Awwが手がけるバーチャルヒューマン。 画像提供 : Aww
Awwが手がけるバーチャルヒューマン。 画像提供 : Aww

SNSとスマートフォンの普及が個人が活躍する時代を一気に加速させ、多大な影響力を持つ「インフルエンサー」を生んだ。もはやその個人とは生身の人間に限らない。近年は3DCG技術を活用した「バーチャルヒューマン」の存在感が徐々に増してきている。

2019年創業のAwwが手掛けるバーチャルヒューマン「imma」はその代表格と言えるだろう。デビュー以来SNSを中心に注目を集め、現在Instagramのフォロワー数は24万人を突破。Porsche、SK-II、IKEAを始めとする有名ブランドのグローバルキャンペーンのほか、中国全土で放送されるアイスクリームブランドMagnumのTVCMにも起用された。

Awwではバーチャルヒューマンの基礎技術を「MASTER MODEL(マスターモデル)」という形に落とし込むことで、質の高いバーチャルヒューマンを効率的に制作できる仕組みを開発。今後は自社のIPだけでなく、パートナー企業のバーチャルヒューマンの開発・プロデュースにも力を入れていく計画だ。

そのための資金として9月3日にはCoral Capitalからシードラウンドで1億円の資金調達を実施した。

バーチャルヒューマンとは冒頭で触れた通り、3DCG技術などを用いて制作されたキャラクターのこと。日本では数年前からアニメ調の「バーチャルYouTuber(VTuber)」が人気を集めているが、同じ“バーチャル”という名称が用いられてもその見た目はさまざま。特に影響力の大きいバーチャルヒューマンの中には人間と見分けがつかないくらい、かなりリアルに作られているものもある。

今年3月にはファーストリテイリング子会社のジーユーが多様な商品やコーディネートを紹介する目的として、自社のバーチャルモデルYUを発表。ファッション雑誌のVOGUEがCGモデルを表紙に採用するなど、大手企業や大手メディアでもバーチャルヒューマン関連の取り組みが活発化し始めている。

スタートアップ発のバーチャルヒューマンも勢いがある。世界的に有名なLil Miquela(リル・ミケーラ)はInstagramだけで270万人以上のフォロワーを獲得した。開発元の米BrudはCrunchbaseによると少なくとも過去に610万ドル(約6.5億円)の資金を調達済みだ。

“⽇本初のバーチャルヒューマンカンパニー”を謳うAwwでもimmaを筆頭にこれまで「plusticboy」「Ria」など複数のバーチャルモデルをプロデュースしてきた。

同社の大きな強みはバーチャルヒューマンの基礎技術の結晶体とも言えるマスターモデル。映像プロデューサーとしてさまざまなクリエイティブに携わり、映像プロダクションNIONの代表も務める守屋貴行氏(Aww創業者で代表取締役)をはじめ、3DCGや映像領域に明るいクリエイターたちが研究開発を進めてきた技術を集約した。

「わかりやすく言うとCGで人の顔や動きをどのように上手く作っていくか。その知見や技術を蓄積し、集約したのがマスターモデルです。自社や提携会社で世界最高クオリティのCG技術を持っていて、それをもとにマスターモデルとバーチャルヒューマンを作りだせるのが自分たちの特徴だと考えています」(守屋氏)

守屋氏自身、これまでゲームや映像作品のプロジェクトにおいてCG技術を提供する機会も多く、「おのずとCGを使っていかに人間に近いキャラクターを作れるか」を追求してきた。そのような取り組みを数年間に渡って続けてきたことで蓄積された経験や技術がマスターモデルにも活かされているそうだ。

Awwではバーチャルヒューマンの基礎技術を集約したマスターモデルを保有。この技術を基にバーチャルモデルを開発している
Awwではバーチャルヒューマンの基礎技術を集約したマスターモデルを保有。この技術を基にバーチャルモデルを開発している
コンテンツ制作やブランディング(ストーリーテリング)も自社で手がける
コンテンツ制作やブランディング(ストーリーテリング)も自社で手がける

Awwではこのモデルを基にバーチャルヒューマンを開発するだけでなく、その後のコンテンツ制作やブランディングの大部分も社内で行う。

いくらバーチャルヒューマンのビジュアルの完成度が高くても、そのキャラクターに共感されなければファンは増えない。バーチャルヒューマンを育てていく上では「ストーリーテリング」が重要なポイント。Awwには写真や映像、コミュニケーション領域に長けたクリエイターも在籍し、性格や普段発信するコンテンツの中身まで細かくプロデュースする。その技術や知見にも自信を持っているとのことだった。

今年4月からはマスターモデルを用いてパートナー企業のバーチャルヒューマン開発も始めており、今後は自社IPに加えてパートナーとの取り組みも加速させる方針。調達した資金を用いて組織体制や研究開発を強化し、「リアルタイム3DCG」や「デジタルファッション」など、5G×XR(VR/AR/MR)時代を見据えたバーチャルヒューマン関連の新規事業も推進していくという。