UPSIDER代表取締役の水野智規氏
UPSIDER代表取締役の水野智規氏

法人カード「UPSIDER」やビジネスあと払いサービス「支払い.com」などを展開するUPSIDERが、新たな打ち手として2つの新事業の計画を明らかにした。

2023年8月にAIチャット型の業務支援ツール「AI Coworker」を公開する。また大手金融機関と組んで年内を目処にスタートアップへの融資事業を始める方針で、5月31日に子会社となるUPSIDER Capitalを設立した。

企業の決済関連の課題解決を目指す“法人カード”は、近年事業者の参入が相次ぐ。UPSIDERやLayerXといったスタートアップに加え、マネーフォワードやfreeeなど上場Fintech企業らがサービスを展開。直近では請求書管理サービス「Bill One」が好調のSansanも法人カードの提供を始めた。

UPSIDERの累計導入企業数は、法人カードとビジネスあと払いサービスを合わせて2万社を突破。2022年度に株式上場を発表した企業のうちの約20%が同社の法人カードを活用するなど、スタートアップを軸とした成長企業への導入が進んでいるほか、上場企業の顧客も増えてきているという。

同社としてはサービスのラインナップを拡充しながら、「法人カードの会社」から日本の成長企業を後押しする「総合金融機関」への進化を目指す。

8月にローンチ予定のAI Coworkerは、ビジネスコミュニケーションサービス「Slack」上で動くチャット型の業務支援ツールだ。このサービスではSlackのチャットで“AI秘書”に対して、契約書の締結や稟議承認、支払いなどを会話形式で依頼できる。

AI秘書が企業の申請ルールや組織図などを学習し、従業員への通知やツール間のデータの結合などを代行する。従来は従業員が複数のSaaSを行き来しながら実施していたような業務が、Slack上で完結するのが特徴だという。同サービスは既存ユーザーやスタートアップへ無償で提供する予定だ。

AI Coworkerを通じて集まったデータは、融資事業でも活用する。AI Coworkerでは「これから何を仕入れるのか」「これから誰を採用するのか」「いつオフィスを移転するのか」といった“未来のデータ”が蓄積される。UPSIDERとしては法人カードを通じて培ってきたAI与信の仕組みとAI Coworker上のデータを武器に、資金の出し手となる金融機関と組みながら新たな融資事業を展開する狙いだ。