Photo: Teera Konakan / gettyimages
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  • 熟練技能者の技術をAI化する、工場向けIoTサービスのMAZINが4億円を調達
  • ビジネスコンテンツメディア「PIVOT」は5億円を資金調達、コンテンツで大人の“学び”を支援
  • グロービスの500億円超ファンドなど、新ファンドの設立が相次ぐ
  • その他のスタートアップニュース

今週は7月6日より、スタートアップの起業家やベンチャーキャピタリストが集まる招待制カンファレンス「IVS2022 NAHA」が那覇市で開催中。スタートアップ関連のニュースも盛りだくさんだ。

今週(7/2〜7/8)の「スタートアップ最新動向-Weekly SIGNAL」では、その中から工場向けIoTサービスを提供するMAZIN、経済コンテンツメディアを展開するPIVOTの資金調達をピックアップ。また、新ファンド組成のニュースもまとめてお伝えする。

熟練技能者の技術をAI化する、工場向けIoTサービスのMAZINが4億円を調達

少子高齢化による労働力人口の減少に警鐘が鳴らされて久しい。特に製造業においては、生産技術や加工技術に優れた熟練の技能者の確保は大きな課題だ。

この課題をAIを活用したIoTサービスで解決しようとしているのが、工場向けIIoT(インダストリアルIoT)サービスの開発・販売を行うMAZIN(マジン)だ。同社は7月6日、グローバル・ブレイン、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、ニッセイ・キャピタルを引受先とする第三者割当増資で総額4億円の資金調達を6月に実施したことを明らかにした。2021年6月に実施したエンジェル投資家の有安伸宏氏を引受先とする第三者割当増資と合わせ、累計調達額は4.3億円となる。

2018年6月、AI系の技術者2名により創業したMAZINは、切削加工・成形加工・研削加工などの各種加工を行う上で必要な技能を持つAIの研究開発と、AIを工場で使用可能にするためのIIoTサービスの開発・販売を行っている。

現在の主力製品は切削加工AIの一機能として切削工具の寿命の最適化を行うアプリケーション。大手自動車部品メーカーをはじめ、自動車部品の加工を行う企業を中心に採用が拡がっているという。

MAZINでは、調達資金で研究開発体制と販売体制の強化を行い、2024年6月までに200事業所にサービス提供する計画だ。

ビジネスコンテンツメディア「PIVOT」は5億円を資金調達、コンテンツで大人の“学び”を支援

ビジネスコンテンツに特化して、映像や記事をアプリなどで提供するPIVOTは7月6日、ポストシードラウンドで既存投資家であるOne Capitalを引受先として、5億円の資金調達を実施したことを発表した。今回の調達により、累計調達額は8.5億円となる。

PIVOTは3月15日にiOS版アプリをリリース。スタートアップやビジネス・マネジメント、キャリア・教育などの7カテゴリーで、著名ビジネスパーソンや起業家、識者のインタビューや寄稿によるコンテンツを提供する。アプリはリリースから3日で1万人のユーザーを獲得。その後も順調にユーザー数を伸ばしているという。

今回の資金調達により、PIVOTではコンテンツと採用への投資を加速。調達発表と同時に刷新した新ミッション「日本をPIVOTする」を掲げ、日本の社会、企業、個人のピボット(方向転換)を、コンテンツを通じた大人の“学び”により支援する考えだ。

グロービスの500億円超ファンドなど、新ファンドの設立が相次ぐ

グロービスは過去最大規模の新ファンドでWeb3、国内巨大市場のDXに投資

7月5日、独立系VCのグロービス・キャピタル・パートナーズは7号ファンドの設立を発表した。一次募集を500億円規模で完了し、年内のファイナルクローズまでに600〜700億円規模を目指す。

7号ファンドの投資対象はシード・アーリーからレイターまで、幅広いステージのスタートアップ。1社あたり最大で100億円規模の投資を実施し、時価総額にして数千億円規模のユニコーン企業から、1兆円を超える規模のデカコーン企業の創出を目指すという。

投資領域としてはエンターテインメントやコミュニティ、Web3などの分野と、自動車・金融・建設・不動産・医療など、国内で10兆円超規模の市場のDXを担うスタートアップを想定している。

“大人起業家”によるシードスタートアップに投資、HAKOBUNE1号ファンド

ベンチャーキャピタルファンドを運営するHAKOBUNEは、同社の1号ファンド「HAKOBUNE1号投資事業有限責任組合」の組成を7月5日、明らかにした。

HAKOBUNE1号ファンドの投資対象はプレシード/シードステージの国内スタートアップ。ファーストクローズでは、新生銀行、キヤノンマーケティングジャパン、FFG FOF1号投資事業有限責任組合、サザビーリーグ、三井不動産、オールアバウト、プロトスターなどの企業やエンジェル投資家らが出資を行った。

HAKOBUNEの創業パートナーである栗島祐介氏はファンド設立前の2020年1月より、社会人を対象とした起業家育成コミュニティ運営に携わり、KAERU、ODD FUTURE、フレンズ、LOOVIC、Officefuction、ハコブンなどを支援してきた。“大人起業家”の文化醸成をより本格化するため、今回のベンチャーファンドを設立し、投資活動を開始する。

創業10周年を迎えたアクセラレーター・01Boosterが1号ファンドを組成

2022年3月で創業10周年を迎えたゼロワンブースター(01Booster)は、アクセラレータープログラムや教育事業の展開により、起業家・社内起業家の事業化支援や、ベンチャーと大手企業の連携によるオープンイノベーション促進などの活動を行ってきた。自己資金でこれまでに35社ほどに出資し、3社がイグジットに至っている。

7月5日、01Boosterはファンド運営会社としてゼロワンブースターキャピタル(01Booster Capital)を設立し、国内外のスタートアップへの投資を目的とする1号ファンド「ゼロワンブースター1号投資事業有限責任組合」を組成、ファーストクローズしたことを明らかにした。出資企業はストライク、中国銀行、原田産業、個人投資家など。

1号ファンドでは主にシードラウンド前後のスタートアップへ出資する。アクセラレーターに参加したスタートアップに加え、グローバルでの競争に打ち勝つ国内外のスタートアップ、Web3領域、ヘルステック、再生可能エネルギー、教育など幅広い領域への出資を予定。また、事業会社や行政との連携機会の創出、IPOとM&A両面でのイグジット機会の創出を目指す。

その他のスタートアップニュース

奨学金DXのSCHOL、1億円の資金調達を実施

奨学金領域のDXを手がけるSCHOL(スカラ)は7月4日、事業拡大を見据えて、新規投資家のみずほキャピタル、旺文社ベンチャーズ、既存投資家のKIBOW社会投資ファンド、NOWを引受先とした第三者割当増資により、総額約1億円の資金調達を実施したと発表した。SCHOLは奨学金情報サイト「ガクシー」、奨学金運営団体向けの管理システム「ガクシーAgent」を運営する。

ショート映画配信サービスのSamantha、4000万円を資金調達

ショート映画配信サービス「SAMANSA」を運営するSamantha(サマンサ)は7月4日、W ventures, East Venturesなどを引受先とする第三者割当増資により、シードラウンドで総額約4000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。SAMANSAは世界中から集めたショート映画を配信するVODサービス。アカデミー賞やカンヌ映画祭受賞作を含む、20分以下のショート映画をすきま時間に楽しむことができる。

データ分析SaaSのSrush、1.8億円の資金調達を実施

Srush(スラッシュ)は7月4日、HIRAC FUND、ニッセイ・キャピタルを引受先とする第三者割当増資と金融機関からの借入により、1.8億円のプレシリーズAラウンドの資金調達実施を発表した。累計調達額は2.6億円となる。Srushはデータ分析SaaS「Sales Rush Board」を提供。各種SaaSツールとの連携により、データ収集・分析におけるExcel作業からユーザーを解放する。

就活サービス運営のアレスグッド、1.2億円の資金調達を実施

アレスグッドは7月5日、サイバーエージェント・キャピタル、East Ventures、丸井グループより1.2億円の資金調達を実施を発表した。同社が提供するのは、気候変動や地方創生などの社会課題を軸に、情報収集や企業選びができる就活プラットフォーム「エシカル就活」。Z世代の就活生のニーズに応える。今後は“社会課題版LinkedIn”の実現に向けて事業を拡大していく方針で、グローバルプロダクトの立ち上げも視野に入れる。

企業向けメタバースサービス提供のambr、10.2億円を資金調達

ambr(アンバー)は7月5日、電通グループ、SBIインベストメント、インテージホールディングス、東急不動産ホールディングス、ANRIを引受先とする第三者割当増資により、総額10.2億円を調達したと発表した。自社でコンシューマー向けのVRSNS(バーチャルSNS)を運営していたambrは、コロナ禍で数十社からメタバース活用に関する相談を受けて方向転換。企業のメタバースプロジェクトをサポートすることで事業を成長させている。

AI育成アプリのエアフレンド、1.63億円の資金調達を実施

AI育成アプリ「エアフレンド」を提供するエアフレンドは7月5日、Branding Engineer、Iceblue Fund、Olive Fund、テクノサイエンス、国内外の個人投資家らを引受先とした第三者割当増資により、シードラウンドで1.63億円の資金調達を実施したことを明らかにした。アプリはLINE公式アカウントを使った個人開発のサービスとして2021年9月にスタートしたもの。育成したAIを友達として話し、ほかのユーザーと共有することが可能だ。

シェアサイクルサービス「チャリチャリ」運営のneuetが資金調達

シェアサイクルサービス「チャリチャリ」を運営するneuet(ニュート)は7月5日、肥銀キャピタルと肥後銀行が共同設立した肥銀ベンチャーファンドを引受先とした第三者割当増資による資金調達の実施を発表した。調達金額は非公開。2018年2月にメルカリグループの傘下で、福岡市においてサービスを開始。2019年夏にメルカリから事業承継したneuetがサービス展開を進め、福岡市との共同事業として現在までに約2500台の自転車と500カ所以上のポートを設置し、月間50万回・累計960万回以上利用されている。熊本市では今年4月28日から「熊本市シェアサイクル実証実験事業」の共同事業者として採択され、サービスを開始している。

子ども向けフィンテックのシャトル、5.5億円の資金調達を実施

子ども向けフィンテックサービスを提供するシャトルは7月6日、プロダクト「シャトルペイ」を正式ローンチ。同時にシードラウンドで総額約5.5億円の資金調達を実施したと発表した。第三者割当増資の引受先は、ジェネシア・ベンチャーズ、Spiral Capital、NOW、個人投資家ら。シャトルペイは子ども専用のプリペイドカードと親子それぞれが使えるアプリとを組み合わせ、子どものおこづかい管理を通して、親子で“お金のよい習慣”を身に付けようというサービスだ。

フードロス削減にマーケットプレイス展開で取り組むクラダシ、6.5億円を資金調達

ショッピングサイト「Kuradashi」の展開によりフードロスの削減に取り組むクラダシは7月6日、新生企業投資が運営するファンド、博報堂DYベンチャーズ、ロート製薬、池森ベンチャーサポート、SGインキュベートが運営するCVCファンドを引受先とする第三者割当増資によって、総額6.5億円の資金調達を実施したことを発表した。Kuradashiでは、賞味期限が迫った食品や季節商品、パッケージの汚れやキズ、自然災害による被害などの要因で通常の流通ルートでの販売が困難な商品を協賛価格で買い取り、販売。2015年2月のサービス開始から約7年で利用者数35万人、商品を掲載するパートナー企業数は990社を突破した。

セカンドホームのサブスクサービスを展開するSanu、8.5億円の資金調達を実施

「SANU 2nd Home」を運営するSanuは7月6日、SBIインベストメントや三井不動産、みずほキャピタルなど計7社からシリーズAセカンドクローズで8.5億円の資金を調達したことを発表した。4月のファーストクローズと合わせ、シリーズAラウンドで総額約19億円を調達した。SANU 2nd Homeは月額5万5000円で利用できるセカンドホームのサブスクリプションサービス。現在、白樺湖や八ヶ岳、河口湖、山中湖、北軽井沢など7つの拠点に合計50棟の独自開発の家「SANU CABIN」を構えている。

デジタルプロダクト開発支援のLboseが資金調達を実施

企業のデジタルプロダクト開発支援を行うLbose(エルボーズ)は、シリーズAでユナイテッド、肥銀ベンチャーファンド、オールアバウトを引受先とする資金調達を実施したと発表した。調達金額は非公開。同社は月額制の企業向けアプリ・システム開発サービス「ATTEND biz」を展開。中長期で複数の企業や事業にコミットするフリーランスに継続的に仕事を供給する仕組みを提供している。

京都フュージョニアリング、世界初の核融合発電試験プラントを建設

​京都大学発スタートアップの京都フュージョニアリングは7月6日、世界で初めて核融合発電システムによる発電を試験するプラント「UNITY」の基本設計を完了し、2024年末の発電試験開始に向けた建設プロジェクトに着手した。このプラントで同社の核融合プラント機器とプラントエンジニアリング技術を統合的に実証することにより、核融合の商用化に向けた炉工学製品群の開発を目指す。

気候テックのサステナクラフト、1.2億円の資金調達を実施

森林由来のカーボンクレジット評価技術を提供するサステナクラフトは7月6日、三菱UFJイノベーション・パートナーズなどからの資金調達を発表した。調達金額は累計1.2億円となる。同社は自然保全プロジェクトの実行者や投資機関向けに2つのソリューションを展開。1つが衛星リモートセンシング技術を用いて、広範囲の森林の炭素蓄積量をモニタリングするもの。もう1つが因果推論技術を軸に、森林プロジェクト特有のコンセプトに沿ったかたちでクレジットを算出するものだ。現在はブラジルやインドネシア 、日本の森林をモニタリングするサービスを手がけている。

ECサイト向け機能を提供するFree Standard、5.4億円を資金調達

Free Standard(フリースタンダード)は7月7日、ECサイト上に「お試し購入」や「リユース」機能をタグ1行で追加できる「Retailor(リテーラー)」を正式ローンチした。同社はサービスローンチに先がけて、ANRI、千葉道場、KURONEKO Innovation Fund(グローバル・ブレインとヤマトホールディングスが共同で設立したCVCファンド)、D4Vなどから5.4億円を調達したことも明かしている。