
- 大型調達が相次ぐ、宇宙スタートアップ
- 三菱地所がスタートアップ投資ファンドを設立
- その他のスタートアップニュース
2021年12月、ZOZOの創業者である前澤友作氏が民間人として国際宇宙ステーション(ISS)に滞在したことは記憶に新しい。昔は遠い存在のように思われていた宇宙も、テクノロジーの進展とともに少しずつ身近なものになりつつある。
ここ数年、小型衛星の開発・打ち上げなどに取り組むスタートアップの数も増えてきており、宇宙ビジネスは大きな注目を集めている。
いま、押さえておくべき「スタートアップ業界のニュース」をDIAMOND SIGNAL編集部が独自の視点からピックアップしてお伝えする連載「スタートアップ最新動向-Weekly SIGNAL」。今週は小型SAR衛星の開発・運用を行うSynspectiveの119億円の資金調達、三菱地所のスタートアップ投資ファンドの設立などを取り上げる。
大型調達が相次ぐ、宇宙スタートアップ
小型SAR衛星の開発・運用を行うSynspectiveが119億円の資金調達
2021年11月にスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去サービスなどを手がけるアストロスケールホールディングスが約124億円の大型資金調達を実施したニュースは、スタートアップ業界を中心に大きな話題を集めた。
アストロスケールに続く形で、119億円の大型資金調達を実施したのが小型SAR衛星の開発・運用を行うSynspectiveだ。
同社は3月29日、損害保険ジャパン、野村スパークス・インベストメント、Pavilion Capitalなどから119億円の資金調達を実施したことを発表した。今回の資金調達により、Synspectiveの累計調達額は228億円となった。
Synspectiveは、政府が主導する革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」の成果を応用した独自の小型SAR衛星の開発・打ち上げを行い、衛星による観測データを活用したソリューションサービスを提供するスタートアップ。
同社が開発する小型SAR衛星は、一般的な大型SAR衛星の約10分の1となる100kg級となっている。地上分解能は1〜3mで観測幅は10〜30kmとなっており、単偏波(VV)データを取得する。それらのデータを活用し、地盤陥没の予測や災害リスクの検知などに役立てるソリューションも開発している。
現在、「StriX-α」と「StriX-β」の2機を打ち上げている。今後は2026年前後に、小型SAR衛星30機からなる衛星コンステレーション(多数の人工衛星による一群のシステム)を構築することで、広範囲・高頻度の地上観測を可能にするシステムの構築・運用を目指していくという。
アークエッジ・スペースが追加で6億円の資金調達を実施
Synspectiveと同じように、小型衛星のコンステレーションの構築を目指しているのがアークエッジ・スペースだ。同社は2025年までに「IoT通信」、「地球観測」、「海洋DX(VDES)」、「高精度姿勢制御ミッション」の4つのテーマに対応した6U(60cm×60cm×60cmの立方体)サイズの小型衛星7機の設計開発、軌道上運用に取り組んでいる。
同社は衛星開発体制の構築・強化を加速させるべく、3月29日にPavilion Capital、インキュベイトファンド、三井住友海上キャピタルからシリーズAラウンドにおいて追加で6億3500万円の資金調達を実施したことを発表した。シリーズAラウンドにおける調達額は23億円となり、同社の累計総額で約27億円となった。
三菱地所がスタートアップ投資ファンドを設立
事業会社がスタートアップに投資するファンドを立ち上げる、いわゆるCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)の設立が再び盛んになっている。
3月30日には、大手不動産ディベロッパーである三菱地所が社会課題の解決や産業構造の転換など中長期的な社会インパクトの創出に挑むスタートアップへの投資を目的にしたファンド「BRICKS FUND TOKYO」を立ち上げたことを発表した。
同ファンドの投資テーマは「新たなライフスタイル」「既存産業のパラダイムシフト」「サステナビリティ」の3つ。注目領域としては、コマース、サイバーセキュリティ、ヘルスケア、脱炭素などの12個だという。投資先に対しては、三菱地所グループの経営基盤を活かした営業支援、大丸有エリア等における実証実験の実施、事業共創・協業の推進といった社会実装支援などを行っていく。
投資対象となるスタートアップはアーリーステージを中心にミドル・レイターステージを想定しているそうで、投資規模は今後5年間で100億円程度を見込む。
三菱地所はこれまでにも、アクセラレータープログラムの実施のほか、スタートアップ・エコシステムの形成に向け、スタートアップ向け施設やイノベーション拠点の整備を進めてきた。また、国内外のスタートアップやベンチャーキャピタルなどに対し、2016 年から累計約200億円を出資(コミットメント分含む)し、新事業案件の発掘や既存事業とのシナジー創出を図ってきた。
今回のファンド設立にあたり、スタートアップ・エコシステムに対する出資総額は2020年代半ばまでに累計500億円(コミットメント分含む)となるという。
その他のスタートアップニュース
エンガジェット日本版とTechCrunch Japan、BLOGOSが更新終了
スタートアップ業界の情報を取り扱うメディア「TechCrunch Japan」とデジタルガジェットの最新情報を取り扱うメディア「エンガジェット日本版」、提言型ニュースサイトをうたう「BLOGOS」が3月31日にサイトの更新を終了した。
TechCrunch Japanとエンガジェット日本版は2022年5月1日、BLOGOSは2022年5月31日をもってサービスを終了する。
アキュリスファーマ、総額28億円の資金調達を実施
神経・精神疾患領域における革新的な新薬の開発と商業化を推進するアキュリスファーマは3月27日、Vision Pacific LifeSciences Capital、HBM Healthcare Investments、Global Founders Capital、三井住友トラスト・インベストメント、ANRI、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、三菱UFJキャピタル、Spiral Capitalから総額28億円の資金調達を実施したことを発表した。
QunaSys、総額12.4億円の資金調達を実施
量子コンピュータ向けアルゴリズム・ソフトウェア開発に強みを持つQunaSysは3月28日、JICベンチャー・グロース・インベストメンツをリードインベスターとして、ANRI、HPCシステムズ、Global Brain、国立研究開発法人科学技術振興機構 出資型新事業創出支援プログラム、新生企業投資、日本ゼオン、富士通ベンチャーズファンド、三菱UFJキャピタルから総額12.4億円の資金調達を実施したことを発表した。
SUSTEN、総額約15億円の資金調達を実施
1人ひとりに適した運用ポートフォリオを診断し運用まで自動で行う、おまかせ資産運用サービス「SUSTEN」を手がけるsustenキャピタル・マネジメントは3月28日、マネーフォワード、NOW、東京理科大学ベンチャーファンドから総額約15億円の資金調達を実施したことを発表した。
ABCash Technologies、約12億円の資金調達を実施
金融教育FinTechサービス「ABCash」を展開するABCash Technologiesは3月30日、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、SBIインベストメント、Aflac Ventures LLC、SV-FINTECH Fund、Hamagin DG Innovation Fund、マネックスグループ、FFGベンチャービジネスパートナーズから約12億円の資金を調達したことを発表した。
DINETTE、総額8億円の資金調達を実施
コスメブランドと美容メディアを展開するDINETTEは大和企業投資、セレス、MTG Venturesを引受先とした第三者割当増資、みずほ銀行などの融資含めて、総額8億円の資金調達を実施したことを発表した。
リンケージ、約5.5億円の資金調達を実施
職域向けにオンライン診療などの健康支援プログラムを提供するリンケージは3月30日、マイナビ、Medical Development Support、個人投資家の竹内真氏、上沢仁氏などから約5.5億円の資金調達を実施したことを発表した。
GramEye、NEDO採択のほか資金調達を実施
AIを使い薬剤耐性菌問題の解決を目指すGramEyeは3月30日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施した2021年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援(STS)」に関わる第3回公募で採択されたことに加え、NEDO STS認定ベンチャーキャピタルであるDEEPCOREから追加の資金調達を実施したことを発表した。
gumi Cryptos Capital、130億円の資金調達が完了
gumi Cryptos Capitalは3月30日、Web3領域に特化した2号ファンド「gumi Cryptos Capital Fund II」が約130億円の資金調達を完了したことを発表した。
SPACE WALKER、5.5億円の資金調達を実施
有翼式再使用型ロケットの研究・開発を行っているSPACE WALKERは3月31日、個人投資家を中心にシードラウンドにおけるコンバーティブル・エクイティおよび社債などによって、5.5億円の資金調達を実施したことを発表した。
ClipLine、総額6億円の資金調達を実施
組織実行力を高めるマネジメント支援サービス「ClipLine(クリップライン)」を提供するClipLineは3月31日、シリーズEエクステンションラウンドにおいて、MPower Partners Fundなどから総額6億円の資金調達を実施したことを発表した。