
- エンジニア採用競争が激化、リモート採用やフリーランス採用も加速
- 「スキル診断」軸に外国人エンジニアの採用支援を本格化へ
- 優秀なエンジニアとの出会いから、入社後の活躍までを支援
企業のエンジニア獲得競争が過熱している。社内の技術力がプロダクトの優位性にも直結するため、急拡大中のスタートアップから上場後のメガベンチャー、DXに取り組む大企業まで、さまざまな会社がエンジニア採用に多大な予算を投じている状況だ。
2016年創業のファインディは、この領域の課題解決に取り組むスタートアップの1社。「GitHub解析によるエンジニアスキルの見える化」をコアの技術として、企業のエンジニア採用やエンジニア組織の生産性向上をサポートしてきた。
ファインディではソフトウェア開発で広く使われる「GitHub」に蓄積された開発履歴を解析し、エンジニア1人1人の“スキル偏差値”や“想定年収”などを可視化する技術を持つ。この仕組みを用いたエンジニア転職支援サービス「Findy」や、フリーランスエンジニアのマッチングサービス「Findy Freelance」は現在750社以上が導入。登録ユーザー数も8万人を超えた。
2021年10月からはコア技術をエンジニア組織の生産性診断に応用した「Findy Teams」も手がけており、同サービスもトライアル利用企業数が100社を突破している。
今後ファインディでは既存サービスの機能拡充を進めるほか、国内外に住む外国人エンジニアの採用支援サービス「Findy Global」を展開していく計画。そのための資金として、シリーズCラウンドでCarbide Venturesおよび既存投資家5社より総額約15億円を調達した。
- Carbide Ventures
- グローバル・ブレイン
- SMBCベンチャーキャピタル
- JA三井リース
- みずほキャピタル
- KDDI Open Innova tion Fund 3号
エンジニア採用競争が激化、リモート採用やフリーランス採用も加速

エンジニア採用の難易度が上がり、うまくいっているところと苦戦しているところが明確に分かれてきている──。ファインディ代表取締役CEOの山田裕一朗氏はエンジニア採用市場の現状をそう説明する。
特に大型の資金調達をしたスタートアップがエンジニア採用を加速させている状況だ。給与水準も上昇傾向にあり、「未上場企業でもメルカリなどと同じようなレベル感の報酬を提示するケースが出てきている」という。
「内定決定者の話を聞いていても(年収が)1000万円を超えるような人がどんどん増えてきています。スタートアップの給与水準が上がってきたこともあって、エンジニアからは(報酬に加えて)自由度も高いスタートアップ企業が注目されやすい状況になりつつある。反対に大手のDX企業などは、苦戦するところも出てきています」(山田氏)
競争が激化する中で、採用のかたちも多様化してきている。
初期のスタートアップではスキルの高いエンジニアを正社員で何人も採用することが困難なため、フリーランスや副業メンバーの採用に力を入れているところも多い。従来はフリーランスの採用をしていなかった大企業が、リモートワークの導入をきっかけにフリーランスエンジニアの採用を始める例も出てきているという。
「スキル診断」軸に外国人エンジニアの採用支援を本格化へ
また「日本人だけでは採用目標が達成できない」となった結果、国内外に住む外国籍のエンジニアを積極的に採用する企業も増えてきた。「今までは上場後の企業が中心だった印象でしたが、(未上場の)スタートアップの段階からそこに取り組むようになってきているのが大きな変化です」と山田氏は話す。
「日本人採用だけでは採用目標に届かないという場合、『(若い人材などの)育成』と『外国人エンジニアの採用』の2つの手段が検討されることが多いです。育成に関しては、コロナ禍でリモートワークが進んだ結果、難易度が上がったと感じています。そもそも日本企業の場合は育成の対象者の数自体も限られることもあって、外国人エンジニアの採用という選択肢がより注目されるようになってきている印象です」(山田氏)
グローバルチームの組成や運営を支援するサービスの登場も、地域や国籍の枠を超えた採用が進む要因の1つと言えそうだ。
2021年に日本にも進出した米国のユニコーン企業・Deelでは、各国の法律や税制に準拠した雇用・支払プラットフォームを展開している。同サービスを使えば現地法人を設立することなく従業員雇用や業務委託契約を数分で結ぶことができ、給与の支払いもワンクリックで済む。
このような採用市場のニーズを受け、ファインディでは外国人エンジニアと企業をマッチングするFindy Globalの提供を始めた。

ファインディは同サービスを通じて国内外に住む外国人エンジニアと日本企業をマッチングする計画。まずはエンジニア向けに、GitHubの情報を用いてスキルを診断する仕組みを2022年1月より先行して運営してきた。
山田氏によると、すでにインドやバングラデシュ、インドネシアなどアジア圏を中心に累計登録ユーザー数は6000名を超えており、今後スキル偏差値(海外版ではSkill Score)を活用しながら日本企業と海外エンジニアをつないでいくという。
優秀なエンジニアとの出会いから、入社後の活躍までを支援
ファインディとしては引き続き、エンジニア採用支援サービスとエンジニア組織の生産性向上サービスの2本柱で事業を拡大していく方針だ。
開発チームの生産性を改善することで「採用人数を少し減らしても開発の目標に到達できるようになる」(山田氏)のはもちろんだが、エンジニアにとっては、生産性が高い組織の方がより多くの時間を“本質的な開発”に使える可能性が高い。したがって、生産性の向上は新しいメンバーを採用する上でもプラスに働くのだという。
実際に、採用面談の際にエンジニアからリリース頻度やその計測方法など、開発の生産性に関する質問を受ける企業が増えているのだそう。企業側としても自社の取り組みをブログなどで積極的に発信しているところも多く、ファインディでもゆくゆくは各企業が自社のスコアを採用サービスなどでもアピールできるようにしていく考えだ。

「単に『海外の優秀なエンジニアと出会えるチャンスがありますよ』というだけでなく、Findy Teamsを通じて入社後の活躍を可視化したり、サポートするような取り組みも進めていきたいと考えています。開発者体験につながる文化や基盤への投資が進めば、プロダクトの進化のスピード自体も速くなっていくと思うんです」(山田氏)
ファインディとしても、前回の資金調達を実施した2020年の上半期はコロナ禍で一時的に採用を控える企業も出て苦戦を強いられた。一方で2021年は再び採用サービスが成長軌道に乗るとともに、Findy Teamsという新たな武器を手にすることができたという。
「ソフトウェアやそれを支えるエンジニアは、今後の日本の未来を占う1つの鍵になると思っています。ファインディとしてはこの分野で挑戦する企業やエンジニアの活躍を後押ししていきたい。少しずつ実績が出始めて、前回の調達時と比べても目標に近づけたのかなという感覚もあります。ようやく事業の基盤も整ってきたので、自分たち自身もグローバルに挑戦していきます」(山田氏)