
Amazonなどに出品する有望なECブランドを買収し、独自の成長ノウハウを注入することで規模を拡大させ、収益を上げる──。このようなビジネスは「ECアグリゲーター」や「ECロールアップ」と呼ばれ、近年グローバルで複数のユニコーン企業が生まれる注目の領域だ。
その筆頭格が2018年の創業から2年でユニコーンへと成長した米国発のThrasio(セラシオ)だ。同様のモデルを展開するスタートアップは米国以外のエリアでも広がり始めており、日本も例外ではない。Thrasio自体も2021年より日本拠点を設けて国内での事業展開を始めているほか、新たな挑戦者も出てきている。
2018年創業のACROVE(アクローブ)も、今後この領域で事業の拡大を見据えている1社だ。同社の強みはECのノウハウを活かして開発した独自のBIツール「ACROVE FORCE」。このツールを用いて80社以上の顧客のECブランドを支援しているほか、複数の自社ブランドも手がける。
ACROVEでは今後ACROVE FORCEの機能強化を進めるほか、ECブランドのM&Aを通じて自社ブランドを拡充していく計画。そのための資金としてニッセイ・キャピタル、博報堂DYベンチャーズ、日本郵政キャピタル、サイバーエージェント・キャピタルより総額で5億円強の資金を調達した。
ACROVEは代表取締役社長の荒井俊亮氏が学生時代に立ち上げたスタートアップだ。もともとはプロテインのD2Cブランドを運営していたが、コロナ禍で商品を提供しているフィットネスジムが閉鎖したことなどを受けて方向性を転換。「より社会の役に立つことができないか」を考え、ECの成長ノウハウを他社に提供する事業を始めた。
当初は個人でECのコンサルティングを請け負うようなかたちからスタートし、そこで培った知見を基に独自の分析ツールを作り上げた。それがACROVEの事業の基盤とも言えるACROVE FORCEだ。

同サービスではAmazonや楽天を始めとした主要なECモール、自社ECサイトなどに点在するデータを集約し横断的に分析できるのが特徴。このツールを用いて提携ブランドの成長をデータドリブンで支援する事業が現在のACROVEのビジネスの軸となっており、顧客の数は80社以上、導入後の平均売上成長率は300%を超えるという。
今後はACROVE FORCEの機能拡張や提携ブランドの拡大に加えて、自社ブランドの拡充にも力を入れていく方針だ。
自社ブランドについては創業事業でもあるプロテインのD2Cブランドのほか、6月にはM&Aで譲り受けるかたちでフィットネス器具ブランドの展開も始めた。他社ブランドのM&Aについては今回調達した資金も活用しながら積極的に進めていく予定で、「今後4年を目処に提携ブランドの数を300〜400程度、自社ブランドの数を30前後まで広げていきたい」(荒井氏)という。