• 海外では4日で300万ダウンロード、“控えめ”なスタート
  • 現実の地図情報とARを活用
  • 前作「ポケモンGO」は8.5億ダウンロードを達成
  • 人気IPとタッグを組んだ位置情報ゲーム続々

スマートフォン向け位置情報ゲーム「Pokémon GO(ポケモンGO)」「Ingress(イングレス)」を開発した米Niantic(ナイアンティック)。同社の新作ゲームタイトル「ハリー・ポッター:魔法同盟」の配信が日本でスタートした。6月に海外で先行してアプリの配信が始まったが、前作と比較すると控えめな実績となったが、はたして日本では受け入れられるのか。(編集・ライター 野口直希)

「ハリー・ポッター:魔法同盟」のイメージ「ハリー・ポッター:魔法同盟」(画像はゲーム公式サイトより)

海外では4日で300万ダウンロード、“控えめ”なスタート

 ナイアンティックとワーナー ブラザースは7月2日、大ベストセラー『ハリー・ポッター』シリーズを題材にしたスマートフォン向け位置情報ゲーム「ハリー・ポッター:魔法同盟(以下、魔法同盟)」の国内配信を開始した。iOSおよびAndroidに対応しており、アプリはApp StoreおよびGoogle Playから無料でダウンロードできる。

 ハリー・ポッターは全世界での販売部数が5億冊を超える大ベストセラー作品。11歳の誕生日に自分が魔法使いであることを知らされた主人公・ハリー・ポッターのホグワーツ魔法魔術学校での生活や、悪の魔法使いヴォルデモート卿との対決を描く。

 魔法同盟は6月21日から米国やイギリスなど4カ国で配信を開始しており、翌22日からは約140の国と地域で展開している。35以上の国で無料アプリランキング1位を獲得したものの、アメリカの調査会社Sensor Towerによれば米国リリース後4日間の全世界ダウンロード数は約300万、売上は約110万ドル。最初の4日間で2400万DL、売上2800万ドル以上だったポケモンGOに比べると控えめなスタートを切っている。

現実の地図情報とARを活用

 ゲームの舞台は、本編最終巻である第7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』より後の世界。プレイヤーは新米の魔法使いとなり、マグル(非魔法族)の世界に紛れ込んだ魔法界の物体や魔法生物「ファウンダブル」を回収し、謎を解いていく。ゲーム開始時にはチュートリアルが用意されているが、専門用語の解説が少ないため、原作に親しんでいない人にはわかりづらい点もあるかもしれない。

 ゲーム内は地図情報を使ったマップが表示されるが、その表示には時間や天気が反映される。また、現実にあるさまざまなランドマークが、呪文を使用するエネルギーを回復できる「宿屋」やほかのプレイヤーと協力して強力な敵と戦闘する「砦」といったスポットとして登場する。すでにソフトバンクが国内初の公式パートナーになっており、ソフトバンクショップやワイモバイルショップがある位置が、ゲーム内のスポットとして登場する。

現実世界と連動した地図上にさまざまなスポットや「魔法の痕跡」が表示される現実世界と連動した地図上にさまざまなスポットや「魔法の痕跡」が表示される(写真はアプリよりキャプチャ)

 マップ上に現れる「魔法の痕跡」をタップするとファウンダブルが出現。画面上に指示されるとおりに指をスライドして杖を振り、呪文を使うことで、これらを回収していく。ポケモンGO同様、AR技術を活用したモードも用意する。

 筆者も実際にプレイしてみた。基本的なゲーム設計はポケモンGOと同じだが、ゲーム全体の雰囲気はハリー・ポッターの世界観にマッチしたレトロな色調になっている。また、ファウンダブルとの遭遇時に呪文を使う際など、多様なアクションを楽しめる。ただし、ポケモンGOよりできることが増えており、あまりゲームをプレイしない人には少々難解だと感じた。

前作「ポケモンGO」は8.5億ダウンロードを達成

 ナイアンティックは、Googleの社内事業からスピンアウトしたスタートアップだ。前身となるKeyholeは2004年にGoogleが買収。Google マップやストリートビューの開発を担ってきた。

 2015年にはポケモン、Google、任天堂から3500 万ドルを調達して独立。位置情報とAR技術を組み合わせることで、「新しい発見」「運動」「現実の世界でのつながり」をコンセプトにゲームを開発している。

 2016年にリリースしたポケモンGOは、世界中で大ヒット。全世界での累計ダウンロード数は8.5億件を超え、アプリ収益は約20億ドル。ユーザーの歩行距離の合計は230億キロメートル以上で、これは地球から冥王星までの距離の5倍以上だという。

 7月2日に東京で行われた記者会見では、ナイアンティックアジア統括本部兼エグゼクティブプロデューサーの川島優志氏が「ハリーポッターファンの方々は、自分も魔法使いになってみたいと願っています。そんな思いを叶えるべく、現実世界と魔法の世界が溶け合った体験をお届けできれば」とコメントした。

ナイアンティック日本法人代表取締役社長の村井説人氏ナイアンティック日本法人代表取締役社長の村井説人氏 Photo by Naoki Noguchi

 また日本でも大ヒットを記録したポケモンGOは、あまりポケモンをプレイしてこなかった高齢者層にも広く支持された。ポケモンとの出合いを目的に運動を習慣化した人も多い。会見に登壇したナイアンティック日本法人代表取締役社長の村井説人氏は、「ハリー・ポッターに触れたことがない人にも楽しんでほしい」と語った。

人気IPとタッグを組んだ位置情報ゲーム続々

 2018年6月にはガンホーとレベルファイブが「妖怪ウォッチ ワールド」の配信を開始。先月にはスクウェア・エニックスとコロプラが人気ゲームタイトル「ドラゴンクエスト」シリーズの位置情報ゲーム「ドラゴンクエストウォーク」を発表。同月にはゲーム開発会社のMIRAIREが、往年の人気サッカーマンガ「キャプテン翼」を題材にした「TSUBASA+(ツバサプラス)」の開発を発表している。

 また海外でも、2018年7月に人気テレビドラマをもとにした位置情報ゲーム「ウォーキング・デッド:我らの世界」が配信されるなど、著名IPが組んだ位置情報ゲームが続々と登場している。ナイアンティックは今回、映画版のハリーポッターを制作したワーナーブラザースとタッグを組み、世界中で親しまれるコンテンツを用いて人気獲得を目指す。