コロナ禍や世界情勢の不安定化で、ここ数年スタートアップの資金調達の環境は急激に変化している。そのような中で成長する企業に求められる戦い方は何か──。4月26日に開催されたスタートアップやビジネスの変革に取り組む“挑戦者”を表彰するイベント「SIGNAL AWARD 2022」で、野村證券のスポンサーセッションとして野村スパークス・インベストメント 投資運用部長(CIO) 秋田一太郎氏、野村證券 シンジケート部長 馬頭秋冬氏、野村證券 産業戦略開発部 主任研究員 武田純人氏の3名が登壇し、議論を交わした。

120社以上がエントリーした「SIGNAL AWARD 2022」はオンラインで開催され、グランプリ、準グランプリ、そして編集部特別賞などを発表、ライブ配信された。

「SIGNAL AWARD 2022」表彰式に先立ち、メルカリ 代表取締役社長CEO 山田進太郎氏がキーノートセッションに登場。また「エンタメ3.0〜SNS時代のヒットをどう創るか〜」と題して、ソニー・ミュージックエンタテインメント デジタルコンテンツ本部GSチーム 屋代陽平氏、FIREBUG 代表取締役CEO 佐藤詳悟氏、ホリプロデジタルエンターテインメント 代表取締役社長 鈴木 秀氏らが登壇し、SNS時代にヒットを創り出すにはどうすればいいのかを語り合うなど、6つのテーマでセッションが開催された。

野村證券のセッションでは「資金調達環境に“地殻変動”、IPO後も見据えたスタートアップの戦い方とは」と題し、DIAMOND SIGNAL編集長の岩本有平がモデレーターとしてパネルディスカッションが展開された。

米国比較では成長の余地が大きい日本の資金調達環境

最初のテーマは「資金調達環境の劇的な変動について」。この1〜2年で大きく変化した資金調達環境や、公開株・未公開株の両方に投資するクロスオーバー投資の現状について、武田氏は「企業側からという視点では、過去数年間の資金調達環境のさまざまな変化は、疑いなく歓迎すべき事象だ」と語った。ただし、上場以降も継続的に資金調達を行いながら、より大きな成長を実現できている事例は必ずしも多くないとの印象も述べ、ポジティブな環境変化をまだ十分には活用し切れてはいなのではないか、と課題があることも示唆した。

野村證券 産業戦略開発部 主任研究員 武田純人氏

秋田氏は、日本のスタートアップの調達額は大幅に増加し、起業家の数も増えており、最終的にエコシステムとして回るために次に必要なのは継続的な資金の流入だと指摘した。しかし、アメリカとの比較ではまだまだ調達額が不足しているという。秋田氏は、自社のスタートアップ、成長企業の支援についても紹介。野村スパークス・インベストメントが運用する投資法人はベンチャーキャピタル(VC)と違って満期がないため、その性質を活かして、スタートアップが上場を経て、さらに成長することを長期にわたり株主としてサポートすることができるという特徴を説明した。

野村スパークス・インベストメント 投資運用部長(CIO) 秋田一太郎氏

続いて馬頭氏は、まずアメリカと日本でケースを分ける必要があると前置きした上で、アメリカではクロスオーバー投資は昨年1400件、1800億ドルという莫大な金額が投資実行されており、投資競争が極めて熾烈になっていると語った。また「アメリカには非常に豊富な投資対象があり、テンバガー(上場後に株価が10倍になった銘柄、なりそうな銘柄)になる会社がかなり増えたことなど、旧来のVCの概念では(対応が)追いつかない状況だ」と解説した。一方、日本はまだ黎明期に近く、「これからアメリカを追って成長していくと思う」と述べた。

野村證券 シンジケート部長 馬頭秋冬氏

エッジを持って成長し、投資家に訴求していく

次のテーマは「株価低迷、マーケット不安が資金調達に与える影響」。影響を最小限に食い止め、資金調達につなげる要素として秋田氏は「資金調達に関して最終的な決め手となるのはファンメンタルズ(経済活動の状況を示す基礎的な要因、経済の基礎的条件)で、業績の裏付けがあるかどうかが大事です」と語った。その上で「起業家が熱を持って事業に取り組んでいることが重要」と語ると、岩本も「起業家は本質に対して愚直に、ですね」と感想を述べた。武田氏も、「ビジネスモデルの独自性を築くことが重要で、それを対投資家目線でも研ぎ澄ませていくことが求められている局面だ」と分析した。

3つ目のテーマは「今後起業家はどういう闘い方、ファイナンスの仕方をすべきか」。馬頭氏は、「最終的に求められるものは2020年、21年、そして現在も変わらず、その会社が何がしかのエッジを持って成長していき、それを投資家に訴求していくことに尽きるのではないか」と指摘した。秋田氏は今後あり得るシナリオとして、M&Aによるエグジットなどの選択肢を取り入れることによって、よりアメリカ的なエコシステムが強化されるのではないかと分析。M&Aがマイナスのイメージではなく、よりエコシステムが発展するきっかけとなり、日本の起業家にとってもスタートアップの将来の選択肢が増える可能性を示唆した。

今注目すべきクロスオーバー投資、そしてこの1〜2年で大きく変化している資金調達環境。しかし起業家にとって一番大切なのはファンダメンタルズ、つまり足元の目標を達成することであり、起業家が熱を持ち、同業他社との違いや強みを生かしていくという基本こそがスタートアップにとっては大切だということを、あらためて認識できるセッションとなった。

問い合わせ先
▶野村證券
https://www.nomura.co.jp/
▶野村スパークス・インベストメント
https://www.nomura-sparx-investment.com/