スタートアップの起業家やベンチャーキャピタリストが集まる招待制カンファレンス、「Infinity Ventures Summit 2020 Summer Online(以下、IVS)」。

そのIVSの目玉コンテンツで、気鋭スタートアップが競い合うピッチコンテスト「LaunchPad」が7月31日に開催された。予選を勝ち上がった14社のファイナリストがピッチを繰り広げたが、見事に優勝を果たしたのは、製造業向けに異常検知のAIソフトウェア「検査・検品AI」を開発するアダコテックだった。

IVSは2007年にスタートし、今や国内最大級規模となった老舗のスタートアップカンファレンス。今回は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い初のオンライン開催となったが、新運営体制のもと、約800名が参加予約し、過去最大のセッション数を誇った。

決勝戦に進出した全14社の概要は以下のとおり。

Sportip

動作解析を軸に、フィットネス関連サービスを開発。トレーニング解析やアライメントテストを可能にし、セラピストやトレーナーの指導をアップデートするアシスタントAIの「Sportip Pro」、そして自宅でのトレーニングをサポートする、オンラインAIフィットネスの「Sportip Meet」を展開する。

RIM

eSportsなどゲーム大会の開催を安易にするプラットフォーム「GameTector」を提供。選手募集、参加選手管理、対戦ツール、戦績管理、など、大会開催に必要なさまざまな機能を網羅。これまでに累計で約1万回の大会がGameTectorを使用し、開催された。

YOUTRUST

副業・転職のリファラル採用プラットフォーム 「YOUTRUST」を提供。YOUTRUSTは友達や、友達の友達の転職・副業意欲が、リアルタイムでわかるキャリアSNSだ。スカウト返信率が60%と高い。累計で250社が利用した。

Luup

電動小型モビリティのシェアリングサービス 「LUUP」を展開。現在はシェアサイクルを展開しているが、電動キックボード・シェアの展開を目指す。本年10月、大手町と新宿で公道での電動キックボードの実証実験を行う。

tsumug

マンションやホテルなどの空室を、コネクティッド・ロックを活用したオフィススペースに変える企業向け自律分散オフィスサービス「TiNK」を展開。新型コロナの感染拡大により、大型オフィスに従業員を集中させることはリスクとなった。TiNKを使い支社・拠点を分散配置することで、リスクを最小限に留められる。

東急

不動産事業、交通事業などで知られる、あの東急の社内ベンチャー。発表されたのは、落書きに悩まされている壁面や、不動産の空きスペースを活用し、 アート性の高い広告掲載や屋外型アート展に活用するサービス、「ROADCAST」だ。

ビズ・クリエイション

住宅会社が手軽に物件の見学を受け入れることを可能にする「KengakuCloud」を開発し、「あらゆる住宅を見学可能」にすることを目指す。2020年4月現在、工務店を中心に2000社が登録し利用。住宅見学マッチングサイト「iemiru」も運営。

クイッキン

宿泊施設における、予約、チェックイン・アウトまでの業務を効率化し、少人数の接客での施設運⽤を可能とする「aiPass」を開発。DX(デジタルトランスフォーメーション)で旅行体験を変えていくことが同社のミッション。

リーナーテクノロジーズ

企業のコスト削減に必要な多くの機能を揃えたオールインワンの支出管理ツール「Leaner」を開発。コピー費や電気代、携帯料金、各種支払い手数料などを始めとした「間接費」と呼ばれるコストを改善する。

B2M

中小企業の越境ECを取引手数料を最小限に抑えることで支援するプラットフォーム「B2M」を開発し、提供。日本市場への参入を目指している。

アダコテック

製造業向けに異常検知のAIソフトウェア「検査・検品AI」を開発する。少量のデータでも「異常をほぼ100%検出」という。同社は2020年2月に開催されたピッチコンテスト「スタートアップ・カタパルト」でも優勝を果たした。

PowerArena

製造業界向けのコンピュータビジョンプラットフォーム「PowerArena」を開発。アダコテックの競合として紹介された。

AGRIST

農業の人手不足を解決するAI収穫ロボットを開発。農家の「儲からない」「人手不足」、「規模拡大困難」、といった課題の解決を目指す。

AquaFusion

水中可視化装置「AquaMagic」を開発。1秒間に40回以上、超音波を送信し、 従来の100倍の分解能を実現した。登壇した同社の代表取締役CEO・CTOの笹倉豊喜氏は72歳。LaunchPad史上最高齢の登壇者だ。

LaunchPadにはこれまで、クラウド会計サービスのfreee、求人SNSのウォンテッドリー、クラウドソーシング大手のクラウドワークスやクラウド労務ソフトのSmartHRなど、現在でも活躍するテック企業が登壇してきた。

IVS代表の島川敏明氏いわく、LaunchPadにおける審査基準は、「今後どれだけ伸びるのか」、「新規性があるか」、「市場優位性を持っているか」など。募集対象となる領域は、インターネット、モバイル、ソフトウェア、デジタルコンテンツ、コンシューマーエレクトロニクスなど、ネット・IT全般となっている。今年は150社を超える最多の応募があった。