Starbucks CEOのハワード・シュルツ氏
Starbucks CEOのハワード・シュルツ氏 「DealBook D.C. Policy Forum」のスクリーンショット

「従業員をオフィスに呼び戻すために、あらゆる手を尽くしましたが、うまくいきませんでした。私は悲願しています。ひざまずきます。なんなら腕立て伏せもしましょう。何でもしますから。戻ってきてください」

リモートワークが当たり前になって久しいが、米コーヒーチェーン大手・Starbucks CEOのハワード・シュルツ氏は「何がなんでも従業員をオフィスに呼び戻したい」考えだ。

シュルツ氏は米新聞社・The New York Timesが6月9日に開催したカンファレンス「DealBook D.C. Policy Forum」で登壇し、「従業員が自分が望むほどオフィスに戻ってきてくれていない」と述べ、顔をしかめた。

シュルツ氏は、Starbucksをワシントン州・シアトルの小さなカフェから、世界最大級のコーヒーチェーンにまで成長させた人物だ。2016年にCEOを引退し、今年の4月に復帰した。現在69歳の同氏は平日毎日、午前7時から午後7時まで、オフィスで勤務しているという。

「時代は変わり、私はすでにオールドスクール(古典的)なのだと気付かされました」(シュルツ氏)

「オフィス勤務主義」を声高々に宣言したシュルツ氏だが、実はStarbucksでは、在宅と出社を組み合わせた「ハイブリッドワーク」を推進している。同社の求人ページには「店舗スタッフ以外の職種では、柔軟に働けます。職種や職務によってはハイブリッドワークも可能です」とつづられている。

シュルツ氏も「従業員は週に2〜3日程度、出社するのが常識となりました」と説明するが、一方で「生産性はどうなのか、疑問に思います」と話すなど、不満げだった。

イーロン・マスク氏やNotionのCEOもオフィス勤務重視

オフィス勤務を重視する経営者は何もシュルツ氏だけではない。Tesla CEOのイーロン・マスク氏は従業員に対して週40時間以上のオフィス勤務を要求して物議を醸した。情報共有ツール「Notion」を開発する米スタートアップ・Notion Labs CEOのアイバン・ザオ氏も、生産性を担保し、従業員との信頼関係を構築するために、基本的にはオフィスで勤務していると説明していた。

一方、Apple CEOのティム・クック氏は「ハイブリッドワーク」が主流となると見ている。同氏は6月7日、米TIME誌が主催するサミット「The TIME 100 Summit 2022」で登壇し、在宅と出社での勤務を併用し、2つの世界における「最高の場所」を探していると説明した。だが同氏は、「対面での会議から生まれるセレンディピティ(偶然の産物)を信用している」とも述べ、「リモートワークの役割はまだ確定していない」との考えを示した。

コロナ禍が落ち着きつつある中、大物経営者らも、最適な勤務形態のあり方について口を開き始めた。最適解はオフィス勤務か、リモートワークか、はたまたハイブリッドワークか。働き方の「ニューノーマル」については今後も議論が続くだろう。