
- 米連邦通信委員会がApple・Googleにアプリストアから「TikTok」の削除を要請
- 『ポケモン GO』のNianticが約90人を解雇、4作品の開発中止
- 今週注目の海外企業の資金調達ニュース
評価額は2021年に4000億ドル(約54兆円)を突破し、テック企業の評価額の下落が続く今でも3000億ドル(約41兆円)を超えると言われるByteDance。同社が展開する短尺動画SNS「TikTok」は、2022年中に米国における1日あたりの視聴時間でYouTubeを超え、2024年には広告収入でYouTubeに並ぶとする調査結果も出ている。米国で急拡大する一方、国家安全保障上のリスクが懸念され、ついには米連邦通信委員会(FCC)がAppleとGoogleにアプリストアからの削除を要請した。
今回の「海外テックニュース-Trend Now」では、AppleとGoogleにTikTokの削除を要請したFCCの見解や、AR(Augumented Reality:拡張現実)スタートアップ・Nianticによる従業員の解雇、カスタマーサポート支援SaaSの「Front」による大型調達などを紹介する。
米連邦通信委員会がApple・Googleにアプリストアから「TikTok」の削除を要請
米連邦通信委員会(FCC)のコミッショナーであるブレンダン・カー氏は6月29日、Apple CEOのティム・クック氏、ならびにGoogle CEOのサンダー・ピチャイ氏に、両社が運営するアプリストアから、短尺動画SNS「TikTok」を削除するよう要請した。
6月17日には、TikTokを運営する中国企業・ByteDanceの中国拠点のエンジニアが、米国のTikTokユーザーの個人情報にアクセスしていると、米ウェブメディア・BuzzFeed Newsが報じていた。カー氏は書簡において、同報道に触れた上で「TikTokによる過剰なデータ収集は国家安全保障上のリスクに他ならない」と論じた。また、自身のSNSでは「TikTokは単なる動画アプリではない。羊の皮を被り、機密データを収集している」と投稿している。
TikTok is not just another video app.
— Brendan Carr (@BrendanCarrFCC) June 28, 2022
That’s the sheep’s clothing.
It harvests swaths of sensitive data that new reports show are being accessed in Beijing.
I’ve called on @Apple & @Google to remove TikTok from their app stores for its pattern of surreptitious data practices. pic.twitter.com/Le01fBpNjn
米国の議員や規制当局は以前より、TikTokによる機密データの収集や保護に関する懸念を表明してきた。ドナルド・トランプ前米大統領は2020年、ByteDanceに対してTikTokの米国事業の売却を命令。だが、ジョー・バイデン現米大統領は2021年、安全保障上のリスクを再検討するとし、売却命令を保留にした。
米国内でTikTokを運営する米法人・TikTokは6月18日、全米国ユーザーのデータを、米国内にあるOracleのクラウドサーバーに完全移管したと明かしていた。だが、カー氏は「それでも懸念は払拭されない」と綴っている。
『ポケモン GO』のNianticが約90人を解雇、4作品の開発中止
スマートフォン向け位置情報ゲーム『ポケモンGO』を任天堂と共同開発したことなどで知られる、AR領域のスタートアップ・Niantic。2021年11月には3億ドル(約342億円。2021年11月当時のおおよその為替レート、1ドル=114円で換算)を調達し、評価額は90億ドル(約1兆円。同上)となった。
同月にはAR開発プラットフォーム「Lightship」も提供開始し、順風満帆に見えていたNianticだが、景気後退による影響を背景に、全体の8%にあたる85〜90人もの従業員を解雇した。Bloombergが6月29日に報じた。
Bloombergが入手した社内メールによると、Niantic CEOのジョン・ハンケ氏は「経済的混乱に直面する可能性があるため、可能な限りのコスト削減が必要だ」と従業員に説明している。
また、Nianticでは変形ロボットIPである「トランスフォーマー」を題材とした『TRANSFORMERS: Heavy Metal』を含む、4作品の開発も中止する予定だという。だが、NBA(National Basketball Association)と開発中のバスケットボールゲーム『NBA All-World』には影響がない模様だと、米テックメディア・TechCrunchが6月30日に報じている。
今週注目の海外企業の資金調達ニュース
カスタマーサポート支援SaaSの「Front」が6500万ドルの資金調達
カスタマーサポート業務を支援するSaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)を提供するFrontは6月28日、6500万ドル(約88億6873万円)の資金調達を明かした。調達ラウンドはシリーズDで、評価額は13億ドル(約1770億円)となった。ベンチャーキャピタル(VC)のSalesforce VenturesとBattery Venturesがラウンドをリードした。
同社が提供する「Front」を使えば、メールやSNSのダイレクトメッセージで届く顧客からの問い合わせを一括で管理できる。返信を忘れている場合にはリマインドしてくれるほか、自分以外のスタッフに対応を求めるための機能も備わっている。
昆布ベースの新素材「AlgiKnit」が1300万ドルの資金調達
昆布をもとにあらたな繊維素材を開発するAlgiKnitは6月29日、1300万ドル(約17億7333万円)の資金調達を明かした。ラウンドはシリーズAで、VCのCollaborative Fundがラウンドをリードした。ファッションブランド・H&Mの投資部門、H&M CO:LABもラウンドに参加した。AlgiKnitは今後、ファッション、家具、自動車といった業界に新素材を提供していく予定だ。
シニア向けオンラインコミュニティ「Hank」が700万ドルの資金調達
シニア向けコミュニティ「Hank」は6月28日、700万ドル(約9億5467万円)の資金調達を明かした。ラウンドはシードラウンドで、VCのGeneral CatalystとResolute Venturesがラウンドをリードした。Hankは55歳以上のシニアに特化したコミュニティで、趣味の合うユーザー同士が集まるオンライングループや、食事やコンサートを共に楽しむリアルイベントなどを展開している。