Photo: sarayut Thaneerat / gettyimages
Photo: sarayut Thaneerat / gettyimages

グローバルで200社近いユニコーン企業が誕生している「インパクトスタートアップ」。「金融包摂(すべての人々が経済活動に必要とされる金融サービスへアクセスできるようにすること)」を実現すべく、「低価格で良質な金融サービスを2030年までに50カ国1億人に提供する」ことを目標として事業を展開する五常・アンド・カンパニーは、国内インパクトスタートアップの中でも注目企業の1つだ。

今週(11/5〜11/11)の「スタートアップ最新動向-Weekly SIGNAL」では、五常・アンド・カンパニーが提供する「マイクロファイナンス」、グローバルで展開する事業内容を中心に紹介する。

五常・アンド・カンパニー、総額70億円の資金調達を実施

「インパクトスタートアップ」は「社会課題の解決」と「企業としての持続可能な成長」の両立を目指すスタートアップを指す呼称だ。今年の7月から9月にかけても、ビル・ゲイツ氏が創設した次世代小型原子炉開発のTerraPowerをはじめ、4社がユニコーンとなっている。10月には国内の関連スタートアップが「インパクトスタートアップ協会」を発足するなど、この領域で動きが活発化する中、同協会の幹事社でもある五常・アンド・カンパニーが総額70億円の資金調達実施を発表した。

五常・アンド・カンパニーは2014年7月に創業。途上国の中小零細事業者に向けて、「マイクロファイナンス(小口金融サービス)」を提供。小口の融資や貯蓄の促進といった金融手段で、貧困や低所得の状態にある人々が貧困状態から脱することをサポートする。

世界には金融サービスにアクセスできない貧困層の人々が10億人以上いるという。五常・アンド・カンパニーは持ち株会社として、調達した資金をカンボジア、スリランカ、ミャンマー、インド、タジキスタンの5カ国、9社のグループ会社へ振り分け、各社を通じてサービスを展開。メンバーが融資を受けるとグループの他のメンバーが連帯して借り入れ人として責任を負う「連帯責任グループ」、貯蓄を促進する「マイクロセービング」、個人の目的に応じた「パーソナルローン」、各種金融サービスへアクセス可能な「モバイルウォレット」の提供、柔軟なオプションにより融資を受けやすくする中小企業向けローンといった形態で商品を提供している。グループの従業員数は8500人に上り、2022年9月末までにグループ全体の融資顧客数は139万人、運用資産残高は1000億円超に達したという。