Photo: Constantine Johnny / gettyimages
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ロシアによるウクライナ侵攻やインフレ、円安──。2022年はマクロ環境の変化により、昨年とは打って変わって資金調達環境が悪化するなど、“スタートアップ冬の時代”という言葉も使われる機会が増えた。

その一方で、2022年11月には岸田内閣がスタートアップ育成強化の方針となる「5カ年計画」を発表。この動きをポジティブに捉える意見もよく目にする。

まさに“激動”とも言える2022年を起業家たちはどう振り返り、そして2023年はどのような年になると考えているのか。DIAMOND SIGNAL編集部は過去に取り上げたことのある起業家たちにアンケートを実施。その結果を前後編にわけて紹介する。掲載は氏名の五十音順。(後編はこちら)

赤川隼一 / ミラティブ代表取締役

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

メタバース、GameFi、画像生成AI、ChatGPT、VTuber、ライブゲーム、インフレ。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

メタバースやWeb3・GameFiは2022年初頭から一気に盛り上がったと同時に、後半は、ハコだけ作ったものはあまりうまくいかなかったり、FTX破綻があったり、一旦の幻滅期に入ったのかなと感じました。一方、画像生成AIやChatGPTの凄まじい盛り上がりを見ていると、AIは、「AI」と意識されることなくマスの社会変革に直接的な影響を及ぼす局面に完全に入った印象で、ハイプサイクルの原理が今も変わらず存在するとも感じました。

また、VTuberに関してはカバーとANYCOLORの凄まじい成長ぶりが認識されるなど、2018年のブームがただのブームで終わらず、マスに受け入れられて明確な成長産業・輸出できる国家競争力になりました。Web3も長い目では同様の変革をもたらしていくのでしょう。

インフレや円安は、ロシアのウクライナ侵攻という2021年時点では予想もしなかった事件が世界中に波及したという意味で、世界は人類史上かつてなく密接につながっているということを強く実感させられる事象でした。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

弊社はゲーム配信プラットフォームを展開しているのですが、「ゲームとゲーム実況の融合=ライブゲーム」は、この記事を読んでいる人たちがイメージしている以上のトレンドになりそうです。世界中で市場拡大がさらに進むゲーム産業において、10年後にゲーム実況でコメントしかできないことはありえないと思っていたので、自明の進化だと思っていましたが、アーリーアダプターのユーザーがまったく違和感なく、特に意識せず当たり前のものとして熱狂的に楽しんでいることから確信を深めています。皆さんが想像しているものとちょっと違う形になりそうなのもワクワクしております。

また、2023年に限らない話ですが、大きなトレンドとしては「安く・早く・高品質」の物質価値が十二分に満たされていく中で、感情報酬、物語・ナラティブを生みだす商品やサービスの価値が年々高まっています。エンパワーメントされたクリエイターやコミュニティと共創し、ナラティブの増幅装置になることが、Web2かWeb3かの前に顧客価値の観点でより重要になっていくと考えています。関連して、「オーセンティック」なもの、顧客側の尊厳を尊重するブランドが価値を高めるという流れが続くと見ています。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

マクロ環境は変動しますしアンコントローラブルですが、ユーザーの課題解決をすること、顧客を向いた事業運営の大切さは変わらない(むしろ増す)ので、マクロがどうだからどう、ということにならないようにやっていくのが大事だなと、改めて気が引き締まる1年でした。

及川厚博氏 / M&Aクラウド代表取締役CEO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

不況到来。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

ソフトバンクの決算発表が大幅赤字となったのは象徴的な出来事です。スタートアップにとってもゲームチェンジの1年になったと思います。ダウンラウンドの資金調達を余儀なくされた企業が多かったほか、ユニコーンの中でも上場できない企業が出るなど、明暗が分かれました。経営方針の転換を迫られたスタートアップ経営者も多かったのではないでしょうか。

そんな中、スタートアップの資金調達先として、VCだけでなく事業会社にも目を向ける流れが生まれました。当社も資金調達ニーズへの対応に注力しており、新サービス「資金調達クラウド」のユーザー数も想定を超える勢いで伸びています。

IPOの先送りも相次ぎ、長期でIPOを目指すため、VCの持ち分を事業会社に振り替える動きが目立ち、米国ではすでに一般化しています。IPOとM&Aを並行して検討する「デュアル・トラック・プロセス」も浸透し始めているほか、タイミーやUPSIDERなどデットファイナンスを活用する事例も見られました。従来は「VCから調達してIPOを目指す」ことに偏りがちだった、国内のスタートアップファイナンスの手法に幅が出てきたと言えます。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

円安の影響に加え、コロナ禍からの回復が進むことで、まず成長が見込まれるのはインバウンド関連ビジネスです。諸外国に比べ物価も低いこともあり、成長トレンドは長く続くでしょう。他に円安が追い風となるビジネスとしては、海外企業を顧客とする受託開発ビジネスなどが挙げられます。

また、デフレ、スタグフレーションの影響で、「安く買える」サービスの価値が高まっていくはずです。「Amazonを脅かす」と言われたカナダ発のECプラットフォームの雄・Shopifyが業績を下げているのも、加盟店にディスカウントストアが少なかったことが背景として挙げられます。今後は「ディスカウントストア2.0」のようなサービスの盛り上がりが予想されると思います。

「消費者の生活を楽にする」という観点では、資産運用系のサービスも同様に普及していくと見ており、円が弱い状況下で、いかに賢く資産運用するかに関心が集まっていくと思います。後払いサービスなどの一般消費者向け金融サービスが伸びてきたり、生活コストの低い地方への移住を支援するサービスなどが出てくることも十分に考えられます。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

結論から言うと、当社はそれほどネガティブな影響は受けませんでした。景気変動時、起業家として考えなければいけないことは、資本市場とどう向き合うか、顧客市場とどう向き合うかの2点に集約されると思います。当社の場合、前者の資本市場については、まずIT銘柄の株価は全般的に下がっており、プラットフォームビジネスも、かつてのようにPSR(株価売上倍率)ベースで高評価を受けることは難しくなりました。

一方で、M&A仲介の企業群に目を向けると、M&A総合研究所やM&Aキャピタルパートナーズも時価総額1000億円を超えるなど、株価は堅調。M&A領域のプラットフォーム運営企業である当社は、ITスタートアップの中では影響を受けにくい状況にあります。

後者の顧客への向き合い方に関しては、スタートアップM&Aが活発化し、当社の事業運営上は追い風となりました。もともとスタートアップの株価が高騰していた中で、昨秋ごろからIPO価格が急落し、M&Aによるイグジットを選択する経営者が増えてきた流れが背景にあります。岸田政権がスタートアップ支援に注力していることも、スタートアップのM&Aや資金調達支援に強みを持つ当社にとっては歓迎すべき動きといえるでしょう。

五島淳氏 / SHE取締役COO・CMO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

新時代。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

令和4年の今になって、各所から聞こえてきたキーワードのように感じます。良くも悪くも、圧倒的に不確実性の高い一年、当たり前が崩れ去った瞬間を多くのシーンで体感した一年だったことにも、起因してるのではないでしょうか。

起こらないと思われていたウクライナへの軍事進行が勃発し、夏の参議院選挙直前に総理大臣経験者が撃たれて亡くなり、ジャニーズ事務所のKing & Princeのメンバー3人が突然グループの脱退を表明する。多くの人が安心安全で半永続的だと思っていたことへの信頼が、大きく揺らぐことが続きました。

一方で、W杯において若手メンバー中心の日本が強豪国ドイツ・スペインへ勝利し、絶対に再開しないと思われていた伝説的な漫画の連載がスタートするなど、これまで「絶対に無理だ」と思われていた固定観念が、奇跡のように塗り替えられていくことも同時に起きました。

「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」の意味が込められた令和は、何もしなくても安寧を享受できる時代などで決してなく、不確実なカオスを自ら乗りこなすことで、多様性ある新たな文化を勝ち取ることが求められる時代だと思っています。この現実に良くも悪くも多くの人が気づき始めたのではないでしょうか。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

「リスキリング(学び直し)の本格到来」。

ジョブ型雇用への転換やフルリモートなワークスタイルなど、生産性を高める新たな就労観への移行が、世の中的にじわじわ進んできた中での円安・物価高の直撃。より直接的な生活への影響を感じるシーンが増えたことで、いよいよ本格的にキャリアのアップデートやワークスタイル変革の意識が高まってくると考えています。

岸田内閣が個人のリスキリングの支援に、5年間で1兆円を投じると表明したことも追い風となり、ついに本格的なトレンドが来るのではないでしょうか。私たちが展開する女性向けキャリアスクール「SHElikes」もその流れに乗っていきたいと思います。

あらゆる産業でDXを推進し、イノベーションを創発していくにあたり、もっとも重要なのは人材です。特にデジタルやクリエイティブ領域に関わるスキルの装着は、年齢性別問わずますます重要度が高まってくると予想しています。

とはいえ、ネガティブに「リスキリングをしなければならない」といった、やらされムードではきっとうまくいかないのではないでしょうか。不確実な時代だからこそ、新しい概念を恐れず「自ら変革を楽しむ人が格好いい」。そんなポジティブな空気感が生まれることを願っています。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

いま振り返っても、資金調達環境はまさに混迷を極めていたと痛感します。当社は先日、幸いなことにシリーズBラウンドの資金調達を完了しましたが、想定以上に時間がかかったことや、企業価値への評価もシビアな環境下だったという事実があります。

やったこと自体はとにかく基本の徹底です。多くのステークホルダーとの接点を作り続け、自社の戦略や提供価値の磨きこみをし、何より、絵にかいた餅とならないよう、同時に足元の事業や組織を固めていくことへ愚直に向き合ったという、私にとっては非常にシンプルな1年だったように思います。

佐藤詳悟 / FIREBUG代表取締役 CEO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

短尺動画。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

各種SNSで短尺動画を出せる機能がすべて出揃ったので、短尺動画が暇つぶしの中では一気に上位に入ってきたと思います。ユーザーは短いものを好む脳みそになっていき始めていると思うので、本当に好きなものしか長くは接触(見たり聞いたり使ったり)せずに、ほんの一瞬で好き嫌いを判断するようにもっとなると思います。

また、何でも短くわかりやすく説明しないとわからない世代も出てくると思うので、マネジメント手法やさまざまな生活環境(政治、交通、教育などなど全ての領域)で「短く・分かりやすく」は必須のスキルになると思います。そんなことからSNS以外でも短い動画の使い道はもっと増えると思います。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

弊社はタレントやアーティストのDX支援を手がけているのですが、来年はメタバースがトレンドになるのではないか、と思います。前述で短尺動画が「暇つぶし」の上位に食い込んできていると記述しましたが、新しく登場するもので、ユーザーの長い時間を奪えそうなのがメタバースだと思っています。今の人たちの環境は幸せで、自分の「好き」があれば、その「好き」に永遠に浸ることができます。

自分の好きなもの以外の情報を遮断することもできます。自分の「好き」があれば、その好きな空間に訪問し、自分の好きなものをいっぱい体験する。そういう意味でメタバースは最高の暇つぶし体験になると思います。しかも単純にエンタメ時間ということでもなく、買い物や友達とコミュニケーションを図るなどもできると思うので、奪える可処分時間は多いと思います。色々身につけたりして、結局「これ面倒じゃない?」とならない使用感になればブッ刺さると思います。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

毎年コツコツやっているので、特に今年が何か大変だったということはありません。ただ、法律などのしっかり明文化されたルールと社会のトレンド的なお題を理解することが経営者には必要で、常にルールとお題を頭に入れながら、経営していくことが大事であるというのが勉強ができた1年でした。今年ほど社会のお題が変わった1年はなかったと思います。

篠塚孝哉 / 令和トラベル代表取締役社長

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

(ポジショントークもふんだんに含まれますが)海外旅行です。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

海外旅行はコロナ禍で最も影響を受けた産業と言っても過言ではありません。2020年以降、各国の水際対策によって海外に行きたくても行けない時間がしばらく続き、海外旅行市場は当然大きく落ち込みました。しかし、最近になって少しずつ日本でも海外旅行の解禁ムードが広がり始め、2022年10月には日本人出国者数が2019年比で21%、昨年比では11倍にまで急回復しています。

とはいえ、2022年前半はウクライナ問題、インフレ、円安で海外旅行はトリプルパンチを受けました。市場全体として難しい局面が続いてはいますが、このような逆風の連続の中でも弊社では「#リベンジ海外旅行」キャンペーンなどヒット商品も誕生しています。海外旅行マーケットはコロナを機に完全にリセットすることとなりましたが、形を変えながらもいずれ必ず市場は戻ると信じています。二度とないこの機会に、あたらしい旅行の形をつくり、海外旅行を盛り上げていきたいと考えています。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

まず第一に機械学習です。2022年は急速に一般化が進み、身近で体感できる機械学習ツールが増えました。今まではビジネスツールや分析ツールが中心でしたが、ChatGPTやDeepL、DALL・Eなど汎用性の高いものが増えることで、機械学習が組み込まれていることが前提のサービス設計が必須になりますし、実体経済に影響を及ぼすことになる。わたしは10年後に歴史を振り返ったとしたら、Web3とはむしろ機械学習だったと言われるのではないかと思っています(その中にクリプトやNFTの話が含まれるようなイメージ)。

第二に海外旅行。これもポジショントークにはなってしまいますが、ワールドカップで現地が大盛況だったり、ヨーロッパ各地での大型アートイベントにはたくさんの人が集まったりと、コロナ以前のような光景が世界各国で見られています。実際ヨーロッパやアメリカは海外渡航者数が9割超、都市によっては過去最高レベルに回復をしていて、ホテル代の急騰も相まって市場規模はコロナ以前の水準に戻りつつあります。日本でも自由に海外旅行に行ける人が来年はますます増えると思っています。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

「悪い円安」という言葉も聞かれるようになり、今、日本全体に閉塞感が漂っています。長く続いたコロナ禍を抜ければ海外旅行市場も全てが元通り……というわけにもいきそうにありません。世界情勢等、我々の予測範疇ではない市場の難しさを大いに感じた1年でした。

しかし市場が大きく変化する時代に、スタートアップが生き抜いていくためには、プロダクトに投資する姿勢がぶれてはいけない。今後、世の中の資金も堅調に伸びているプロダクトに集中していくと感じています。 我々にとっては「海外旅行市場」というまさに今大きく変化している市場において、いかに市場の変革を起こすようなプロダクトを磨いていけるかにかかっており、その点は強く意識し続けています。

ジョン・セーヒョン / oVice代表取締役CEO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

サバイバル。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

ウクライナ情勢により、市場環境が180度変わった年だったからです。2022年1月はスタートアップにとっては非常に良い環境でしたが、4月〜5月ごろにかけて一気に悪くなり、毎週のように状況が悪化していったと感じました。

特にスタートアップは市場環境の悪化の影響により、資金調達も難しくなりました。その中でも資金調達を行えたところは持ちこたえたと感じますが、うまくいかなかった場合に負のスパイラルに陥ってしまう可能性もあった年だったことから、「サバイバル」というキーワードを選びました。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

コスト削減がさらに加速していくと感じており、コスト削減に貢献できるサービス、本質的な価値を提供できているサービスが伸びていくのではないか、と感じています。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

市場環境の変化により、2021年までのようにコストをかけることができなくなったことが一番大変かつ難しかったポイントです。これまでは、コストをかけても成長を優先するという機運でしたが、それができなくなったことで、コストをかけずにいかに成長させるか、コスト削減と成長のバランスをいかに取るかを考える必要が出てきました。

市場環境が激しく変化するなかで、コストは抑えなくてはならないが、抑えすぎると成長できなくなる可能性がある。そのバランスを保つのが非常に難しい時期でもありますし、それが続くとも考えています。また、個人的にはリアルでの対応が増えてきたため、石川県七尾市の自宅に帰ることができない日々が続いたことも大変だと感じました。

中井友紀子 / ARCH代表取締役CEO

──2022年に盛り上がったキーワードは何でしょうか?

不妊治療保険適用。

──そのキーワードを選んだ理由を教えてください。

日本の出生数はどんどん低下しています。日本総研が11月に発表したレポートでは、80万人を大きく下回る予想です。2022年の出生数(日本人)は、前年比5.1%減の77万人前後となる見通し。16年以降、出生数は年率3.5%のペースで減少してきたが、22年はそれを上回る減少率となる見込みです。少子化ペースの加速は、20年から21年にかけて、婚姻数が急減したことが寄与したとみられています。

そうした中、明るいニュースとして最も大きかったのは「不妊治療保険適用」でした。ただし、それでも歯止めがかかるインパクトは見えなかったというのが残念な見立てです。私たちはそこにダイレクトに解を出すべく取り組む不妊治療のDXチームのため、このキーワードを選びました。

──2022年の動きを踏まえて、2023年に個人的に期待している領域、またどういった領域がトレンドになると思いますか?

私たちは不妊治療専門クリニック 「torch clinic」を展開しているということもあり、2023年は「30代で始める不妊治療」がトレンドになると思っています。

──市場環境にも大きな変化があり、上場承認を受けた企業が上場を延期したり資金調達がシビアになったりと、スタートアップも大きく影響を受けた1年だったと思います。起業家として事業を運営する中で大変だったことなどあれば教えてください。

(ARCHは)この環境下で資金調達もしっかりでき、かつ、とても引き合いが多いと感じました。マーケットがシビアになった事は肌では感じませんでした。ですが、「人口=GDP」は国力そのものであると危機感を感じている投資家が多いと感じました。