
いま、押さえておくべき「スタートアップ業界のニュース」をDIAMOND SIGNAL編集部が独自の視点からピックアップしてお伝えする連載「スタートアップ最新動向-Weekly SIGNAL」。今週は、テラドローンの80億円の資金調達、jinjerの約51億円の資金調達などを取り上げた。
国土交通省のファンドがスタートアップに投資
政府が出資するファンドとして、スタートアップ業界などでよく知られているのは産業革新投資機構(JIC)だろう。これまでにスマートニュースやREADYFOR、JX通信社、京都フュージョニアリングといった企業に投資してきている。
JIC以外に、政府が出資しているのが2014年10月に国土交通省が立ち上げたファンド、海外交通・都市開発事業支援機構(以下、JOIN)だ。JOINは海外の交通や都市開発などのインフラ事業を行う日本企業の海外市場への参入促進を目的に立ち上がっており、これまでにインドネシアやミャンマー、ベトナムなどで都市開発や空港整備、高速鉄道の運営事業を手がける日本企業などに投資を行ってきた。
3月23日、JOINが特別目的会社を通じてスタートアップへの投資を実行したことを発表した。投資したスタートアップは、ドローンや空飛ぶクルマなどのエアモビリティの運行管理システムを手がけるテラドローンだ。同社はJOINからの出資に加え、三井物産、SBIインベストメント、東急不動産、九州電力送配電、西華産業などから総額80億円の資金調達を実施したことを発表している。
調達した資金は、既存事業への投資のほか、グループ会社であるUnifly(ユニフライ)への追加出資に充てる。出資比率を40%以上にし、今後51%を目指す予定だという。
jinjerが約51億円の資金調達
数年前まで二桁億円の資金調達は珍しいものとされてきたが、今や毎週のように発表されている。今週は前述したテラドローン以外に、バックオフィス向けクラウドサービス「ジンジャー」を手がけるjinjerは3月23日、約51億円の資金調達を実施したことを発表した。Tybourne Capital Managementをリードインベスターとし、SBIグループ、そのほか事業会社1社、VC1社が引受先となった。
jingerは人事管理システムや勤怠管理システム、経費精算システム、電子契約システムといったバックオフィス向けクラウドサービスを複数展開する企業だ。代表取締役CEOの加藤賢氏はもともと、ネオキャリアで専務取締役副社長COOを務めていた人物。jingerは2021年11月にネオキャリアからバックオフィス向けクラウドサービス、Web会議システムサービス、電子契約サービスの事業を譲受するかたちでスタートを切っている。
今後はジンジャーシリーズの開発・マーケティングに力を入れていくほか、採用活動も強化していく予定。また、大和証券元専務取締役の丸尾浩一氏と、Tybourne Capital Managementの日本の投資責任者である持田昌幸氏が社外取締役に就任したことで、ガバナンス面の体制整備も行っていく予定だという。
その他のスタートアップニュース
プランティオ、総額1.3億円の資金調達を実施
次世代型アグリテインメントプラットフォーム「grow」を展開するプランティオは3月22日、ジェネシア・ベンチャーズ、大広、MS-Japan、iSGSインベストメントワークスなどから総額1.3億円の資金調達を実施したことを発表した。
Preferred Robotics、約6億円の資金調達を実施
Preferred Networksの子会社で、自律移動ロボットの研究開発を行うPreferred Roboticsは3月22日、旭化成ホームズ、三井住友銀行から約6億円の資金調達を実施したことを発表した。
ペイトナー(旧yup)がSiiibo証券を活用し、社債発行
オンラインファクタリングサービス「ペイトナー ファクタリング(旧先払い)」を提供しているペイトナーは3月22日、Siiibo証券が運営する社債発行・購入プラットフォームを活用し、少人数私募社債を発行したことを発表した。
WOGO、1.1億円の資金調達を実施
スマホでの3Dスキャン、3D編集ができるアプリ「WIDAR」を展開するWOGOは3月22日、Coral Capitalから1.1億円の資金調達を実施したことを発表した。同時にiOS・Android版のアプリを正式にリリースしたことも発表している。
コインチェック 、ナスダックへのDe-SPAC上場を目指す
コインチェックは3月22日、マネックスグループの完全子会社であるCoincheck Group B.V.(以下、CCG)およびナスダックに上場している特別買収目的会社(SPAC)であるThunder Bridge Capital Partners Ⅳなどとの間で事業統合契約を締結し、ナスダックへのDe-SPAC上場を目指すことを発表した。
FingerVision、1億円の資金調達を実施
触覚センシングデバイスやロボットハンド、業界向けソリューションの実用化を目指すFingerVisionは3月23日、慶應イノベーション・イニシアティブから総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。
matsuri technologies、約20億円の資金調達を実施
テクノロジーで空間の価値を最大化する「StayX」を手がけるmatsuri technologiesは3月24日、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、地域経済活性化支援機構(REVIC)の出資先であるRFIアドバイザーズが運営するファンド、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、DGインキュベーションのEarthshotファンド、および大手不動産会社の6社から約20億円の資金調達を実施したことを発表した。
KAERU、総額1.4億円の資金調達を実施
アシスタントプリカ「KAERU(かえる)」を提供するKAERUは3月24日、W ventures、Sony Innovation Fund、FINOLAB、南都キャピタルパートナーズ、ベンチャーラボインベストメント、G-STARTUPファンドから総額1.4億円の資金調達を実施したことを発表した。
モイ、東証グロース市場に上場承認
ライブ配信サービス「ツイキャス」を運営するモイは3月24日、東京証券取引所への新規上場申請を実施し、承認されたことを発表した。市場区分はグロース、上場予定日は4月27日となっている。