
- 若年層を中心に支持を集めるバンドルカード
- コロナ禍で決済金額は月間最高記録を更新
- 調達した資金で「投資分野」の新サービスを開発
- BtoC特化のフィンテック企業として国内初の上場を目指す
誰でも作れるVISAプリペイドカードの「バンドルカード」。アプリからネットショッピングで使えるバーチャルカードを発行する同サービス。その強みは使用する金額をチャージして“すぐに”利用が可能なこと。「1分で誰でも作れて、3分でお買い物完了」が売り文句だ。物理カードを発行すれば店舗での買い物にも利用できる。
2016年9月のローンチから約4年。バンドルカードを提供するカンムは8月11日、専用アプリのダウンロード数が250万を突破したことを発表。併せてセブン銀行を引受先とし、11.3億円の資金調達を実施したことを明かした。
調達した資金をもとに、カンムではバンドルカードの新規会員獲得を強化。そして新プロダクトの開発を進める。大型調達の狙いについて、カンム代表取締役の八巻渉氏に話を聞いた。
若年層を中心に支持を集めるバンドルカード
バンドルカードには大きく分けて2種類のユーザーがいる。クレジットカードを持てない若年層のユーザー、そしてクレジットカードカードを持っているが「頻繁には使いたくない」と考えるユーザーだ。
クレジットカードを持っていない人がスマートフォンのゲームやアプリを買う場合、コンビニで専用のプリペイドカードを購入するなどして決済をしなければならない。そしてアイドルグループなどのファンクラブに入会し、チケットやグッズを購入する際にも、決済と本人確認のためにクレジットカード番号が必要となる。
クレジットカードを持っていても、「利用限度額が大きく、使いすぎてしまう」ことを心配する人もいる。プリペイドカードであれば、予算が決まっているので、使いすぎるということはない。
八巻氏は、バンドルカードでは上記のような課題を解決することで、若年層を中心に支持を集めていると説明する。15歳から39歳のユーザーによる利用が、全体の8割を占めるという。
アプリからの会員登録は約1分で済む。そしてチャージ手段にはコンビニ、d払い、ビットコイン、ATM、ネット銀行など、さまざまな選択肢が用意されている。また、「ポチっとチャージ」機能を使えば、上限金額(3000~5万円)までをすぐにチャージできる。利用料金は翌月末までにコンビニなどで後払いする。会員登録の簡単さ、チャージ手段の多さが人気の秘けつだ。
コロナ禍で決済金額は月間最高記録を更新
コロナ禍における巣ごもり需要で、バンドルカードの利用、そして専用アプリのダウンロード数は増加した。外出自粛により消費者がオンラインへ移行したことが背景にある。
決済金額は3~6月にかけて月間最高記録を更新。月間のチャージ金額は、2月と比較し7月は約27%伸びた。ダウンロード数も、2月と比較し7月は約20%伸びたという。
「オンラインでの決済ニーズが爆発的に増えたことが背景として挙げられます。ECもそうですし、ゲームを含めたデジタルコンテンツの購入。そしてネット配信ライブなど、今までになかった利用も目立ちました」(八巻氏)

調達した資金で「投資分野」の新サービスを開発
カンムでは今後も「個人がさまざまな金融サービスを利用する際の心理的なハードルを下げる」という同社の目標達成を目指す。セブン銀行から調達した資金をもとに、投資分野の新サービスを開発し、12月にリリースする予定だ。
認可などの問題があるため、「新サービスに関しての具体的な内容は非公開」(八巻氏)としたが、投資分野のサービスであることから、メインターゲットはバンドルカードを利用する若年層とは重ならない「ある程度、預金のある層」とだけ説明した。
カンムには新サービスを既存の決済事業と組み合わせ、個人向けの金融プラットフォームを構築することが視野にある。プラットフォームでは、投資・保険・決済など、ユーザーが抱える個別の金融課題に対して、「わかりやすいソリューションを提供する」ことを目指す。プラットフォーム構築ではセブン銀行、そして2018年1月に資本業務提携を締結したフリークアウト・ホールディングスとの連携を活かす。
セブン銀行のATMからバンドルカードへのチャージは今でも可能だ。だが、今後は連携の幅を広げる。八巻氏は「『現金とデジタルマネーをどうつないでいくか』を今後も追求します。新プロダクトも含めて、色々とやっていきたい」と語る。
資本業務提携の締結以降、フリークアウト・ホールディングスからはデジタルマーケティングにおける支援を受けてきた。今後の連携について、八巻氏は「フリークアウト・ホールディングスはマーケティングの会社です。さまざまなデータを持っているので、我々のデータと連携をすることで、新しい与信の仕組みを作ることが可能なのではないかと考えています。もちろん、個人情報保護の観点から、『どこまでできるか』には慎重になる必要があります」と述べる。
フリークアウト・ホールディングスは伊藤忠商事の関連会社だ。八巻氏は「伊藤忠商事はファミリーマートやポール・スミスといったブランドを持っています。そことの連携は視野にあります」と話す。
カンムは2011年1月に設立。セブン銀行からの出資を受け、同社の累計調達額は44.3億円となった。これまでに、ベンチャーキャピタルのEast Ventures、ANRI、iSGSインベストメントワークス、クロノスファンド(現アントレプレナー)、アドウェイズ、TLM。そして有安伸宏氏と梅田裕真氏を含む5名の個人投資家や創業者から出資を受けてきた。
BtoC特化のフィンテック企業として国内初の上場を目指す
コロナ禍で利用が加速するバンドルカード。カンムでは前述のとおり、バンドルカードの利用者を伸ばしつつ、新プロダクトを開発。そして金融プラットフォームを構築していく。八巻氏は、「あくまでもBtoCのフィンテック事業にこだわり、数年以内の上場を目指す」と意気込む。
「BtoCのフィンテック事業に特化した企業の上場はまだ達成されていないと認識しています。我々は日本初の事例になることを目指します」(八巻氏)