
- 水道不要の手洗いスタンド「WOSH」
- スマートフォンの表面も99.9%除菌
- 一般への提供も開始、レンタル価格は月額約2万円
- 既存の手洗い場所を活用し、公衆手洗いを推進
水循環を用いた自律分散型水インフラの研究開発と事業展開を手がける水処理スタートアップのWOTAは2020年9月25日、パートナー企業・賛同団体とともに「公衆手洗い推進パートナーシップ」を発足した。
これは“Withコロナ時代”の街づくりとして、街中でいつでも誰でも手軽に手を洗える社会の実現を目指す取り組み。プロジェクトの第1弾として、東京・銀座の街にある商業施設での公衆手洗いを推進する「WELCOME WASH GINZA」を開始した。

水道不要の手洗いスタンド「WOSH」
WELCOME WASH GINZAは銀座の街を中心に、さまざまな商業施設にある公衆手洗い場所を一般に開放することで、誰でも手軽に手を洗えるようにするもの。加えてWOTAが開発した水道不要の手洗いスタンド「WOSH」を商業施設の入り口などさまざまな場所に設置することで、公衆手洗いを推進していく。
WOSHの特徴は、タンク内の水の循環再生処理を行うことで、電源を取れる場所であれば近くに水道がなくても使える点にある。WOTA代表取締役CEOの前田瑶介氏は、WOSHについて「一言で言うと宇宙ステーションのような水処理を行うものです」と語る。

「宇宙ステーションは閉鎖空間のため、水道がなくても水を処理して使えるようにする生活環境が整っています。WOSHはその処理を地上で安価に実現することで、世界の水問題を解決しようとしています。水循環再生処理能力は、約98%を再利用できる水準です」(前田氏)

WOSHは膜ろ過・塩素添加・紫外線照射の3段階の水再生処理を搭載しており、各ポイントに設置したセンサーで水質を常に制御・監視しながら浄化を行う。水を再利用するコンセプトのため飲用は想定していないが、WHO(世界保健機関)の飲料水ガイドラインや各国の飲料水基準に準ずる衛生的な水を供給している。

「センシングと機械学習によって、浄水場のような大規模な水プラントの機能・性能を数十万分の1とコンパクトにし、自動化を実現しました。それによって、使用した水をその場で処理できるようになっています」(前田氏)

スマートフォンの表面も99.9%除菌
さらに、スマートフォンの表面をUV(紫外線)で除菌する機能も搭載している。手を洗っている約30秒間で、スマートフォンの表面についた菌の99.9%以上を除菌できる。

「WHOが、現代社会において(スマートフォンが)第3の手と言えるほど、手指衛生において非常に重要である、としています。今までは流水の殺菌に使っていた技術をスマートフォン表面の除菌に応用することで、2つの手(人の手)だけでなく第3の手も99.9%除菌できる、新しい手の衛生のスタンダードとして開発しました」(前田氏)
前田氏はメンテナンスでもWOTAの利便性を主張する。
「メンテナンスは水の補充とフィルターの交換だけだ。上から20Lの水を注ぐだけでよく、フィルターもワンタッチで交換できます。コピー機くらいのユーザビリティで、誰でも使いこなせるプロダクトになっています」(前田氏)
一般への提供も開始、レンタル価格は月額約2万円

本体にはプレフィルター、メインフィルター、ポストフィルターの3種類が設置されており、プレフィルター(セディメント・活性炭フィルター)では髪の毛や泥などの粗いゴミを取り除き、洗剤の一部を除去する。メインフィルター(RO膜)では洗剤などの水中に溶け込んでいる不純物のほか、細菌やウイルスを取り除く。さらにポストフィルター(活性炭フィルター)でRO膜を通り抜けた微量の有機物を取り除く仕組みだ。

ちなみにWOSHは一般へのレンタルも行う予定で、本体レンタル価格(24カ月契約)はコロナ対策特別価格として月額2万2000円(税別)で提供する。
インストールパック(設置人件費、システム初期設置費、初回消耗品)は同じくコロナ対策特別価格で9万8000円(税別)。消耗品は一式(プレフィルター、メインフィルター、ポストフィルター、ハンドソープ、塩素タブレット)で2万3550円(税別)。消耗品の目安は、1日来客数150人程度で月間25日営業するカフェで月額3万円前後、社員100人程度のオフィスで来客者も一定程度利用される場合で月額4万円前後を想定している。
既存の手洗い場所を活用し、公衆手洗いを推進
今回立ち上げたWELCOME WASH GINZAでは、公衆手洗いの推進に向けて以下の3つのアクションを行っていく。
1.公衆手洗いの新規設置と既存手洗い場所の開放
2.公衆手洗い場所のマップ化/サインの導入
3.衛生備品の設置/清掃などによる環境改善
WOSHをさまざまな場所に設置するだけでなく、店舗などにある既存手洗い場所を誰でも使えるように開放する。手洗い場所に困らないようにマップ化するだけでなく、どこに手洗い場所があるのかを分かりやすく表示するサインなども導入していく。さらに、ハンドソープなど衛生備品が切れないようにしたり清掃を行ったりすることで、「常に清潔を維持できるように改善していきます」(前田氏)という。

「一人ひとりが手を洗うことは、その人のためだけでなく、社会全体の健康にもつながっていきます。手洗いの増加は社会全体の健康、衛生につながると思いますし、それを通じて社会の公衆衛生の向上につながっていけば、街自体の価値、そこに行きたいという気持ちが高まるはずです。そうすると経済活動や事業活動も上がります。点ではなく線でつながっていくことで、公衆衛生と経済の活性化を両立していきたいです」(前田氏)

また、発表会場にはタレントや女優、モデルとして活躍する傍ら、2010年から社会支援活動を開始し、2019年10月には一般社団法人「Think The DAY」を設立して代表理事を務める紗栄子さんも登壇した。
紗栄子さんは「これまで被災地や避難所に行って活動してきましたが、水の利用に関しては衛生面で疑問に思うことが多々ありました。公衆手洗い推進によって改めて手洗いの必要性の認識を高めていただきたいです。また、手洗いの費用対効果の高さ、必要性を再認識していただき、広がっていくことを願っています」と語った。