
決済の観点からECサイトの購入体験をスムーズにする「1-click checkout(ワンクリック決済)」サービスが海外を中心に広がっている。
2022年1月に3.5億ドルを超える大型の資金調達を実施したBoltを筆頭に複数のスタートアップが出てきているほか、Shopifyの「Shop Pay」やAmazonの「Amazon Pay」など大手のECプラットフォーマーも自社でサービスを手がける。
ワンクリック決済は文字通りECサイト上で決済に至るまでの手間を減らし、ワンクリックで完結させる仕組みのことを指す。
多くのECサイトでは商品をカートに追加し、購入手続きや支払い手続きが完了した後に決済をする。一方でワンクリック決済が実装されているサイトでは“カートに追加した後の面倒な手続き”が省略され、商品を選んだ後にすぐ決済が完了する。ECサイト事業者にとっては顧客の離脱につながるポイントを減らせるため、双方にメリットのある決済手段だ。
もともとはAmazonがワンクリック特許を取得していたが、2017年に特許が失効。そのタイミングを1つの機に、グローバルではさまざまなスタートアップや大手プラットフォーマーが同様の機能の開発に取り組むようになった。
この領域に特化するスタートアップに関しては累計で1.2億ドル以上を集めていたFastが4月にサービスを停止するなど必ずしもポジティブなニュースばかりではないが、ワンクリック決済の仕組み自体は徐々に広がっている状況だ。
このような決済手段を、日本の複数のECサイトを横断して使えるようにする──そのようなチャレンジに取り組んでいるのが、購入体験プラットフォーム「Recustomer(リカスタマー)」を展開するRecustomerだ。
もともとECサイトにおける“返品”や“交換”の課題を解決する事業からスタートした同社では、現在3つのサービスを手がける。
1つ目が返品業務を自動化する「Recustomer Return&Cancel」。2つ目がECサイトを手がける企業がオリジナルの商品配送追跡ページを作れる「Recustomer Tracking」。そして3つ目が7月19日より提供を開始したワンクリック決済サービスの「Recustomer Checkout」だ。
Recustomer CheckoutはさまざまなECサイトにワンクリック決済を実装できるサービス。購入者は初回の購入時に名前や住所などの情報を入力しておけば、2回目の買い物以降は入力したメールアドレスに送られてきたコードを打ち込むだけ(ワンタイムパスワード形式)で決済がスムーズに完了するようになる。

特徴は特定のEC事業者に限らず、Recustomer Checkoutを活用している企業であればブランド横断でこの仕組みが使えること。別々のECサイト構築ツールを使って運営しているブランドでも、それぞれがRecustomer Checkoutを組み込んでいれば、2回目の買い物以降は届け先住所や支払い情報の入力は必要ない。
Recustomer代表取締役の柴田康弘氏によるとEC市場が拡大する反面、その裏で取り残された課題がいくつか存在するという。その代表例がECサイトで商品をカートに追加した後に離脱してしまう「カゴ落ちによる売上の損失」だ。
「(カゴ落ちにより)約70%が離脱してしまっている」と言われるほど、事業者にとっては大きな課題になっているカゴ落ち。面倒な会員登録や購入手続き、返品対応への不満、配送体験の悪さなど原因はいくつもあれど「購入体験が原因で離脱が起きる」というのが柴田氏の考えだ。
現在Recustomerが展開する3つのプロダクトは、それぞれ別のアプローチから購入体験を改善し、カゴ落ちによる離脱を減らすためのもの。Recustomerとしては新たに決済領域のサービスもラインナップに加えることで、ECブランドの会員登録率の向上とカゴ落ち率の改善をサポートするとともに、最適な購入体験の実現を後押ししていくという。