バベルが開発する商談解析クラウド「ailead」
バベルが開発する商談解析クラウド「ailead」

企業の「セールスイネーブルメント」を後押しするサービスが広がってきている。

セールスイネーブルメントとはテクノロジーなどを活用しながら、営業組織や営業人材を強化するメソッドのこと。米国などではさまざまな企業へ普及が進んでいる概念で、その取り組みをサポートするプロダクトやスタートアップがいくつも生まれている。

日本では特に「商談データ」を解析し、企業の営業力強化につなげるサービスがこの1年ほどで増えてきた。背景にあるのが商談のデジタル化だ。Zoomなどのウェブ会議ツールを使ったオンライン商談が急速に広がったことで、今までは属人的かつブラックボックスになりがちだった商談のデータを収集しやすくなったことが大きい。

2017年設立のバベルでは、4月に商談解析クラウド「ailead」をローンチした。同サービスではウェブ会議ツールと連携することで、商談の録画データを自動で解析し、文字に起こす。議事録の作成や営業管理ツール(SFA)への入力などの業務を効率化する機能に加え、先輩社員の商談データを新メンバーや若手社員の教材として共有できる機能も備える。

今後はさらなる機能拡張も予定しており、それに向けた資金としてバベルでは総額14.6億円を調達した。この資金にはスパークス・アセット・マネジメント(未来創生ファンド)、ポーラ・オルビスホールディングス、個人投資家などを引受先とする第三者割当増資に加え、複数の金融機関からの融資も含まれる。

aileadは営業活動における業務効率化と営業人材の育成を支援するサービスだ。

効率化の観点では、発言者ごとに商談時の会話を自動で文字に起こす仕組みによって議事録作成の負担を削減。SFAツールへの会議データの入力を自動化する機能も搭載している。

ailead上に蓄積された商談データは「DX」など具体的なキーワードで検索できるため、過去のデータを社内の資産として活かしやすい。参考になる動画をプレイリストにまとめて、社内向けの教材として共有するための機能もある。

現在はZoom、Google Meet、Microsoft Teamsに対応しており、1IDあたり月額5000円から利用できる。

aileadの特徴

バベルでは2021年7月にaileadのベータ版を公開。代表取締役の杉山大幹氏によると、これまでに広告や不動産、人材、コンサルティング、ITなど幅広い企業にサービスを提供してきた。

特にコロナ禍で営業社員の活動が以前よりも見えづらくなったことで、情報共有や新メンバーのオンボーディング(育成)に課題を感じる企業も多い。バベル自身も営業のオンライン化による難しさを痛感し、それがaileadを開発するきっかけにもなったという。

今後はエンタープライズの顧客をメインターゲットに据え、機能強化を進める計画だ。日本語の音声書き起こしについては東京大学の齊藤研究室と共同で研究を進めており、引き続き精度の向上に取り組んでいく方針。今までは手入力が必要だった作業をAIの活用で自動化することで「人間によるインプットを前提とせず、その上で従来のシステムよりも多くの価値を提供できるプロダクト」(杉山氏)を目指す。

商談データの解析を軸にしたセールスイネーブルメントサービスについてはamptalkやACESなど日本のスタートアップが手がけるものも増えてきている。米国ではすでにユニコーン企業のGongを始め規模の大きいプレーヤーが複数社生まれている領域でもあるだけに、日本の市場もさらなる拡大が見込めそうだ。