BALLAS代表取締役の木村将之氏
BALLAS代表取締役の木村将之氏

慢性的な人手不足や原材料の高騰により建設部材の調達難易度が上がっている。そんな状況で事業者から注目を集めるのが、建設部材の調達サービスを展開するスタートアップ・BALLASだ。

BALLASは内製のシステムを用いて製作図の作成を効率化し、最適な工場に部材の製作を委託することで取引コストを削減する仕組みを開発。創業から約1年で金属部材を中心に1500件以上の部材を供給してきた。

今後は4月に関西、9月には中部に拠点を開設する予定で、展開エリアや取扱製品を広げながら事業拡大を目指す計画。そのための資金としてBALLASでは複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により11.6億円を調達した。今回同社に出資したのはグローバル・ブレイン、SBIインベストメント、ANOBAKA、mint、SMBCベンチャーキャピタル、京銀リース・キャピタル、南都キャピタルパートナーズ、三井住友海上キャピタル、マイナビだ。

BALLASは代表取締役の木村将之氏が双日や製造業スタートアップを経て2022年2月に立ち上げた。双日時代には金属資源分野の輸出入や事業投資、金属3Dプリンター事業の海外展開などを経験。その際にテクノロジーを用いて建設産業の課題を解決していくことに意義を感じたことが、現在の事業にもつながっている。

BALLASが取り組んでいるのは、施工会社に対して「最適な部材調達の手段」を提供することだ。施工会社がシステム上に施工図の図面をアップロードすれば、BALLAS側で製作図を作成し、発注内容に沿って最適な工場に製作を委託する。

施工会社と工場をマッチングして手数料を得るマッチングサービスとは異なるビジネスモデルで、収益源は施工会社からの発注費だ。製造機能を持たない「ファブレスメーカー」のような立ち位置だという。

BALLASが開発しているシステムのイメージ
BALLASが開発しているシステムのイメージ

これまで部材の調達においては「図面バラシ」とよばれる工程がネックになっていた。図面バラシとは施工業者が作成した施工図を参考に、工場側が製作図を作っていく作業のこと。共通の基準がなく、コミュニケーションのズレなどから取引を長引かせる原因になっていた。

BALLASではこの図面バラシを代行し、自社で内製のシステムを活用しながら製作図を作成している。最適な工場を選定するところも同社が担うため、施工会社は施工に専念できるようになる。

木村氏によると従来は工場の手配や製作図の作成などに1カ月程度かかることも多かったが、BALLASではその期間を1週間ほどに短縮できるという。

製作先となる工場は、機械の稼働状況や得意な領域を踏まえてBALLASが選ぶ。協力工場にとっては機械の稼働していない時間を活用しながら、得意な案件を引き受けるチャンスが増えるのがメリットだ。現在パートナーの数は関東を中心に70社ほどになった。

BALLASでは今後国内での拠点を増やし、顧客数の拡大を目指す方針。並行して工場のネットワークを拡充しながら金属以外の領域にも対象を広げる。「図面バラシのデジタル化」を見据え、引き続きデータの蓄積や活用にも力を入れていくという。

BALLASの取り組みは印刷業におけるラクスルや、製造業におけるキャディといった先駆者のアプローチと共通する点も多い。建設業界をテクノロジーで変革する「ConTech(建設テック)」は国内外でさまざまなプレーヤーが出てきているが、部材調達においてもテクノロジーを活用できる余地がまだまだありそうだ。