
- Twitter社内の混乱を報じる海外メディア
- 「言論の自由絶対主義者」を自称するマスク氏に懐疑的
イーロン・マスク氏によるTwitter買収など、海外のテクノロジー業界では先週(4月24日〜4月30日)も、さまざまなビッグニュースが飛び交った。
「海外テックニュース-Trend Now」では、毎週、特に注目すべきニュースを編集部が独自にピックアップし、お伝えする。今回は、マスク氏によるTwitter買収を海外メディアがどう報じたのか、解説していく。
Twitter社内の混乱を報じる海外メディア
Twitterは4月25日、イーロン・マスク氏が同社を1株あたり54.20ドル(約7034円)、トータルで440億ドル(約5兆6000億円)という驚愕の金額で買収する案に合意したことを明かした。買収は年内に完了し、その後は非上場化が行われると見られている。この発表からの1週間、国内における議論は、日本人に対する影響や有料化の可能性など中心だったが、海外ではマスク氏に対して批判的な報道が目立った。
例えば、米国の人気テックメディア「The Verge」では4月25日、買収の合意が発表された直後に「Twitterアカウントの停止方法(How to deactivate your Twitter account)」という皮肉めいた記事をSNSに投稿。4月14日公開の記事だったものの、SNS投稿は5月2日までに累計で2万件以上「いいね」されるなど、反響は大きかった。
How to deactivate your Twitter account https://t.co/KVLIDkfWBg pic.twitter.com/IWg3Oh1BJp
— The Verge (@verge) April 25, 2022
2019年にはスーツケースのD2Cブランドを展開するスタートアップ・Awayの元CEO、ステフ・コーリー氏によるパワハラ騒動を報じ、辞任にまで追い込んだThe Verge。今回の騒動では「Twitter社員のイーロン・マスク氏に対する声(What Twitter employees are saying about Elon Musk)」という記事において、買収合意の発表直後、Twitter社内にて巻き起こった混乱について報じた。同記事によると、Twitter社のSlackチャンネルでは買収に対するネガティブな投稿が目立った。ある従業員は「多くの従業員はすべてを諦めている様子だった」と証言している。
米ウェブメディア「INSIDER」は「Twitter関係者はイーロン・マスク氏の買収に伴う大量退職が発生する可能性が高いと話す、全てマスク氏の責任だ(Twitter insiders say an 'exodus' is likely to follow Elon Musk's takeover: 'It's all about Elon')」という記事で、Twitter関係者への取材をもとに、マスク氏の方針に共鳴しない従業員による集団退職の可能性について報じている。
取材に応じた元幹部は、「マスク氏の衝動的なリーダーシップスタイル、物議を醸す物言い、後先考えない脊椎反射的な行動」などが懸念材料だと証言している。
「言論の自由絶対主義者」を自称するマスク氏に懐疑的
「言論の自由絶対主義者」を自称し、買収合意の発表でも、「言論の自由は機能する民主主義の礎石で、Twitterは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるデジタルの町広場だ」と表明したマスク氏。だが、多くの海外メディアはそう話すマスク氏に懐疑的なスタンスだ。
米経済メディア「CNBC」は「イーロン・マスク氏は言論の自由を望んでいるというが、彼の実績はそうではないことを示唆している(Elon Musk says he wants free speech, but his track record suggests otherwise)」という記事において、マスク氏の言う言論の自由は主に彼自身、あるいは彼のファンやプロモーターの言論にのみ適応されそうだ、と論じた。
同記事では他にも、「マスク氏は従業員の言論の自由に関して、ほとんど寛容さを示さない」「マスク氏は、ジャーナリスト、ブロガー、アナリスト、その他の研究者が、自身のビジネス、製品、そして自身について語る際に、その内容をコントロールすることを繰り返し求めてきた」などと言及している。
一方で、マスク氏に期待を寄せるジャーナリストもいる。米新聞社「The New York Times」のポッドキャスト「Sway」でホストを務める、ベテランジャーナリストのカーラ・スウィッシャー氏は米ウェブメディア「Intelligencer」との取材で、マスク氏について「この世界では誰もが馬鹿げたものを作っていますが、彼はそうではありません。車、ロケット、ソーラー。これらは世の中にとってとても重要なものです」と語っている。
マスク氏による買収プロセスが年内にも完了し、非上場化が行われるであろうTwitter。ロイター通信によれば、マスク氏は買収が完了すれば、現Twitter CEOのパラグ・アグラワル氏に変わる新たなCEOを任命予定だという。
米ウェブメディア「VICE」によると、買収合意が発表された当日、SNS「Mastodon」には3万人もの新規ユーザーによる登録があった。今後、Twitterユーザーによる離脱や乗り換えが進むかは不透明だが、少なくとも買収が完了するまでは、「言論の自由」をめぐる白熱した議論が続きそうだ。