
- 約100回を超えるアップデートを重ね、新機能を追加
- 海外ツールも需要増で多額の資金調達を実施
- 初年度で100社以上の有償利用を目指す
コロナ禍によって在宅勤務の割合が増えたことで、働き方も変化が生じている。例えば、会議やミーティングはビデオ会議サービス「Zoom(ズーム)」や、Googleのビデオ会議ツール「Google Meet(グーグルミート)」を活用する機会が増えた。これらのツールを活用することで業務の効率化が図れるようになった一方で、従来のように会議室のホワイトボードを使ってメンバー間の認識共有を図ることは難しくなった。
そんな課題を解決すべく、グッドパッチが新たに開発したサービスがクラウドワークスペース「Strap(ストラップ)」だ。2020年4月にパブリックβ版の利用登録を開始していた同ツールだが、9月1日に正式版の提供が開始された。
約100回を超えるアップデートを重ね、新機能を追加

Strapはリアルタイムで図解やテキスト情報の共同編集を可能にするチームコラボレーションツール。一言で説明するならば、オンライン版のホワイトボードだ。
パブリックβ版利用開始時の主な機能は、同じボード上で複数名の同時編集を可能にする「同時編集機能」や、ビジネスフレームワークなどのテンプレートを使って人に伝わる図を簡単に作成できる「テンプレート機能」、作成した資料をStrap上で共有し、チームメンバーからフィードバックをもらう「コメント機能」の3つだった。
これらの機能を活用することで、ホワイトボードを見ながらチーム全員で情報を共有し作業するコラボレーション空間をオンラインで実現している。
グッドパッチ代表取締役社長の土屋尚史氏によれば「パブリックβ版の利用登録を開始してから4営業日ほどで、約1800社ほどから申し込みがあった」という。その中から限定で約100社に利用してもらい、利用企業の声などをもとに4ヶ月間で約100回を超えるアップデートを重ね、正式版では数十種類の機能が新たに加わっている。
主な新機能が安全な情報管理を可能にする「スペース整理・権限管理機能」と、チームの一体感を創出する「共同編集者のカーソル表示機能」、コミュニケーションの活性化を図る「アイコンエレメント機能」の3つだ。
個人とチームの作業スペースをわけ、機密性を担保する「スペース整理・権限管理機能」

スペース整理機能は、個人の作業スペースとチームで共有するスペースを分けもの。これにより、個人の思考の整理とチームでプロセス共有の両立が可能となる。
一方の権限管理機能は、チームやプロジェクト単位で権限管理を可能にするもので、これと使えば特定の人だけが使用できるスペースを確保でき、情報の機密性を保ちながら作業が行える。
どこに目線が注目してるのが分かる「カーソル表示機能」

共同編集者のカーソル表示機能は、リモート勤務などで物理的距離が離れているメンバー同士でも同じスペース上の“どこの情報を見ているか”をリアルタイムで把握できるようにするものだ。Strap事業責任者の北村篤志氏は、同機能の価値をこう語る。
「共同編集者のカーソル位置が把握できるようになったことで、誰が、どこで、何をしているかが分かるようになりました。これはまさにオンラインホワイトボードならではの機能だと思っていまして、どこに目線が注目してるのかが分かるので、オフラインのホワイトボード以上の価値が発揮できるのではないかと思っています」(北村氏)
アイコンで情報を共有する「アイコンエレメント機能」

アイコンエレメント機能はボードをさらに見やすく、また情報共有をわかりやすく行えるようにするためのもの。アイコンは、カラー・モノクロの塗り潰し・アウトラインのみなどボードの雰囲気や用途にあわせてアレンジが可能となっており、「アイコンを使うことでメンバーの温度感も伝わりコミュニケーションも活性化する」と北村氏は語る。
海外ツールも需要増で多額の資金調達を実施
オンラインホワイトボードサービスに関しては、米国発のツール「Miro(ミロ)」がコロナ禍で増加する需要に対応すべく、2020年4月に5000万ドル(約54億円)の資金調達を実施している。また同様に「MURAL(ミューラル)」というツールも8月末に1億1800万ドル(約127億円)を調達するなど、競合サービスの勢いが加速している。今後、日本市場に積極的に展開してくることも考えられる。Strapはどうするのか。
土屋氏は「大企業は情報セキュリティの観点から、海外のツールが使えないケースがあります」と語り、それがStrap独自の強みになるという。また導入後のCS(カスタマーサポート)も日本語で対応できるため、それも安心感の醸成に繋がる。
また、北村氏は「これまでMiroを使っていた企業から『試しにStrapを使ってみたい』と言われ、実際に使ってもらったんです。結果を聞くと、無駄な機能がなく操作が軽いこと、日本語で親しみやすいUI(ユーザーインターフェース)であることに好意的な反応を示す企業がそれなりに多くいました」と語る。
初年度で100社以上の有償利用を目指す

「海外企業の参入ハードルはそれなりに高いと思っているので、まずは国内のマーケットに集中して、シェアを獲りにいければと思っています」(土屋氏)
Strapの料金は組織の大きさに合わせて3種類のプランを用意しており、具体的な金額は企業ごとに設定される。土屋氏によれば、「初年度で有償利用の企業数を100社以上にしていくこと」を目指していくという。