スタートアップが事業を拡大させていくために無視できない、リーガルテックの「今」を追う──。4月26日に開催したスタートアップやビジネスの変革に取り組む“挑戦者”を表彰するイベント「SIGNAL AWARD 2022」で、スポンサーセッションとしてLegalForce代表取締役社長/弁護士の角田望氏が登壇。リーガルテックの最新トレンド、そして契約管理の重要性などについて語った。

120社以上がエントリーした「SIGNAL AWARD 2022」はオンラインで開催され、グランプリ、準グランプリ、そして編集部特別賞などを発表、ライブ配信された。

「SIGNAL AWARD 2022」表彰式に先立ち、メルカリ 代表取締役社長CEO 山田進太郎氏がキーノートセッションに登場。また「エンタメ3.0〜SNS時代のヒットをどう創るか〜」、「名門VCセコイアも出資、アジア圏を代表する電動キックボードシェア『Beam』は日本市場でどう戦うか」など6つのテーマでセッションが開催された。

LegalForceのセッションでは「スタートアップが知っておきたい、リーガルテックの最新トレンドとは何か?」と題し、DIAMOND SIGNAL編集長の岩本有平による司会で、角田氏にリーガルテックについての基礎知識やホットなトピックについて聞いた。

ビジネスのリスクマネジメントを支える契約書の重要性

弁護士である角田氏が起業した背景には、契約にまつわる2つの課題感があったという。契約書は一度締結すると後戻りできないものであり、見落としは許されないという「責任の重さ」、そしてその割に細かい作業が多いという「作業の負担の重さ」。この2つをAIで解決できれば、と思ったことがきっかけだったと振り返る。

リーガルテックとは「リーガル(法律)×テクノロジー」を組み合わせた造語で、法律に関するさまざまな業務を効率化するために用いられるソフトウェアなどのテクノロジーのこと。欧米では2010年ごろから関連サービスが台頭し、特に米国では3000社を超える関連企業がある成長分野だ。ビジネスに不可欠な業務だからこそ、大きなニーズがあるという。

LegalForce代表取締役社長/弁護士 角田望氏

そうした欧米のリーガルテックで最近注目されているのが、「CLM(コントラクト・ライフサイクル・マネジメント)だ。契約書の作成、チェックから管理まで一括してサポートするシステムのことを指す。「契約を結ぶ前にしっかり確認し、リスクを取り除く。結んだ後はその内容を守りながら、勝ち取った権利は行使し、ビジネス上の戦略に組み込みながら考えていく。保管して終わりではなく、期間満了を迎えるまで管理していく」ことが大切だと、角田氏は語る。

この締結前の契約書のチェックをサポートするのが「LegalForce」、そして、締結後の契約書を管理するのが「LegalForceキャビネ」というサービスだ。

契約書の重要性について問われた角田氏は、記録、証拠としての機能を挙げた。納品された商品が当初の想定と異なる場合、取引先との「言った、言わない」の齟齬(そご)をなくすことができる。また、契約書の締結によってビジネス上のリスク分担をあらかじめ合意することができる。たとえば「不備のある修理コストをどちらが負担するのか」といった内容を明記するなど、リスクをマネジメントするために契約書は必要であり、相手の契約違反を防ぐコントロールにもなるという。

スタートアップは契約管理の重みが非常に大きい

なぜ、スタートアップが契約書の締結や管理においてリーガルテックのプロダクトを活用すべきなのか。事業がスケールして指数関数的に成長するのがスタートアップのセオリーだとすれば、取引先や契約数も急激に増えていくことになる。しかし、自社の管理部門を同じように増やすわけにはいかない。「1年に100件、10年で1000件。100件を1人で管理できるのか。1000件になったときに10人で管理するのか。人手で対応し続けるのは現実的ではない」と、角田氏は指摘する。

角田氏は、一般的な中小企業と比べるとスタートアップは契約の重みが非常に大きいビジネスモデルだと分析する。「投資契約や、大企業との協業契約など、事業上クリティカルな契約を多く締結しますし、かつ新規の顧客とも取引しなければいけません。だからこそ、自社事業を守るのが契約書なのです」。

契約内容をしっかりと固め、自分たちのビジネスを守ること。そして管理することによってトラブルを防ぎ、限られたリソースでも単なる保管ではなくて契約自体の中身を扱うのが契約管理の優良な選択肢だと、角田氏は強調した。

契約に基づくリスク、取引に関するリスクが可視化される。あるいは契約管理をすることで契約のリスクをマネジメント化できる。「守りの強さが本当の強さになるということですね」と岩本が感想を述べると、角田氏は「先手を打ってきちんと守りを固めておくのが重要です」と応えた。

訴訟や契約トラブルにより、時間やコストを取られることは成長企業ではリスクになる。それを避けるためにも、創業時から原本をきちんと管理し紛失しないこと、資金調達の段階からリーガルテックのサービスを検討し体制を整えるべきという結論に至った。スタートアップにとって攻めだけではない、守りの大切さを教えてくれるセッションとなった。

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