
- 細かいニーズに対応、会員数は40万人を突破
- コロナ禍で購入者が急増、売り上げは2.5倍に
- ケーキD2Cブランドや洋菓子店向けSaaSの取り組み強化へ
オンライン上で3000種類を超える様々な商品の中から好きなものを注文できるケーキ特化ECの「Cake.jp」が好調だ。
会員数は40万人を超え、加盟店舗の数も400店以上に上る。直近では新型コロナウイルスの影響などで巣ごもり消費による需要が拡大したこともあり、約2カ月で新規会員が10万人増えた。
運営元のCake.jpでは洋菓子店と連携するほか、東京・平和島に構える自社工場でオリジナルスイーツの製造にも取り組む。今後は加盟店拡大に加え、自社ブランドの拡充や洋菓子店向けのサポートツールの開発なども進めていく計画だ。
同社ではそのための軍資金として、7月30日にニッセイキャピタルなど複数の投資家から約2.6億円を調達したことを明らかにした。これまでも金融系VCや複数の事業会社から資金調達を実施していて、今回はシリーズAラウンドに該当するとのこと。ニッセイキャピタルのほか事業会社数社と個人投資家から出資を受けている。
細かいニーズに対応、会員数は40万人を突破
Cake.jpは簡単に言えば「ZOZOTOWNのケーキ版」のようなサービスだ。
洋菓子に関心のあるユーザーが集まっているので、洋菓子店は同サービスに出店することでオンライン上の販売経路を獲得できる。商品が売れた際に20%の手数料を支払う仕組みで、これがCake.jpの収益源になる。

ユーザー視点での特徴はとにかくバラエティ豊かなケーキが揃っていること。近年はSNS映えするスイーツなど新しいジャンルも確立されてきていて、消費者のニーズが多様化している。その点Cake.jpはオンラインモールという特性上、近場の洋菓子店では手に入らないような商品にもアクセスできる。
「リアルな店舗だと廃棄コストの問題などもあって商品ラインナップに限りがあります。韓国のケーキを食べてみたい、子供のアレルギーに対応したものを選びたい、誕生日用なので写真ケーキにしたい。そのような細かいニーズに対応できる手段をネットで調べた結果、Cake.jpを使ってくださるような人も多いです」
「またスイーツはトレンドの移り変わりがとても早いので、それを素早くキャッチアップしながら商品作りに反映できる仕組みも重要です。自分たちの場合はSNSなどから得たニーズを基に自社工場や提携先の洋菓子店とスピーディーに商品開発ができる体制を作りました。開発から販売までを1週間〜1ヶ月くらいの期間に抑えられるのも強みになっています」(Cake.jp代表取締役の高橋優貴氏)

ユーザーは20〜40代が中心で特に女性が多い。利用シーンとしては誕生日祝いのケーキが7割ほどを占める。最近はミシュランを取得しているような有名店やSNSなどで人気のブランドの参画も進み、手土産や純粋に自宅で楽しむスイーツとしてなど他の用途も広がってきた。
一例をあげると大阪のパティスリーで人気があったおむすび型のケーキ(OMUSUBI Cake)はCake.jp出店後発売1カ月で1万7000個以上、1000万円を超える売上を記録したという。

コロナ禍で購入者が急増、売り上げは2.5倍に
全体の売上も増加中で昨年12月には単月で売上1億円を突破。直近はコロナの影響で新規ユーザー・既存ユーザー共にオンラインでケーキを買う人も増え、5月〜7月にかけてはそれぞれ前年同月比で売上が2.5倍になっているという。
こうした個人需要に加え、Cake.jpでは宿泊施設やブライダル関連など法人向けの事業も手がけてきた。わかりやすい事例としては地方の旅館や結婚式場だ。お祝い用のケーキを手配したいと思った時に近場にパティシエがいなかったり、洋菓子店がなかったりする。その場合にCake.jpが理想のケーキを手配できるように裏側でサポートするわけだ。
当初Cake.jpではケーキに特化せず総合的なギフトECとしてスタートしたが、2017年1月に現在のサービス名に変更しケーキに領域を絞り込んだ。その背景にはギフトECをやる中で「特にケーキやスイーツの領域が消費者と店舗双方の課題が大きいと感じた」ことに加えて、高橋氏自身が地方の旅館でケーキを手配できなかったという原体験もある。
「場所問わずオンラインでケーキを注文できるようになると喜んでくれる人も多いのではないかと考えました」(高橋氏)
宿泊施設や結婚式場にとっても顧客体験の向上に繋がるのでタッグを組むメリットは大きい。すでに宿泊施設だけでも提携先は1500カ所以上に上るそうだ。
ケーキD2Cブランドや洋菓子店向けSaaSの取り組み強化へ
高橋氏によると2017年1月からの約3年半は、加盟店を増やしながらマーケットプレイスの基盤を作っていくフェーズだった。それが少しずつ形になってきた中で、今後は独自ブランドへの投資なども加速させながら「ユーザーのエンゲージメントを高めていく」ための取り組みを進める。
Cake.jpでは自社工場を構え、独自の製造ラインを持っているのが強みだ。有名シェフなどと連携してレシピやノウハウを提供してもらいつつ、製造自体は自社で賄うことで量も担保できる。

メロン1玉をくりぬいて作った「まるごとメロンケーキ」などのユニークな商品のほか、アイドルとのコラボ商品などを開発していて、今後はこういったCake.jpのD2Cブランドから毎月1〜2種類の商品をリリースして行くことを目指す。そこからヒット商品を生み出すことで、結果的にCake.jpに出店している洋菓子店の売上アップにも貢献するのが目標だ。

また中長期的には培ってきたノウハウを軸に洋菓子店向けのサポートも強化する。
「ケーキは配送が難しい商品」だからこそ、これまでも独自開発した資材(梱包用の商品)や受発注システムの提供など店舗向けのサポートには力を入れてきた。この取り組みを拡大し、「洋菓子店用のSaaS」のような形でパッケージとして提供する計画だ。
「自分たちが工場を持っていることで、洋菓子店が何に困っているのか、どこでつまずいているのかもわかるようになってきました。洋菓子店の方はケーキ作りが得意な反面、経営やマーケティングは苦手な場合もあります。製造体制もパワープレイになりがちだったりもするので、そういった課題をまるっとサポートできるシステムを作っていきたいと考えています」(高橋氏)
