
英文を大量に読み込む「多読学習」は、英語力の向上につながる有効な手段として知られる。
この学習方法においてカギを握るのが、インプットする教材をどのように選ぶかということ。多読を継続していく上では「適切な難易度」で、なおかつ「面白い」教材を探すことがポイントだ。
自分の英語力に合っていても内容自体が面白くなければ飽きてしまうし、反対にいくらワクワクする内容でも難易度が高すぎると挫折するきっかけになってしまう。特に学校の授業の一環などではなく自分で多読に挑戦する場合には、教材選びが課題になりやすい。
この解決策として、「内容に定評のある日本の“人気マンガ”を教材にするのはどうか」といったアイデアから生まれたのが、マンガ作品で英語の多読学習に取り組めるアプリ「Langaku(ランガク)」だ。
同サービスはマンガに特化したAI翻訳システム「Mantra Engine」を手がけるMantra(マントラ)が、集英社の協力を得ながら新たに開発したもの。約1年間のベータテストを経て、まずは6月21日にiOSアプリ版をローンチした。
Mantra代表取締役の石渡祥之佑氏によると、Langakuの特徴は「すごく面白いマンガで多読学習ができることと、AIなどを活用した学習支援機能を搭載していること」だ。
ローンチ時点で「週刊少年ジャンプ」作品を筆頭に約30作品を収録。『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』、『ゴールデンカムイ』、『SPY×FAMILIY』、『花より男子』など人気作品を集めた。掲載されている作品は実際に英語圏で楽しまれている公式の英語版だという。
「エンタメコンテンツとして超一流のものがそろっているため、『読みたいコンテンツがないことが原因で、多読をやめてしまう』というのを防げるのではないかと考えています。作品数自体も多いので、何かしら自分の好みに合ったものが見つかるはずです」(石渡氏)

機能自体は比較的シンプルながら多読学習を支援するための仕掛けも作った。
たとえば自身の英語レベルに合わせて、英語で表示されるコマの割合を調整できる“英語率”はユニークな概念だ。英語力に自信がないユーザーは英語率を低めに設定することで日本語で表示されるコマを多くし、無理なく読み進められる。
またコマをタップするだけで簡単に日本語と英語を切り替えたり、辞書を開いたりすることも可能。発音を理解するための読み上げ機能も実装した。

これらの機能を実現する上では、コマの位置や内容、文字の量などを正しく検出する必要がある。こうした技術についてはMantra Engineの開発を通じて培ってきた画像認識技術や文字認識技術などが土台になっているという。
Langakuでは多くのマンガアプリと同様、各作品ごとに1日1話を無料で読める。作品ごとに単発で課金(従量課金制)するか、月額980円の有料プランに加入すればより多くのコンテンツを楽しむことも可能だ。
Langakuは集英社が2020年9月より実施したスタートアップアクセラレータープログラム「マンガテック2020」に採択されたプロジェクトで、コンテンツの提供だけでなく機能設計なども含めて集英社のメンバーと協力しながら開発に取り組んできた。
今回のアプリのローンチに先がけ、2021年6月からは高校生〜50代まで7000人以上を対象にベータテストを実施。そこで得られたフィードバックを基に機能改良も進めてきた。
収録作品は少年マンガが中心ではあるものの、ベータテストでは普段あまりマンガを読まない“年齢層の高い女性ユーザー”も「想定以上に多かった」(石渡氏)そう。家事の合間などで多読に挑戦する際にLangakuが使われているようで、イヤホンをずっとつけておく必要がなく、隙間時間で進めやすい点が受け入れられているポイントだという。
「ベータテストを通じてLangakuを熱狂的に使ってくれるユーザーがいたことが大きな自信にもなりました。たとえば授業で多読学習を取り入れている高校でも試していただいたのですが、これまでにないレベルでたくさん読んでくれる生徒さんが何人も出てきていて。多読学習ではたくさんの量に取り組くほど実力が上がっていくことがすでに示されているからこそ、実際にどれだけ読んでもらえるかがキモになります。(Langakuを活用することで)そのような結果にもつながっていることが、いくつかの場面で見えたので、手応えも得られました」
「Langakuの強みは読みたいコンテンツと、読む時のレベル感がぴったり合うように両立できること。これから多読に挑戦しようと考えている人だけでなく、過去に多読をやってみたものの挫折してしまったような人にも一度試してもらいたいです」(石渡氏)
今後は毎月新規作品の公開を予定しているほか、機能追加なども進めていく計画。将来的には英語以外の言語への対応や日本語学習への対応も検討していくという。