8月1日に2店舗オープンする西海岸発の“体験型”小売店「b8ta」。写真は新宿丸井店をイメージしたもの
  • 日本のb8taは「D2C推し」
  • 強みはオフライン出品の低リスク化と顧客体験の可視化
  • 目指すは店舗拡大とB2B展開そして日本ブランドの越境

米国を中心に年間300万人ものガジェット好きが集まる“体験型”の小売店「b8ta」がいよいよ日本に上陸する。8月1日、新宿(新宿マルイ本館1階)と有楽町(有楽町電気ビル1階)に2店舗オープンする予定だ。

ニッチなガジェットやテック・プロダクトはあまり店舗で販売されていないため、クラウドファンディングやメーカーの直販サイトなどネットで購入されることがほとんどだ。だが、できれば実物を触ってみたいもの。そのため、b8taでは店舗を構え、顧客が他では見られないユニークな商品を発見・体験できることをコンセプトに商品を用意し、実際に試した上で購入できるようにした。

b8taは2015年に創業した米国のスタートアップだ。同年に米国サンフランシスコ近郊のパロアルトに第1店舗をオープンし、2020年1月の時点で、米国に23店舗、ドバイに1店舗の実店舗を運営している。オープンから5年で1000以上のブランドが出品した。

日本にオープンする2店舗にはどのような商品が展示されるのだろうか。「出品企業は続々決定中」とのことだが、先行公開されている93商品を見る限り、ガジェット好きを唸らせるような新鋭なテック・プロダクトは多くない。

ユカイ工学のセラピーロボット「Qoobo」やスマートロックの「Qrio Lock」などスタートアップが開発するガジェット、Xiaomi・Ankerなど大手メーカーの各製品、といったテック・プロダクトと比較し、コスメ、クラフトビールや抹茶粉末などの食品、アパレル商品など、ライフスタイル・グッズが多く扱われている印象だ。

b8taのサンタモニカ店を訪れたことがあると言う、電化製品やガジェットの話題を扱うテクノロジー・ブログEngadget中国版の編集長Richard Lai(リチャード・ライ)氏はb8ta Japanが発表している商品ラインナップを見た上で、「(サンタモニカ店には)すでに知っている商品もありましたが、多くのプロダクトを初めて知り試すことができました。比較すると、日本店はライフスタイル・グッズの割合が多い。テック記者としては、より多くのガジェットを期待してしまいます」と話す。

「ですが、オンラインのみでしか購入できない商品を実際に試すことができるのは、私のように海外から訪れる旅行者にとっては便利だと言えるでしょう」(Lai氏)

以下はb8ta Japanが取扱う商品の一部だ(全62枚)。

FORM /「Smart Swim Goggles」
Pico Technology Japan /「Pico G2 4K」
ネットギアジャパン /「Meural Canvas II」
ポプロモビル /「diti」
細川機業 /「オリガミクス 和紙布スリッポン」
千休 /「千休」
(左上から時計回りに)NeoLAB /「Neo smartpen」、PLEN Robotics /「PLEN Cube」、Qrio /「Qrio Lock」、Live Smart /「LS Mini Next」、Vanguard Industries /「Moflin」
(左から)Harman International /「Aura Studio 3」、SB C&S /「GLIDiC Sound Air TW-6000」
(左から)バルクオム /「BULK HOMME」、パルディア /「IKKI」
(左から)KAPOK JAPAN /「KAPOK KNOT」、CORES /「less is」
加島商事 /「PowerArQ 2」
True Food & Design /「True Food Chocolate」
(左上から時計回りに)BREATHER / 「ston、BREATHER専用カートリッジ各種」、KINTO /「MARK IT BY KINTO」、KINTO /「MOLLIS」、New Innovations /「root C」、Wexthuset Japan /「Plantui6」、Wexthuset Japan /「Trican」
(左上から時計回りに)三菱ケミカル・クリンスイ /「和食のためのクリンスイ」、シロップ /「PETOKOTO FOODS」、NTTぷらら /「ひかりTV-VF HOTEI×北斗の拳バーチャル3Dフィギュア」、ユカイ工学 /「Qoobo」、oneA /「SWANSWAN Sleeim」
カインズ / 全16商品
Google /「Google Chromecast」
Google /「Google Nest Hub Max」
Google /「Google Nest Hub」
Google /「Google Nest Wifi」
Google /「Google Nest Mini」
Google /「Chromebook」
Google / 「Google Pixel 4」
EMMESPHERE /「Sound Necklace」
AstroReality /「AR-enabled Solar System Mini Set」
Vincross /「MIND KIT」
MOON-X /「CRAFT X クリスタル IPA」
laboratory /「AGILE COSMETICS PROJECT」
TANT /「ikue」
Eone Japan /「Bradley」
アンカー・ジャパン /「Anker PowerCore Fusion lll 5000
FutuRocket /「BLEU JOUR Kubb」
Xiaomi /「Redmi Note 9S」
Xiaomi /「Mi Note 10 Lite」
Healbe Japan /「GoBe3」
バルミューダ /「BALMUDA The Speaker」
アンカー・ジャパン /「Anker Nebula Cosmos Max」
アンカー・ジャパン /「Soundcore Liberty 2 Pro」
Borderless /「Crosshelmet」
Grow /「BODYBOSS 2.0」
Grow /「snowfeet X」
ユーグレナ/ 「B.C.A.D.」
SENSE /「Depth」
MOON-X /「BITOKA」
MOON-X /「SKIN X」
パーク /「LOGIC」
gram nine /「Wildcrafted Organics」
ジェイピーエスラボ /「unlabel」
TENTIAL /「TENTIAL INSOLE」
ワシオ /「Yetina」
Aveine /「Smart Wine Aerator」
Sunstar Engineering /「QAIS -air- 03」
COWAY /「AIRMEGA 300S」
ダイソン /「Dyson Lightcycle Morph」
Gingko Electronics /「Octagon One」
アンカー・ジャパン /「Eufy RoboVac L70 Hybrid」
山崎実業 /「ブレッドケース タワー」
TEODA /「高濃度 CBD ヴェポライザー」
大石アンドアソシエイツ /「ゴールドコーンフィルター&サーバー」
ラネット /「ozobarrier」
プラス /「クリーンボード クレア」
プラス /「クリーンノート Kaite2」
サマリー /「サマリー ポケット」

日本のb8taは「D2C推し」

b8ta Japanが先行公開している商品群を見て「もっとガジェットが見たい!」と感じたのは決してLai氏だけではない。

「『もっとガジェットに寄ったほうが良かったんじゃないか』といった声は確かにいただいたことはあります」

DIAMOND SIGNALの取材で、b8ta Japanのカントリーマネージャー北川卓司氏はそう話し、唇を噛む。技適やライセンスの関係、そして新型コロナウイルスの感染拡大が原因で海外メーカーは国外販売先の新規開拓に対して消極的になり、当初計画していたように、海外からの沢山のテック・プロダクトを店頭に並べることは困難となったのだ。

そのためb8ta Japanでは、D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる、商品を自社ECサイトで直接消費者に販売するビジネスモデルを展開するブランドの商品を多く扱うという独自の方針をとっている。

SNSの普及がブランドと消費者との接触を安易にし、BASE、STORESやShopifyなどEC構築プラットフォームの誕生により、簡単にネット販売を行えるようになったことが、様々なD2Cブランドが誕生した背景として挙げられる。

米国ではコスメの「Glossier」やスーツケースの「Away」といったD2Cブランドが人気だ。日本でもメンズスキンケアブランドの「Bulk Homme」やオーダースーツの「FABRIC TOKYO」、生理用品ブランド「Nagi」など、多くのD2Cブランドが台頭してきた。

新宿マルイを運営する丸井グループは近年、D2C領域に積極的に投資してきた。前述のFABLIC TOKYOのほかヘアケアブランドの「MEDULLA」、そしてD2Cブランドの多くが利用するEC構築プラットフォームBASEへの出資に加え、2月にはD2C支援特化の新会社・D2C&Co.の設立を発表した。

1月に設立が発表されたb8ta Japanは、米b8taとサンフランシスコのベンチャーキャピタルであるEvolution Venturesとの合弁会社だ。丸井グループ、三菱地所、カインズはEvolution Venturesを通じて、凸版印刷は米b8taを通じて、それぞれb8ta Japanに出資している。

2月の発表によると、丸井グループは2023年3月期までの7年間で合計300億円の投資を計画しており、これまでに約130億円の投資を実行した。今後は戦略投資の対象としてD2Cスタートアップに重点を置き、投資活動を展開していくという。

有楽町マルイにはMEDULLAが、渋谷マルイにはBASEが常設ショップを展開しているが、丸井はb8taの出店を通じ、D2Cブランドのマルイ店舗への出店をさらに加速させたい考えだ。

そして丸井は2019年11月、ポップアップストア出店支援サービスの「SHOPCOUNTER」や商業施設DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)支援サービスの「adpt OS」の開発・運用を行っているCOUNTERWORKSとの資本業務提携契約を締結している。これまではテナントを持たないと出店できなかった新興D2Cブランドが、ポップアップストアなど、これまでになかった短期間・安価なプランを選択してマルイに出店できるようになる。その結果、マルイの店舗の価値向上を狙う。

丸井は2月のプレスリリースで「ただモノを買うだけならネットのほうが便利であり、リアル店舗のようにオフラインをベースにしたビジネスは根本的な見直しが迫られています。こうした変化を踏まえ、アフターデジタル時代に対応した新たな価値を提供する店舗へと進化するために今後注力していくのがD2Cです」と説明している。

強みはオフライン出品の低リスク化と顧客体験の可視化

だが、ECで顧客に直接商品を販売できるD2Cブランドにとって、b8taでの店舗販売は本当に必要なのだろうか。

北川氏は「D2Cでは、オンラインで販売を始めファンを獲得しますが、成長していく過程の中で、次のステップとして『直営店を開こう』というフェーズは必ず来ると思うんですよね。特にアメリカとかのD2Cで成功している企業ですとそこが上手くいっているパターンが多いと思います」と話す。

b8ta Japan カントリーマネージャー北川卓司氏

確かに、TIMES誌が「世界一快適」と評した米国のスニーカーのD2Cブランド「Allbirds」もEC販売で事業を開始し、今では米国、中国、英国、日本を含む様々な国々で店舗を運営。顧客との接点を増やし、売上を拡大させている。

「ECからスタートし、自社の店舗を開こうと考える際に、『実店舗とはどういったものなのか』、『どういった費用感で出来るのか』といったことは、なかなか想像するのが難しいと思います。b8taでは出品料を支払っていただくだけで(新宿、有楽町といった)良いロケーションでの販売が可能となり、『こんな感じなのかな』といった感触を得ることができます。また、面と向かって関わることのなかったユーザーやファンなどと、テスター(b8taの店舗スタッフ)を介したコミュニケーションを取ることで、『どのような声をお持ちなのか』といった情報を吸い上げることが可能です」(北川氏)

b8taに出店する企業は、月額30万円前後の出品料を支払うことで、運営に必要なスタッフから在庫管理、物流サポート、POS(販売時点情報管理)まで全て提供される。また、設置された2種類のカメラが収集した、顧客の性別や年齢、そしてb8taでどのような体験をしたかなどといった情報を得られる。b8taはこのビジネスモデルをRaaS(Retail as a Service:サービスとしての小売)と呼んでいる。

北川氏は店舗を構えるb8taの強みは、企業のオフラインへの出品のリスクを極限まで下げ、よく訓練されたスタッフから定性的なフィードバックを得られることだ、と話す。そのため店舗スタッフの採用とトレーニングにはこだわった。

「量販店や百貨店よりも、もう一歩踏み込んで商品の説明ができるようにしたい」(北川氏)

b8ta Japanに出店予定のユカイ工学は東急ハンズやロフト、ラオックスでも商品を販売しているが、代表取締役社長の青木俊介氏は「どれほど多くの顧客が実際に足を止めているかがわかる」ことが大きな期待だと話す。他店舗が提供する売上状況の情報は「1カ月単位」と大まかだが、b8taではより細かなデータが得られる。

目指すは店舗拡大とB2B展開そして日本ブランドの越境

8月1日にいよいよ日本でも2店舗が開店するb8ta。コロナの影響で開店が後ろ倒しになるなどトラブルもあった。

北川氏は、b8taに出品するような潜在的な顧客企業も「オンライン販売に対する出資が増えている」と言うが、同氏は一方で、「オンラインは飽和状態になり、今後も更に情報過多になっていく」とも見ている。だからこそ、b8taでは店舗ならではの優れた顧客体験を追求していく。

北川氏は、今後は2店舗の反響をもとに店舗数拡大を検討するほか、日本の商品を海外へ、海外の商品を日本へ、といった具合に企業の越境を支援する役割を果たしていきたいと考えている。また、b8taは米国ではトイザらスなど企業に対しRaaSソリューションを提供しているが、日本でも商業施設などに向けたB2B事業の展開を目指すという。

b8ta Japanでは抹茶の「千休」や和紙布を使用したスニーカー「オリガミクス 和紙布スリッポン」など、日本の伝統を感じさせる商品も扱っている。D2Cだけでなく、それら「日本ならでは」の商品を他国のb8ta店舗に並べていくことが、b8ta Japanが存在感を出していく上では重要だ。北川氏は日本の伝統工芸やものづくりの会社の海外展開を「将来的にはサポートしていきたい」と意気込む。