
- “リアルなオペレーション”も含めて情シス担当者の業務効率化をサポート
- 2023年内に英語圏で展開へ、年初にもシンガポールでサービス提供
ITデバイスとSaaSの統合管理サービスを通じて、コーポレートIT業務の効率化や自動化を支援するジョーシス。同社では国内事業のさらなる拡大や2023年に予定している海外展開に向けて、グローバル・ブレイン、ANRI、Yamauchi No.10 Family Office、デジタルホールディングス、WiLより約44.2億円を調達した。
「ジョーシス」はラクスルの1事業として2021年9月にサービスを開始。2022年
2月からはラクスルより分社化して事業を運営してきた。2023年には英語圏への進出も計画中だ。
“リアルなオペレーション”も含めて情シス担当者の業務効率化をサポート
ジョーシスはITデバイスとSaaSを統合管理する仕組みを軸に、情報システム部門の業務を効率化するサービスだ。従来はエクセルやスプレッドシートなどで管理されていた「誰が、どんなデバイスやSaaSを利用しているのか」を可視化し、従業員の入退社に伴うアカウントの発行や削除、在籍中の権限管理などを効率化する。
50以上のSaaSとAPI連携しており、各サービスの利用状況はジョーシス上でリアルタイムに更新される。アカウントの発行や削除も一括処理できるため、各SaaSの管理画面を開いて何度も同じような作業をする手間もない。
加えてジョーシスではITデバイスを購入するためのオンラインストア機能や、キッティング、廃棄、下取りなどをサポートするBPO(アウトソーシング)の仕組みも備える。
「SaaS管理」のサービスは日本でも複数のスタートアップに加えてマネーフォワード、メタップスなどがサービスを展開しているが、ITデバイスの購入管理やアウトソーシングまで網羅しているのがジョーシスの特徴と言えるだろう。
実際に、顧客が導入を検討する際に他社のSaaS管理ツールと比較されることもあるが「SaaS管理だけでなく、デバイスの管理や購入、廃棄など『リアルなオペレーションも含めた(情シス担当者の)干渉度合いを減らせないと大変なままですよね』という考え方に共感して活用いただけることが多いです」(ジョーシスCPOの横手絢一氏)。

横手氏によると、2021年9月の正式ローンチ以降は想定以上に問い合わせが多く「すぐにコンセプトがマーケットにフィットしている手応えをつかめた」という。この1年はプロダクトの機能面と事業体制を強化しながら事業を広げてきた。
あくまでローンチ初年度の数字にはなるものの、MRR(月次収益)は9カ月前と比較して29倍に増加。契約顧客の満足度を測るエリアテストでも50%の顧客が「ジョーシスを使えなくなると、とても残念」と回答しており、顧客単価や契約率(問い合わせから契約に至った顧客の割合)などの状況も踏まえて「第一段階のPMFには到達できた手応えがある」と話す。
現在は従業員数8人のSMBから1000人以上の大企業までさまざまな企業で導入が進むが、特に100人を超えたあたりから「担当者の負担が大きくなり、課題に直面しやすい」とのこと。実際に従業員数200〜500人程度の企業を中心に利用が進んでいるそうだ。
またSaaS管理だけに特化していないという特性もあり、アパレル事業者や酒屋、花屋などIT企業に限らず幅広い業界のユーザーが存在するという。
2023年内に英語圏で展開へ、年初にもシンガポールでサービス提供
日本で事業が拡大する中で、今後は海外展開に向けた投資にも力をいれる。
ジョーシスは当初からテクノロジー開発を担うインド拠点と事業開発を担う日本拠点とのグローバルチームでサービスを運営してきた。調達した資金を活用して開発面とビジネス面双方の体制を拡充していく計画。2023年初頭にはシンガポールから海外展開を始める予定で、それに向けた準備も進める。
「コロナ禍におけるハイブリッドワークへの対応やSaaSの増加、デバイス管理にあたってのコンプライアンスやセキュリティ対策など、情報システム部門に求められる業務の幅が異様に変化してきていると感じています。(日々の業務に追われていて)業務自体のアップデートがあまりできていないのに、守備範囲だけが広がってしまっている状況です」(横手氏)
このような課題は日本特有のものではない。ヒアリングや調査を通じて「各国で多少の違いはあるものの、根本的な課題はかなり共通することが見えてきた」という。
「デバイスやアプリケーションが凄まじい勢いで進化しているものの、業務オペレーションの変化は追いついていません。そのひずみは(SaaSやテクノロジーの活用が進む)アメリカですら存在するものであり、それ以外の国においても存在している課題です」(横手氏)
正式ローンチから1年、日本において情シス担当者の“不”の解決に取り組んできたジョーシス。今後は日本のみならず、海外企業におけるコーポレートIT業務の自動化の推進を目指す。