2022年11月2日(水)SHIBUYA QWS(渋谷キューズ/以下、QWS)が主催する、スタートアップ企業が競うピッチコンテスト「SHIBUYA QWS STARTUP AWARD #1」が開催された。開催場所は渋谷駅直上にあるQWS内のスクランブルホール(渋谷スクランブルスクエア15階)。

「SHIBUYA QWS STARTUP AWARD #1」の参加条件は、設立準備中または設立5年以内で、デモ可能なプロダクトを持つこと。最終審査員には、RECEPTIONIST代表取締役CEO・橋本真里子氏、ココナラスキルパートナーズ代表取締役/ココナラ代表取締役会長・南 章行氏、Yazawa Ventures Founder and CEO・矢澤麻里子氏、Scrum Ventures創業者兼ジェネラル・パートナー・宮田拓弥氏。いずれも業界をリードするベンチャーキャピタルやスタートアップ創業者の方々がそろった。

10月に一次審査を行なった6名の書類審査員の紹介

最優秀賞受賞者には、活動支援金100万円、SHIBUYA QWS会員権〈6カ月間〉の他、渋谷の新たなシンボルとなった渋谷スクランブルスクエアの外壁ビジョン、渋谷駅2階の大型ビジョンなどへの、総額200万円相当の「渋谷スクランブルスクエア特別広告パッケージの掲出権利」などが贈呈される。

栄えある初回の“渋谷の顔”となるプロダクトはいかに?  当日の様子をレポートする。

緊張感高まる、リアルとオンライン入り混じるピッチコンテスト

会場の最終審査員4人から次々と質問が飛ぶ

第1回目の開催にして70社以上の応募が集まり、最終審査に進んだファイナリストは5社。開始時間が近づくにつれ100人収容できる会場の座席はみるみる埋まり、さらにオンライライン配信も行われ、リアルとオンラインが交差するイベント開催となった。

各社には5分間のプレゼンの機会が与えられ、最終審査員からの質疑応答は3分間。厳正なタイムリミットが設けられ、緊張感漂う中いよいよ最終審査ピッチがスタート。

◎Flint 「メタバースでメンタルを整える」

1社目のFlint代表取締役の飯野航平氏は「毎日メタバースで仕事をしています」と登壇。自身のメンタルダウンの体験を振り返り、メンタル不調が及ぼす社会的損失に警鐘を鳴らすサービス「MentaRest」を紹介した。

Flint代表 飯野航平氏

MentaRestはメタバース空間で専門家のカウンセリングを受けられる、従業員のメンタル不調予防を目的としたサービス。健康経営やウェルビーイングの観点から離職率低下・業務パフォーマンス向上のための人事施策に注力する企業から注目を集めている。

質疑応答では審査員から「顔色や表情が見えないメタバース空間で、どこまで診察できるのか?」との質問が投げ掛けられたが、飯野氏は自身の原体験を踏まえ、まずはカウンセリングのハードルを下げ「従業員が使いやすいかたち」を重視していると強調。「メタバース空間でユーザー目線での匿名性を担保しながら、人事との提携を検討したい。まずはユーザーフレンドリーで使いやすさを優先し、ステップアップしていく」と説明したところでタイムアップ。1社目から時間いっぱいまで盛んにやりとりが行われた。

◎LINDA PESA 「将来性に注目。タンザニアの金融インフラを支援」

2社目は「タンザニアから参りました!」とアフリカから駆け付けたLINDA PESA CEO & Co-Founder・山口亜祐氏が登壇。チームメンバーは、山口氏以外全員タンザニアのスタッフだという。

LINDA PESA代表 山口亜祐氏

山口氏は10年間で1万2975%増というアフリカのインターネット普及率に着目。一方で、紙とペンによる経営管理から抜け出せずにいるアフリカの巨大マーケットの機会損失に言及。そこで「アフリカ中小ビジネスの不透明性を解消し、金融インフラ構築を目指す会社」としてアフリカ特化型の経営管理アプリ「LINDA PESA」をリリース。アプリでオーナーの信用情報を見える化し、現地の中小企業の経営基盤を整えながら金融業者の与信創造を目指す。

山口氏は「タンザニアは北で接するケニアと比較しても人口が多く、将来的なGDPの増加が期待できる。私たちは貸金業をしたいわけではなく、現地の方々が自立しビジネスを立ち上げられる与信創造の支援をしたい」と語り、終始「タンザニアが好きだから」と現地への愛情を示しながら笑顔でプレゼンを締めくくった。

◎nat 「撮影するだけでmm単位の精密計測を可能に」

3社目に登壇したnat代表取締役社長・Bruce Liu氏は「皆さんはリフォームを経験したことがありますか?」と問い掛ける。日本では約40%がリフォーム経験ありとのデータから、日本の住宅関連産業を最先端の技術でサポートするアプリ「Scanat(スキャナット)」を紹介。

nat代表 Bruce Liu氏

iPhone /iPadのLiDARセンサーを活用し、対象物を撮影するだけで3Dモデルの作成とmm単位での計測が可能。現地調査から設計、施工管理を行えるiOSアプリで、現地調査や図面作成を行う住宅・建設業界を中心に利用されている。長期ユーザー継続率は98%。具体的な料金設計も示し、個人にも法人にも価値提供をアプローチしていくとした。

Liu氏は自身のマンション購入がソリューションの原点であり「最終的には個人の問題を解決したい」と語る。自ら施工現場に足を運び、リフォーム業界の計測作業の煩雑さを知り「住環境を手軽に変えたいが、『住』に関する業界は業者の存在感が強い。まずは業者の皆さんに使っていただけるツールを目指し、ゆくゆくは個人にも展開していきたい」と開発への熱意を明かした。

ザ・ファージ 「アプリで個人に合わせた糖尿病治療を」

4社目のザ・ファージFounder・徳永氏は、海外からオンラインでの登壇。プロダクトはAIによる血糖値自動予測機能を搭載した糖尿病治療用アプリ「glucose flight(グルコースフライト)」。

ザ・ファージFounder 徳永氏

「ユーザー1食ごとの血糖値推移データ」を独自開発したアルゴリズムで得点化し、集積データを基に個別最適化された食事・投薬量の提案を促す治療用アプリだ。同アプリの導入により患者(ユーザー)と医療従事者双方の負担を減らしながら、生活習慣病の巨大マーケットに注目し、医療のデジタル化促進に注力するとした。

徳永氏は当初美容医療などの市場も視野に入れていたが、「その市場でお金をかける方は解決策が別軸になりがち」と判断。「それよりもユーザーへのケアやサポートに特化したい」と改めてプロダクトが目指す方向性を説明した。

◎Things 「精緻かつ複雑な製造業の製品開発DXをサポート」

最後に、Things代表取締役・鈴木敦也氏が登壇。鈴木氏は約10年前に製造業に関わっていたときの体験から、日本の基幹産業である製造業とその生産性の低さのギャップに注目。そこで「ハードウエア版のGitHub」を目指して開発されたのがクラウド型製品開発管理プラットフォームの「PRISM」だ。

Things代表 鈴木敦也氏

複数の部門に散らばったCADや図面などの製品開発データをクラウド上で整理・共有。設計資産を属人的な管理から解放し、誰もがアクセスできるプラットフォームとしてSaaSモデルで提供し、製造業のDXをサポートする。すでに中堅規模の完成品メーカーなどを中心に数社に導入され、現場から期待の声も上がっている。

質疑応答では「現場では課題を認識しつつも、アナログを愛しデジタルを嫌う印象がある。どのような戦略があるのか?」という質問が。鈴木氏はあくまで「ターゲットは設計者」だとして「設計者の方が現場作業者よりもデジタルへの抵抗は低いが、確かに業界として変化を嫌う風潮はある。だからこそよりハイタッチなアプローチで関係を構築していきたい」と、まずはコンサルティングとして関わりユーザーとの信頼関係構築を行いながら、PRISMによって具体的かつスムーズなやりとりを実現する現代版“あうんの呼吸”を目指す、という言葉で締めくくった。

最優秀賞はどのプロダクトに? 接戦の中驚きの結果発表

高レベルなプロダクトが出そろい、厳正な審査の結果、LINDA PESAが「Google Cloud スポンサー賞」(副賞:Google Pixel 7)と「審査員特別賞」(副賞: SHIBUYA QWS会員権〈6カ月間〉)をダブル受賞。各賞のプレゼンターから、以下のように激励のコメントが寄せられた。

「LINDA PESAのビジネスモデルがGoogleの使命である『世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること』にフィットしている。ぜひGoogle Pixel 7を使ってビジネスを成長させてほしい」(「Google Cloud スポンサー賞」プレゼンター、Google・クラウド・ジャパン合同会社 堂田丈明氏)

「タンザニアのマーケットにはなじみがないながら、外国でのチャレンジに共感。今、タンザニアの人口は6100万人で、将来的には日本の人口を抜いていく非常に将来性があるマーケット。そこに日本から単身チャレンジされている姿勢を応援したい」(「審査員特別賞」プレゼンター、Scrum Ventures創業者兼ジェネラル・パートナー・宮田氏)

山口氏は「すてきな賞をありがとうございます。タンザニアのメンバーに素晴らしい知らせを持ち帰ることができ、とてもうれしいです。実はピッチイベントへの参加は今回が初めて。1年前の創業時、タンザニアのメンバー4人と『ここから何を始めようか』と話しながら、オーナー一人一人を歩いて訪問しサービス導入を進めていった頃を思い出しました。そして今回、公の場で皆さんに認めていただき、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。今後もこの賞を生かして発展していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」と、目元を潤ませながらコメントした。

そして、栄えある「最優秀賞」をつかんだのはnat。発表の瞬間、代表のLiu氏は思わずガッツポーズ。見事、副賞である渋谷駅周辺の大型サイネージ掲出権〈200万円相当〉、活動支援金100万円、SHIBUYA QWS会員権〈6カ月間〉を獲得した。

プレゼンターの南氏(ココナラ代表取締役会長)は「正直なところ全ての会社に(審査員それぞれの)1位票が入っていた。スタートアップは見る人の視点によって評価が変わるものですから、賞を逃した皆さまもぜひ引き続き頑張っていただきたい」と接戦であったことを強調。

その上で「natが選ばれた理由は、技術に裏付けられた他社に負けない競争優位性。かつ明確なマーケットがありすでに受け入れられている実績。そして十分な将来性。全ての全体的なバランスが良かった。実は私も今年リフォームし、家具購入に苦労しました。個人的にもリアリティーを感じたので、ぜひサービスの広がりを期待したい。今後スタートアップとして苦難の道があるかもしれませんが、この賞を糧に頑張ってほしい」とエールを送った。

受賞を受け、Liu氏は「最優秀賞に選んでいただき本当にありがとうございます。素晴らしい会場でプレゼンができ、本当に気持ち良かったです。今後も皆さんの生活が変わるようなサービスとプロダクトを作れるように頑張ってまいりますので、ぜひ応援のほど、引き続きよろしくお願いします」という受賞コメントとともに晴れやかな表情を見せた。

最後には5社のファイナリストと最終審査員がそろってステージへ立ち、各審査員もコメントを寄せた。

「私は5年前にスタートアップ企業の当事者としてピッチ・コンペティションに登壇したのですが、5年後の今、審査員として登壇でき、非常に感慨深いです。こうしたピッチ大会は賞よりも出場に意義があるはず。皆さまも今日の経験から、また新しい気持ちで事業をスタートしていただけたらと思います」(橋本氏)

「今回のピッチは非常にレベルが高く接戦でした。ファイナリストの皆さまはこの場に登壇できたことを自信と糧にして、これからの事業に励んでほしいと思っています。登壇できなかったスタートアップ企業の皆さまも、各社のプロダクトやプレゼン、質疑応答をぜひ参考にしながら、ご自身のチャレンジにつなげてほしいです」(矢澤氏)

渋谷スクランブルスクエア株式会社 部長 SHIBUYA QWS エグゼクティブディレクター 野村幸雄氏(写真中央)が最後にスピーチ

最後に、本イベント主催の野村幸雄氏(渋谷スクランブルスクエア株式会社 部長 SHIBUYA QWS エグゼクティブディレクター)よりコメント。

「今年でSHIBUYA QWSは3周年。これまでQWSメンバーを対象に数カ月に1度のペースでアイデアソンやピッチを行ってきましたが、スタートアップ支援を続けていかなければいけない使命感に立ち返り、もう1段階踏み込んだ支援の必要性を考えイベントの在り方を再考していました。

そして試行錯誤の末、今回初めて公募を行い、審査員を招いたピッチの開催にこぎ着けました。ファイナリストの5社の皆さまの本当に素晴らしいピッチを拝見し、勇気づけられ、夢があふれました。そして申し込みいただいた74社全ての皆さま、お忙しい中74社を審査していただいた6人の書類審査員の皆さまに心から感謝を申し上げたい。

これを1回目として、引き続きQWSは新しいチャレンジをする方々を応援していきたい。会場にいらっしゃる皆さまもぜひご一緒に、日本を元気にし、世界に羽ばたくスタートアップを1社でも支援いただければ幸いです。本日はありがとうございました」

こうして盛大な拍手とともにピッチコンテスト「SHIBUYA QWS STARTUP AWARD #1」が終了した。

本コンテストは、QWS3周年イベント「QWS FES 2022」の最終日を飾るイベントであったため、コンテストが行われる傍らでは、QWS会員によるプロジェクト展示が行われていたり、盛んに議論が交わされていた。渋谷スクランブルスクエア15階フロアは、数々のアイデアや交流が生まれ、化学反応が起こる熱気に満ち満ちていた。

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SHIBUYA QWS STARTUP AWARD #1について