(左から2番目)アークエルテクノロジーズ代表取締役の宮脇良二氏
(左から2番目)アークエルテクノロジーズ代表取締役の宮脇良二氏 

2050年までにCO2排出量を全体としてゼロにする、いわゆる「2050年カーボンニュートラル」。その実現に向け、ここ数年で企業におけるCO2排出量を“見える化”するサービスが多数登場するなど、盛り上がりを見せている。

CO2排出量見える化・削減クラウドサービスとして、新興企業であるアスエネが「アスゼロ」を提供しているほか、ゼロボードが「zeroboard」を提供。また、総合商社大手の三井物産が100%子会社のe-dashを設立し、同様のサービス「e-dash」を展開している。

こうしたサービスにより、手軽にCO2排出量を可視化しやすくなった一方、その後の具体的なアクションの策定までできている企業は少ない。

そんな課題を解決すべく、福岡発のスタートアップであるアークエルテクノロジーズが10月20日、自動でCO2排出量の可視化から具体的なアクションの提案まで行うサービス「カーボンニュートラルシミュレーター」を発表した。2022年12月から大企業向けにカスタム版の提供を開始し、2023年4月以降に業種別のSaaS版を提供する予定だという。

カーボンニュートラルシミュレーターは、CO2排出量の削減目標を立てる際に基準となる「基準年度」や「目標達成年度」、拠点ごとの予算額や予算使用期間、そのほかガス空調や電気空調、照明設備などのスペックを入力すると、シミュレーション結果や予算範囲内で実行可能な施策がアルゴリズムから抽出され、拠点ごとに提案されるというもの。

またシミュレーション機能以外にも、IoTサービスやCSVファイルからデータを読み込み(編集部注:今後、アスエネやゼロボードなどのツールともAPI連携をする予定)、CO2排出量を見える化する機能も提供する。シミュレーション機能の価格は、既存のCO2排出量見える化・削減クラウドサービスと同様に、1拠点あたり月額8000〜1万円での提供を予定しているとのこと。見える化機能は無料。

カーボンニュートラルシミュレーターの利用イメージ 画像提供:アークエルテクノロジーズ
カーボンニュートラルシミュレーターの利用イメージ 画像提供:アークエルテクノロジーズ

10月20日に開催された記者発表会でアークエルテクノロジーズ代表取締役の宮脇良二氏は「今までは具体的な施策立案はコンサルティング会社に依頼するケースが多く、手間やコストがかかるため企業の脱炭素化の取り組みが進んでいなかった」と語った。

宮脇氏によれば、排出量の見える化サービスによってCO2排出量が可視化できたとしても、具体的な施策や必要な予算、ロードマップが分からない(コンサルタントなどの支援が必要)といった課題のほか、他社と比較してどれくらい取り組みが進んでいるか(遅れているか)を知りたいといったニーズがあったことから、開発を決めたという。

まずは大企業向けに、複雑な要件など会社のニーズに合わせてカスタマイズできるサービスを2022年12月に提供開始する予定とのこと。「すでに2社と導入の話が進んでおり、今年度は5〜6社の導入を見込んでいる」と宮脇氏は語った。

その後、都市ガス・運輸企業・小売企業など業界別のソリューションを開発し、SaaS版として2023年4月に提供開始する予定だという。

また、アークエルテクノロジーズが展開するEV充電マネジメントサービス、エネルギーマネジメントシステムとのデータ連携に加え、どれくらいの予算が必要かを“逆引き”して確認する機能、同業同規模の会社とのベンチマーク比較機能なども追加する予定とのこと。

会見の最後に、宮脇氏は「(カーボンニュートラルシミュレーターは)2030年までに100億円規模の事業にしていけたら」と意気込みを語った。