左から、Luup代表取締役社長兼CEO岡井大輝氏、新宿副都心エリア環境改善委員会の事務局長・小林洋平氏、西新宿スマートシティTF事務局・村上拓也氏 撮影:菊池大介
  • 公道での実証実験は10月中旬以降に開始予定
  • 日本に存在する3種類の電動キックボード
  • 2〜3年後のサービスインを目指す

海外では便利な短距離移動の手段として利用されている、電動キックボードのシェアリングサービス。日本でも複数の事業者がサービスインを目指して実証実験を進めている。10月には全国各地で、国内初となる公道での実証実験が開始される予定だ。

公道での実証実験を実施する事業者の1つが2018年設立のスタートアップ、Luupだ。同社は5月よりシェアサイクルサービス「LUUP」を展開していて、電動キックボードの導入も目論む。そのために実証実験を重ねて「最も安全で便利な電動キックボードのシェアリングサービスのありかた」を模索している。

Luupは9月24日の記者会見で、10月中旬以降に予定している公道での実証実験について詳細を説明。新宿副都心エリア環境改善委員会と連携協定を締結し、西新宿地区における実証実験の実施を皮切りに、同エリアの「スマートシティ化」に共同で取り組むことを発表した。

公道での実証実験は10月中旬以降に開始予定

Luupによる電動キックボードの公道での実証実験は、10月中旬以降から2021年3月まで、東京の千代田区、新宿区、渋谷区、世田谷区で実施される予定だ。提供台数は100台で、参加者(最大で約100名)には車体とヘルメットが貸し出される。利用料金は月額3000円。9月16日より参加者を募集している。

東京モーターショー2019の試乗会に並ぶLuupの電動キックボード 画像提供:Luup

参加条件は、千代田区、新宿、渋谷区、世田谷区に在勤で、規定エリア内での日常的な走行が可能なこと。原付免許を保有していること。健康であり、道路交通法などを遵守し走行すること。そしてガイドラインに沿って情報提供などに協力すること。Luupはアプリから走行時のデータを取得するほか、期間内に複数回、オンラインまたはオフラインでのアンケート調査などを実施する予定だ。

今回の実証実験の特徴は、電動キックボードが自転車専用通行帯(自転車レーン)を走行することにある。電動キックボードは現行法上では原動機付自転車として扱われるため、公道で走行するにはウィンカーなど国土交通省が定める保安部品を取り付け、原動機付自転車登録をし、免許証を携帯する必要がある。そして自転車専用通行帯ではなく、車道を走らなくてはならない。しかし車と並走するのは危険なため、電動キックボードのシェアリングサービスを展開する事業者は、政府の「新事業特例制度」を利用し、自転車専用通行帯での走行による実証実験を可能とした。

Luup代表取締役社長兼CEOの岡井大輝氏は「これまで自転車専用通行帯を(電動キックボードが)走行することは許されていませんでした。車道を走行する場合、車の走る道を逼迫します。そのため事故が起こる可能性が非常に高かった。(新事業特例制度により)ようやく安全性を確保でき、公道での実証実験を実施できるようになりました」と説明する。

日本に存在する3種類の電動キックボード

岡井氏いわく、日本には3種類の電動キックボードが存在する。1つ目は、クラウドファンディングなどで販売されている、原付自転車としての条件を満たした電動キックボード。法的に公道での走行は可能だが、自転車専用通行帯は走行できない。

2つ目は、原付自転車としての条件を満たしていないキックボード。家電量販店などでも普通に購入できるため、違法なものの、歩道や道路を走行しているケースが目立つ。本来、私有地などを除き走行は不可だが「まだまだ知られていない状況です」と岡井氏は言う。

3つ目は、新事業特例制度を使ってLuupなどが実証実験を行い、10月中旬以降より自転車専用通行帯を走行する予定の電動キックボードだ。

岡井氏は「今回は国内初の公道での実証実験となりますが、今までのあらゆる電動キックボードの走行条件よりも安全であると言えます」と話す。

「多くの方々に乗っていただき、何が安全だったのか、何が危険だったのか、定量的にデータを集め、さらなる実証実験に挑みたいと考えています。新事業特例制度を利用した今回の実証実験の結果をもとに、来年の前半を目処に、国家戦略特別区域法に基づく特例措置の検討がなされます」(岡井氏)

2〜3年後のサービスインを目指す

Luupが展開するシェアサイクルサービスのLUUPは、将来的には電動キックボードの導入も目論んでいる。岡井氏は「サービスインは2〜3年後になるのではないか」と説明する。同社は電動キックボードに限らず、さまざまな電動モビリティを提供することを視野に、高齢者も乗れる車体も開発している。

Luupは電動アシスト自転車や電動キックボードのほかにもさまざまな電動モビリティを開発している 画像提供:Luup

岡井氏は、電動キックボードはシェアリングサービスとして提供することでその力を最大限に発揮するという。IoTの技術により、「事故多発エリアでは機体を停止」、「危険エリアではスピードを遅く」といった制御が可能だからだ。

ヘルメットの着用や原付免許の保有は必須にするべきか、そもそも電動キックボードはどこを走るべきなのか――。Luupは実証実験を重ねることで、今後も最適なシェアリングサービスのありかたを模索する。

「今回の実証実験で知りたいのは、電動キックボードと自転車の安全性における相違点です。ヘルメットの着用や原付免許保有の必要性に関しては、今後の実証実験で検証していきたいと思っています。『可能な限り丁寧に階段を登っていきたい』というのが僕たちのスタンスですが、できるだけ小刻みに急いで登りたいとも考えています」(岡井氏)