
- 顧客の声を手間なく集約、ユーザー目線のプロダクトを開発を後押し
- 目指すは「プロダクト開発者のためのCRM」
優れたプロダクトを作っていく上で、顧客のニーズをすばやく捉えることは欠かせない。特に自社製品と競合するようなプロダクトが存在する領域では、営業やマーケティングだけではなく、顧客の声を反映しながらプロダクトそのものを磨き上げるための仕組みが重要になる。
2020年創業のフライルが手がける「Flyle(フライル)」は、そんな“顧客の声を起点としたプロダクト開発”を後押しするプラットフォームだ。
同サービスではさまざまな経路から寄せられた顧客の声を1カ所に集約。そのデータを基に開発の優先順位づけや、ロードマップの作成をスムーズにする機能も取り入れている。
フライルの3人の創業メンバーは、それぞれが起業前にZUU、ユーザベース、ビズリーチで事業開発やプロダクト開発に携わってきた。サービスの価値を向上させていくには本質的な顧客ニーズをくみ取り、製品へ反映する仕組みが必要──。そのような考えからプロダクトマネージャーの業務を支援するべく、共同で会社を立ち上げた。
Flyleのベータ版を開発するにあたっては実際に100人を超えるプロダクトマネージャーにインタビューを実施し、自分たち自身も顧客の声を基にしながらサービスを設計。2021年6月にサービスの提供を始めてから約1年、これまでに大手SaaS企業やスタートアップなど100社以上がFlyleを活用している。
今後は機能開発を進めながら非IT系企業などより多くの顧客にサービスを届けていく計画だ。そのための資金として、フライルではALL STAR SAAS FUND、UB Ventures、TablyよりプレシリーズAラウンドで3億円を調達した。
顧客の声を手間なく集約、ユーザー目線のプロダクトを開発を後押し

Flyleの特徴は、複数のチャネルに散らばっていた顧客からのフィードバックを効率的に集約できる点にある。
Slackで共有されている顧客からの機能要望、メールでやりとりされている各社の成約理由、Salesforce内の商談メモに書かれた顧客の課題感、Zendeskにたまっている失注理由──。各サービスと連携することで、さまざまな顧客の声を手間なく一元化できるのが強みだ。

フライル代表取締役CEOの財部優一氏によると、顧客のフィードバックの収集にはスプレッドシートやSalesforceなどのツールが使われることが多い。その場合、どうしても労働集約型の業務になりがちで、顧客の数が増えるほど収集業務の負荷も増す構造になってしまう点が現場の課題となっていた。
また日本の場合は営業部門が強いことが多く、「顧客情報がビジネス部門のみに留まり、なかなか開発部門に入ってこない」といった悩みを抱えている企業も少なくないという。

Flyleでは集めた顧客の声を基に、プロダクト開発の方針を整理するための仕組みも搭載。顧客の声を参照しながら機能開発の企画ができる機能や、開発の優先度を決める際に役立つスコアリング機能などを備えている。
「1つのツールを使うだけで、今まで業務プロセスを構築できていなかったプロダクトマネジメントのワークフローを簡単に構築できる点が(顧客から)選ばれる大きな理由になっています」
「フィードバックの管理や優先順位づけ、ロードマップの作成など多岐にわたるプロダクトマネジメンの業務の中の労働集約的な部分を効率化でき、属人的な業務については標準化できる。特に複数のプロダクトマネージャーが在籍し、チームで共通のプロセスで意思決定をしていくことが求められるフェーズで課題が大きくなり、Flyleを導入いただくケースが多いです」(財部氏)

これまではIT系の企業を中心に、ユーザベースやマネーフォワード、ディー・エヌ・エーといった上場企業からスタートアップまで100社以上にサービスを提供してきた。
ある企業ではスプレッドシートで管理していた顧客のフィードバックや機能開発の優先度づけなどをFlyleに切り替えることで、業務工数が約10分の1程度まで削減できたという。
目指すは「プロダクト開発者のためのCRM」
フライルでは今回調達した資金を用いて組織体制を拡充し、顧客フィードバックの収集や分析を自動化する機能を中心に機能拡充を進めていく方針。狙っているのは、まだ決定版と言えるようなツールが存在しない「プロダクト開発者のためのCRM」だ。
「セールスならSalesforce、マーケティングならHubSpotといったように代表的なCRMが存在する中で、プロダクト開発を良くするために開発者が顧客を理解する場所は限られているのが現状です。そのようなプロダクト開発者のためのCRMというカテゴリを新たに創造していきたいと考えています」(財部氏)
財部氏によるとハードウェアを扱う企業や大手飲食店など、非IT系の企業の活用事例や問い合わせも少しずつ生まれてきているとのこと。必ずしも「プロダクトマネージャー」という名称ではなかったとしても、あらゆる業界で同様の業務や課題を抱えている部門は存在するため、IT業界以外の顧客にも活用されるプラットフォームを目指すという。
さまざまな業界でITの活用やソフトウェ化が進んでいることに伴い、プロダクトマネージャーのニーズが増している。またカスタマーサクセスやプロジェクトマネジメントといった周辺領域の市場が伸びてきていることもあり、プロダクトマネージャーを支える「プロダクトマネジメント」領域は、これからさらなる成長が見込まれる分野だ。

この領域のプレーヤーとしては米国のProductPlanやLaunchNotes、チェコ発のユニコーン企業Productboardなどが事業を拡大している状況。フライルとしても将来的なグローバル展開も視野に入れながら、事業展開を加速していきたいという。