スナックミーでは自分好みのおやつが定期的に届くサブスク「snaq.me」を運営している
自分好みのおやつが定期的に届くサブスクリプションサービス「snaq.me」
  • コンビニにも進出、背景に“サブスクEC発ならでは”の強み
  • おやつサブスクの会社から「おやつ体験メーカー」へ

100種類以上のおやつの中から、自分用にパーソナライズされた商品が毎月届く“おやつのサブスク”「snaq.me(スナックミー)」。20〜40代の女性を中心に利用者を広げ、2022年には累計会員数15万人を突破。今ではサブスクの枠を越えた事業展開をしている。

2021年からオフラインに進出し、「ファミマ!!」や「ナチュラルローソン」など大手コンビニでの商品展開もスタート。2022年4月には東京・清澄白河に直営店舗の1号店を開設した。オフライン展開に加えて、福利厚生事業やギフト事業など法人向けビジネスにも取り組む。

運営元のスナックミーが見据えるのは、「おやつサブスクの会社」から「おやつ体験メーカー」への進化だ。

スナックミーでは2016年におやつのサブスクECを開始した。サービスの特徴は「商品のバラエティ」と「カスタマイズ性」にある。

扱っているおやつは常時100種類以上。約180社の生産者とタッグを組み、「あられはA社」「どら焼きはB社」といったかたちで各社の得意領域や強みを踏まえながら2000種類近くの商品を作ってきた。そのすべてで人工甘味料や合成香料などを使っておらず、ナチュラルな素材を活かしたものにこだわる。

マイページのイメージ。おやつ診断の結果によって届く商品が変わる。食べたいおやつをリクエストしたり、実際に食べたおやつを評価したりすることも可能
おやつ診断の結果によって届く商品が変わる。食べたいおやつをリクエストしたり、実際に食べたおやつを評価したりすることも可能。一部の商品は「ストア(サブスク会員向けのECサイト)」で単発で購入することもできる

主要サービスの定期便は1箱1880円(別途、 送料330円がかかる。いずれも税込)で、8種類のおやつが入ったボックスが自宅に届く。ボックス内のおやつは事前に実施する“おやつ診断”の結果をもとにセレクトされた、自分好みのもの。頻度は2週に1回か4週に1回から選べ、送られてくる商品の組み合わせは毎回変わる。

「開けるまで何が入っているかわからないワクワク感」や「初めて食べるおやつとの出会いや新たな好みの発見」を楽しめることが、ユーザーから支持を集める理由だ。特に女性から人気が高く、全体の95%以上を女性が占める。中でも25〜44歳のユーザーが多く60%を超えるという。

コンビニにも進出、背景に“サブスクEC発ならでは”の強み

スナックミーの創業メンバー。中央が代表取締役の服部慎太郎氏
スナックミーの創業メンバー。中央が代表取締役の服部慎太郎氏

スナックミーでは4年の間サブスクECに注力してサービスを続けてきたが、冒頭のとおり直近では新たな試みとしてオフライン展開にも力を入れている。2021年からはコンビニのほか銀座ロフト、CHOOSEBASE SHIBUYAなど実店舗での販売を本格的にスタート。2022年9月からはナチュラルローソンでプロテインバーブランドの展開も始めた。

大手メーカーなどと比べて店頭販売実績が乏しいスナックミーが、コンビニなどと連携できているのか。その背景にあるのが「サブスクECを通じて培ってきた資産」だ。

たとえば「サブスクや(サブスク会員向けの)ECを通じて人気の商品が特定できていること」は実店舗のチャネルを広げていく上でスナックミーの強みになる。

「(店舗での販売前から)実際の顧客像や傾向がわかった状態で、商品の提案をできるのがポイントです。メーカーが新商品の提案をする場合、通常は『このような人たちをターゲットにした商品です』といった説明になりがちです。でも私たちはすでにサブスクECで販売実績があるので、別のアプローチができる。『(サブスクやECでは)こういった層の人たちから高評価でリピート率も高いです。また、このようなシーンでお召し上がりいただいています』ということを伝えられるんです」(スナックミー代表取締役の服部慎太郎氏)

商品ごとにユーザーの年齢や性別、アンケートのデータなどを提示した上で提案をすることで、小売店舗の担当者もイメージがしやすい。サブスクECの運営を通じて積み上げてきた独自のデータや実績と、「(既存商品の数が限られる)無添加のおやつに特化している」「扱っている商品数が豊富である」といったサービスの特徴が好評で、オフライン展開が拡大しているという。

ファミマ!!ではスナックミー上で人気の商品をピックアップして販売しているが、実店舗とサブスクでの販売傾向には相関関係があり「定期便で人気な商品ほど、店舗でも売れる傾向にある」(服部氏)。ナチュラルローソンで販売しているプロテインバーも、以前からサブスクで展開していた人気商品だ。

おやつサブスクの会社から「おやつ体験メーカー」へ

2022年4月には「顧客との接点を作る」ことを主な目的として、清澄白河に直営店舗を立ち上げた。

直営店の様子
直営店の様子

単体で売上拡大を目指す店舗というよりは実験店舗のような位置付けに近いが、服部氏自身も店頭に立ちながら顧客と会話をすることで新たな発見もあったという。

「ギフトのニーズ」はその一例だ。直営店には贈り物の用途でスナックミーのおやつを買いに訪れるユーザーも多く、パウンドケーキやカステラなど「見た目からしておいしそうなもの」が好評だという。

すでに定期便を利用しているユーザーが好きな商品を単品で購入したり、興味はあったものの定期便の購入までには至っていなかった人たちが最初の接点として利用したりするケースもあり、ユーザー層や購入方法の広がりにも繋がり始めている。

「まずはサブスクに誘導するというよりは、店舗は店舗でしっかりと事業として育てていく」(服部氏)方針で、今後もオフライン展開に力を入れる計画。1年で直営店を新たに1〜2店舗、現在200店程度のネットワークがある卸売のチャネルも500店舗ほどまで拡大するのが目標だ。

「ずっとサブスクECとしてやってきた中で、これから他の事業へと広げていく。そういった意味では第二創業期のようなフェーズに差し掛かってきています」

服部氏はスナックミーの現状についてそのように説明する。目指しているのはおやつサブスクから事業領域を拡張し、顧客に対してさまざまな接点でおやつ体験を提供する“メーカー”だ。

スナックミーでは自社オフィス内に「工房」を開設。パティシエを採用し、焼き菓子やケーキなど、一部のおやつを自社製造できる体制も整えた
2022年春にはオフィス内に「工房」を開設し、パティシエも採用。テストキッチンとして利用するほか、焼き菓子やケーキなど一部のおやつを自社製造できる体制も整えた

近年はD2Cモデルでビジネスを展開するスタートアップでも、自社ECのみに固執せず実店舗やECモールなど販売チャネルを広げながら事業成長につなげるケースが多い。

2022年11月に東証グロース市場に上場したベースフードは、売上高における自社ECの割合が60.1%(2023年2月期第3四半期の比率)。コンビニやドラッグストアといったオフラインのチャネルが27%まで伸びてきており、他社ECも12.8%を占める。

スナックミーとしてもサブスクECを軸としながらオフライン店舗の拡大を図るほか、単品で購入したいユーザー向けにサブスクとは異なるECサイトの開設も検討している。

また法人向けのビジネスとして、オフィス向けやリモートワーカー向けなど「福利厚生事業」や、ノベルティや営業ツールとしておやつを提供する「コーポレートギフティング事業」なども強化する方針。「サブスクやECを成長させながらも、現在は1割に満たないオフライン卸やBtoB事業の売上を2〜3割まで高めていきたい」と服部氏は話す。

そのための資金として、スナックミーではギフティ、丸井グループ、Future Food Fund(オイシックス・ラ・大地のCVC)を引受先とする第三者割当増資を実施。デットファイナンスと合わせて約5.5億円を調達した。

各社とは事業上の連携も見据えており、ギフティとはコーポレートギフト領域、丸井グループとはマルイ店舗を絡めたオフライン展開、オイシックス・ラ・大地とはEC関連での協業を計画しているという。