左から個人投資家の有安伸宏氏、OLTA代表取締役CEOの澤岻優紀氏、取締役CSOの武田修一氏、取締役CFO 浅野雄太氏左から個人投資家の有安伸宏氏、取締役CSOの武田修一氏、OLTA代表取締役CEOの澤岻優紀氏、取締役CFOの浅野雄太氏 写真提供:OLTA
  • オンラインで完結、24時間以内審査のファクタリングサービス
  • 企業の資金調達、選択肢を増やす
  • メガバンク3行の融資を含め、2年で30億円の資金調達

売掛債権(請求書)を買い取ってもらい、現金化する「ファクタリング」。これまでオフラインで行われていたこの事業をオンライン化することで、スタートアップや中小企業の資金調達ニーズを解決しようとしているのが、FinTechスタートアップのOLTA(オルタ)だ。創業2年の同社にはすでに100億円超の申し込みがあり、3大メガバンクからの融資を含め、30億円の資金を調達しているという。(ダイヤモンド編集部副編集長 岩本有平)

オンラインで完結、24時間以内審査のファクタリングサービス

 ファクタリングはこれまで、売掛先の貸し倒れリスクをアウトソーシングしたり、売掛金を早期に現金化したりするために使われてきたサービスだ。国内でも銀行系や独立系の事業者が数多く存在している。だがそのほとんどは事業者のオフィスに向かい、対面で契約をした上で審査を行う“オフライン”のビジネス。現金化までには数日かかることがほとんどだった。

 またファクタリングでの売掛債権の現金化は、貸金業法上の「融資」に当たらない。そのため法定の上限金利が定められておらず、貸し倒れリスクの高い中小企業向けファクタリングでは、20〜30%の手数料を求める事業者が多いというのが実情だった。そのため、リスク保証のためにコストをかけられる大企業、高い手数料を受け入れてでも資金が必要な中小企業など、利用の用途が限られたサービスだった。

 OLTAが提供するファクタリングサービス「OLTA」は、このファクタリングにまつわる一連の作業をオンラインで完結している。売掛債権を現金化する場合、売り主はサイト上で本人確認書類や売却したい請求書、銀行口座の入出金明細、決算書の情報をアップロードして申し込みをすれば完了だ。OLTAは、そのデータをAIと人力で審査して、申し込みから24時間以内に結果をメールで送付する。売り主が審査結果に納得すれば、オンライン上で請求書を売却。対面でのやりとりをすることなく、売り主の銀行口座に入金される。

 AIでの審査には、約20万社のデータで構築した、独自のスコアリングモデルを活用している。ファクタリングには、売り主とファクタリング業者が直接やりとりをする「二者間ファクタリング」と、二者に売掛先を加える「三者間ファクタリング」の2つの方式があるが、OLTAは二者間ファクタリングとなっている。

 店舗を持たず、AIと人力の組み合わせで審査を行うことで、高速化とコスト削減を実現。手数料は2〜9%ほどになるという。2017年11月にベータ版のサービスを開始しており、すでに合計で100億円超の申し込みがある。申し込みの約半数は製造・建設業界だが、季節ごとの資金ニーズがあるアパレル企業や、受注する案件次第で急な資金ニーズが発生するIT企業などからも引き合いがあるという。

 至急の資金ニーズを解決するということもあり、高額な手数料を設定したり、中にはファクタリングを装った闇金業者が逮捕されるという事件もあったりと、ともすると「ファクタリング=違法貸金」といった誤解が生じたこともある。OLTAでは弁護士同席で複数回金融庁に確認を取るなどしてサービスを準備してきた。米国では5年以上前から「BlueVine」や「Fundbox」といったファクタリングサービスが提供されている。また国内でもマネーフォワード子会社の「MF KESSAI」やスタートアップの「LENDYファクタリング」などが立ち上がっている。

OLTAのクラウドファクタリングのイメージOLTAのクラウドファクタリングのイメージ

企業の資金調達、選択肢を増やす

 OLTAの創業は2017年4月。代表取締役の澤岻優紀(たくし・ゆうき)氏は新卒で野村證券に入社。大企業向けに資金調達の支援をしていく中で「スタートアップ(の第三者割当増資)を除けば、調達手段は『融資』がほとんど。企業の資金調達のための選択肢を増やしたい」と考えるようになったのだという。自らサービスを立ち上げようと退職して、練っていたアイデアの1つがファクタリングだった。

「中小企業はいつも掛け売りに悩みを抱えています。それは(仕入れのために)お金を支払うスピードと、(売り掛けの)お金が入るスピードに違いがあるから。ですが、ノンバンク融資も減っており、地銀や信金も中小企業の短期・少額の運転資金は提供しづらい状況。また、事業が順調でもお金の流れが必要な場面には直面します。そんな時の資金調達手段を変えていきたいと思いました」(澤岻氏)

 澤岻氏はビジネスマッチングアプリを使って、IT業界関係者などにヒアリングを進めた。その中で出会ったのが、当時ソニーの社員としてプレイステーションの経営戦略に関わっていた、現・OLTA取締役CSOの武田修一氏。澤岻氏や武田氏とファクタリングの事業プランを磨き、OLTAを立ち上げた。同時期に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のインキュベーションプログラムにも参加。MUFGのデータ提供を受けて、審査用のスコアリングモデルを構築していった。

メガバンク3行の融資を含め、2年で30億円の資金調達

代表取締役の澤岻優紀氏澤岻優紀氏

 OLTAでは創業間もない2017年に、エンジェル投資家の有安伸宏氏から数千万円の資金を調達。同年10月にはジャフコ、BEENEXTから約5億円の資金を調達した。また2019年3月までに、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行のメガバンク3行をはじめとする複数金融機関から、融資で6.6億円を調達。今回発表したSBIインベストメント、ジャフコ、BEENEXT、新生銀行からの約18億円の資金調達をあわせて、創業2年での資金調達額は30億円に上る。

 同社では今回調達した資金をもとに人材を確保してサービスを開発していくほか、パートナー戦略の強化を進める。すでにクラウド会計サービスのfreeeと請求書情報の共有をしているが、今後は、AIを使った審査機能を外部の金融機関に提供することも計画中だという。

「今後は1年ほどかけて、国内でファクタリングの認知度を上げていきます。OLTAという会社の名前を知ってほしいのではなく、クラウドファクタリングについて知ってもらいたい」

「また我々は『金融サービスでもうける』という会社ではなくて、スコアリングの会社であることが強みです。将来的には新たな信用を創造する会社として、金融以外のものも提供できるかも知れないと考えています」(澤岻氏)

「仮に粗利率が2〜3割の製造業の会社があったとして、そこが『急に現金が必要になった』というときに、(既存のファクタリングサービスのように)2〜3割の手数料を取られると利益になりませんでした。ファクタリングは『やむなく使わないといけないもの』という位置づけでしたが、それを変えていきたいと考えています」(武田氏)