
海外の大手サービスも参入してきた、電動キックボードシェアリングの日本市場。だが、一部はすでに撤退し、先行きが不透明なプレーヤーもいる。
欧米勢が苦戦する中、今年に入ってからは勢いのあるアジアのスタートアップたちが大型の資金調達を実施し、日本参入を表明した。その2社とは、シンガポールのBeamと韓国のSWINGだ。アジアの勝手を知るプレーヤーたちの強みとは。
ドイツの「WIND」は撤退済み、欧米勢は失速する日本市場
ドイツのスタートアップで電動キックボードシェアのサービス「WIND」を手がけるWind Mobilityは、2019年6月より埼玉や千葉で実証実験を実施してきたが、2020年5月に日本法人を解散した。
電動キックボードシェア「Lime」を展開する米スタートアップのNeutron Holdingsは、2019年9月に福岡にて国内初となる試乗会を実施。同年11月には、国内プレーヤーが名を連ねるマイクロモビリティ推進協議会への加入を発表した。だがその後は、本国でのビジネスがコロナ禍による打撃を受けたこともあり、日本展開は進んでいない。
同じく米スタートアップで電動キックボードシェアのサービス「Bird」を展開するBird Ridesは、自ら日本法人を立ち上げるのではなく、日本のスタートアップ・BRJに営業権を与えることで日本展開している。だが、実証実験の展開エリアは現状、国内では東京・立川などに留まっており、Luupといった国内競合と比較して勢いはない。
シンガポールの「Beam」と韓国の「SWING」が日本参入へ
欧米勢に勢いがない中、2022年に入ってからは新たに2社の海外スタートアップが日本参入を表明した。シンガポールに本社を置き、アジア諸国を中心に電動キックボードシェアのサービス「Beam」を展開するBeamと、韓国で「SWING」を展開するSWINGだ。
Beamの強みはアジア圏における、政府や行政との対話力にある。同社CEOのアラン・ジャン氏は米国発のライドシェア「Uber」の中国、マレーシア、ベトナムでの立ち上げに携わり、同社のインドネシア法人のカントリーマネジャーも務めた人物だ。そしてジャン氏は「電動キックボードの安全面での課題をすべてテクノロジーで解決する」と豪語する。同社では2022年後半に、ユーザーならびに歩行者の安全性を向上した新たな機体を導入する予定だという。
Beamは2022年2月、Sequoia Capital Indiaなど名だたるVCから9300万ドル(約113億円)もの資金を調達。2021年4月に日本法人を設立し、2022年中にも日本市場に参入する計画だ。
SWINGも2022年2月にシードラウンドで2400万ドル(約27億6600万円)を調達。初の海外進出として、2022年中にも日本市場に参入する予定だ。Beamと比較すると資金力には欠ける。だが、同社は韓国において最大手として君臨する。赤字のプレーヤーが多い中、フランチャイズ方式でのビジネス展開により年商は24億円を記録した。
DIAMOND SIGNALではBeamとSWINGの両社に取材を敢行している。インタビュー記事は明日に掲載する予定だ。ドイツのプレーヤーは撤退し、米国発のサービスは勢い不足な中、アジアの勝手を熟知するスタートアップたちは真の黒船として日本市場を席巻するのだろうか。