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  • 成長率鈍化も特定のカテゴリの利用は急増
  • 「買い物代行」はコロナ禍で一時は3倍増に
  • ネトフリ見たさに「あり得ないくらい伸びた」ネットの設定
  • コロナ禍で出店登録数も増加
  • 利用者・事業者に向けたコロナ対策

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛により大きなダメージを受けている業界がある一方で、成長を見せる業界もある。その1つが、ハウスクリーニングをはじめとした各種の代行サービス。エアコンクリーニングから庭木の剪定など広く代行サービスを扱う「くらしのマーケット」では、コロナ禍により利用が5倍にも伸びたサービスもあるという。人々が今必要としている代行サービスは何なのか。サービスを運営するみんなのマーケット代表取締役社長の浜野勇介氏に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 菊池大介)

成長率鈍化も特定のカテゴリの利用は急増

 ハウスクリーニングや家事代行、出張カメラマン、家電の取り付け、リフォームなど、200以上のカテゴリの出張・訪問サービスをネットで予約することができるマーケットプレイス、「くらしのマーケット」。事業者を自宅に上げないと利用できないサービスは、非三密とソーシャルディスタンスの確保が叫ばれるこの数カ月でどんな変化があったのか。

 みんなのマーケット代表取締役社長の浜野勇介氏いわく、くらしのマーケットはベースの成長率が高く、売り上げは増加し続けており、「現在はV字回復している」(浜野氏)ものの、コロナ禍では鈍化した。だが、特定のカテゴリでは巣ごもり需要で利用が急増したという。

 浜野氏は、くらしのマーケットには、コロナ禍で「一時的に伸びた」カテゴリ、そしてコロナの感染拡大以降も「伸び続けている」カテゴリ、そして「利用が減少した」カテゴリが存在すると説明する。

「買い物代行」はコロナ禍で一時は3倍増に

 一時的に伸びたカテゴリの中でも特に利用が増加したのが「買い物代行」だ。2〜3月はそれ以前と比較して利用が約3倍にも増加したという。浜野氏いわく、このカテゴリの利用がここまで急に伸びたことはこれまでになかった。これまでは2日後以降の予約のみ対応していたが、需要に対応すべく、即日予約を可能にした。

「ゴミ屋敷清掃」も2〜3月で急激に伸びたカテゴリだ。依頼数はその前と比較し、約50%増加した。浜野氏は、ゴミ屋敷は夏になると強烈な臭いを発するため、涼しいうちに依頼をする利用者が多かったのではないか、また、いつ「コロナ明け」になるか不明瞭だったため「今のうちに」と頼む人が増えたのでは、と説明する。

みんなのマーケット代表取締役社長の浜野勇介氏 提供:みんなのマーケット

 例年、利用のピークが4〜5月になるカテゴリの中には、依頼が2〜3月に殺到したものもあった。例えば、「庭木の剪定・造園」は2〜3月、それ以前と比較して約50%利用が増加した。「リフォーム」関連も同様に伸びを見せたが、浜野氏は「自宅にいる時間が増え、家のことが気になり、頼みたくなっているのでは」と分析する。

 くらしのマーケットには一部ではあるが、法人向けに特化したカテゴリもある。テレワークに移行した企業や、営業自粛を余儀なくされた店舗は、コロナ禍で法人向けの清掃関連のサービスを多く利用したようだ。

 そのため、「フロアクリーニング」や、排水設備の一種である「グリストラップ清掃」を含む「オフィス・店舗向けサービス」カテゴリにおけるサービスの依頼が、2〜3月とそれ以前の比較で約20~40%増加した。

ネトフリ見たさに「あり得ないくらい伸びた」ネットの設定

 くらしのマーケットでは、以前から特に人気だったが、コロナ禍でさらに利用数が急増し、伸び続けているカテゴリもある。代表的なのが、「インターネットの設定」だ。

 浜野氏いわく、インターネットの設定の依頼は「あり得ないくらい伸びている」。利用はコロナ前と比較し約5倍、前年同期比では約10倍にも増加した。「テレワークを始める人やNetflixなど動画配信サービスを利用したいと考える人が増えたからではないか」(浜野氏)。

「家電の取り付け・設定」の中では、「センサーライト取り付け」や「照明・シーリング・ダウンライト取り付け」が伸び続けている。照明関連の依頼はコロナ前と比較し、60~70%増。自宅の作業環境を改善するといった目的での利用増加が想定される。また、浜野氏は「カテゴリとしてしっかりとサービスが揃っているところも要因としてあるのでは」と話す。

 なお、コロナが原因で利用が減少したカテゴリもある。「エンターテイメント」では「出張撮影・カメラマン」は4月、依頼がおおむね半減した。

「引越し」カテゴリは成長率が鈍化したが、もともと日程を決めていた利用者が多かったこともあり、前年同期と同等の依頼があった。

コロナ禍で出店登録数も増加

 みんなのマーケットは2011年1月の設立。同年7月に提供を開始し、累計出店登録店舗数は2019年12月の時点で3万3000店舗を超えた。

 同社は2020年1月、ニッセイ・キャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ソニーと大和キャピタル・ホールディングスが運営するInnovation Growth Ventures、ゼンリンデータコムからの出資と、日本政策金融公庫からのデットファイナンスにより、総額40億円の資金調達を実施したことを発表している。

 浜野氏は、調達した資金をテレビCMを含むマーケティング予算に回していると説明。コロナ禍のまっただ中にも流していたテレビCMは、利用者だけではなく、事業者間での認知度向上にもつながった。3~4月の出店登録数はコロナ前後で約50%増加したという。

「事業者も自宅で過ごす時間が多くなったため、 テレビCMの効果が上がっている。売り上げが下がるなどし、今後の不安を感じ、『集客をもっと頑張らなければならない』といった課題意識が事業者に生まれた。それによって、新規の登録店舗が増えたということも考えられる。テレビCMとコロナの効果が複合的に効いたのではないか」(浜野氏)

利用者・事業者に向けたコロナ対策

 くらしのマーケットでは3月、衛生面での配慮を徹底している店舗をまとめた「衛生管理バッチリ店舗特集」を公開した。

 この特集に掲載する事業者は、スタッフの体調管理を徹底する、公共交通機関を利用しない、マスクを着用する、アルコール消毒を行う、定期的に換気をする、といった項目からなる「衛生管理チェックリスト」に従う必要がある。また、事業者は無料でドアノブや手すりをアルコールまたは次亜塩素酸ナトリウムで消毒洗浄する。

 マスクや消毒液が不足していたことから、それらが手に入らなかった業者は同特集に掲載されることはなかった。そこで同社は5月11日より、マスクなど衛生管理用品の配送を事業者向けに開始した。