Back Market アジア太平洋地域ディレクターのアレクシー・ジェローム氏
Back Market アジア太平洋地域ディレクターのアレクシー・ジェローム氏

記録的な円安などを背景に、日本におけるスマートフォンの販売価格が高騰している。Appleが7月、iPhoneなどの製品の価格を大幅に値上げしたことも、SNSで話題を呼んだ。機種によって差はあるものの、「iPhone 13 Pro Max(1TB)」については、19万4800円から23万4800円と、実に4万円もの値上げをしている。

こうしたスマートフォン価格の高騰に商機を見出すのが、フランス発のユニコーン企業・Back Marketだ。同社が展開するマーケットプレイス「Back Market」では、スマートフォンやPC、ワイヤレスイヤホンといったガジェットの整備品(編集部注:整備業者が整備した上で販売する中古品)を販売。定価より30〜70%程度、割安な価格で商品が販売されている。

Back Marketのアジア太平洋地域ディレクターであるアレクシー・ジェローム氏は7月27日、報道関係者向けの説明会で自社の日本戦略について語った。今後は円安を追い風に、日本展開を本格化していくという。

フランス発・整備品ガジェットのマーケットプレイス

Back Marketは2014年にフランス・パリで創業したスタートアップだ。現在、フランス、スペイン、ドイツといったヨーロッパ諸国に加えて、米国、日本でもサービスを展開している。これまでに約650万人のユーザーがBack Marketで商品を購入。商品の安さ、そして中古品利用による環境への負担軽減がユーザーを引きつけているとジェローム氏は語る。現在、ユーザーの25%が環境への配慮を理由にBack Marketでガジェットを購入しているという。

Back Marketでは、「リファービッシャー」と呼ぶ整備業者が、回収した中古ガジェットを整備・クリーニングした上で販売する。世界では1500社以上、日本では25社のリファービッシャーがBack Marketに登録。Back Marketのビジネスモデルは、リファービッシャーから販売手数料を得るというものだ。

リファービッシャーはBack Marketが設けた独自の品質ガイドラインに従わなければならない。その基準を満たさない業者は登録を解消されるという。

また、Back Marketの従業員が業者から無作為に商品を購入して評価する「ミステリーショッピング」といった制度を導入することで、品質維持に繋げている。Back Marketが販売する商品の故障率は約4%。同社の調査によると、市場に出回る新品のガジェットの故障率は3%ほどなので、ほぼ同程度だと説明する。

iPhoneの値上げは整備品市場の「追い風」

Back Marketが日本でサービスを開始したのは2021年3月のこと。同年に携帯電話キャリアでのスマートフォン購入時のSIMロックが原則禁止になることを見越して、日本展開に踏み切った。

日本市場での主力商品は、冒頭でも触れた「iPhone」シリーズだ。ジェローム氏は「日本ではiPhoneユーザーの比率が非常に高い。そのためiPhoneの値上げは、Back Marketにとって追い風となるでしょう」と期待を寄せる。

Back Marketは1月、シリーズEラウンドで5億1000万ドル(約586億円。当時のおおよその為替レート、1ドル=115円で換算)の資金調達を実施。評価額は57億ドル(約6555億円。同上)となった。

ジェローム氏は日本市場に投入する金額は明かさなかったが、採用とマーケティングを強化する方針だと述べた。2023年には今年と比べて3倍規模の売上を目指すという。また、現在はウェブのみでサービスを展開しているが、2023年にはアプリ版もリリース予定だ。

モバイル専門のマーケティング機関・MMD研究所の調査によると、整備品を含む中古スマートフォンの所有率は年々上昇している。2020年3月には6.1%だったが、2022年4月には11.6%にまで上がった。今後、Back Marketで販売されるような整備品が、消費者の選択肢の1つとしてより浸透していく可能性は高い。