
- その道のエキスパートが候補者の見極めをサポート
- 幹部人材採用におけるミスマッチの原因の解消へ
- 目指すのは「候補者の見極めが全て完結する」プロダクト
リソースが限られるスタートアップにおいて「どんな人に同じ船に乗ってもらうか」は、事業の成長スピードに大きな影響を与える重要な問題だ。
特にCxOや事業責任者などの幹部人材についてはなおさらのことだが、自社に合った人材を採用するのは簡単なことではない。採用のミスマッチによって企業と候補者双方が不幸になることを避けるためには、企業側でしっかりと候補者を見極める必要がある。
XTechグループのProfessional Studioが9月30日にリリースした「Pro-Check(プロチェック)」は、まさに企業側が適切に候補者を評価できるようにサポートするサービスだ。
Pro-Checkは同サービスに登録するさまざまなエキスパートに候補者の見極めを手伝ってもらえるのが特徴。自分たちだけでは判断が難しいスキルやコンピテンシーを評価する際に、レジュメチェックや面接への同席・代行といった形でエキスパートの知見を借りることが可能だ。
最近ではHR系スタートアップのROXXが展開する「back check」を筆頭に、候補者の元同僚や元上司に前職での実績や人物像などを照会できる「リファレンスチェックサービス」を活用する企業も増えてきている。Pro-Checkはそれとはまた少し違った切り口から、サードオピニオンを得ることによって採用の失敗を防ぐ手段とも言えるだろう。
その道のエキスパートが候補者の見極めをサポート

上述した通り、Pro-Checkはスタートアップの現役幹部やOBを中心とした各職種のプロフェッショナルに、採用候補者のレジュメチェックや面接代行を依頼できるサービスだ。
すでに現役のCFOやCTOといったCxO人材や上場企業の部門責任者、監査法人やPEファンド出身者など各職種のエキスパート人材が50人以上登録。彼ら彼女らが第三者の視点から候補者の見極めを行う。
利用フローとしては申し込みを行った後、Pro-Check運営側が各社の条件に合いそうなエキスパートの候補リストを抽出。そのリストを踏まえて実際にサポートをしてもらう人材を絞り込んでいく。レジュメチェックの場合はエキスパートが候補者のレジュメを確認して求人との相性をジャッジする。面接同席・面接代行の場合には、評価項目などをすり合わせるための事前面談を実施した後、実際の面接に進む形だ。

レジュメチェックは1件1万円、面接代行は1件数万円で提供する計画。現在は企業とエキスパートのマッチング部分は運営側が人力で行っているが、近い将来スポットコンサルサービスの「ビザスク」のような形で、基本的に運営を介すことなく双方がウェブ上でマッチングする仕組みにアップデートしていく予定だという。
幹部人材採用におけるミスマッチの原因の解消へ
主な利用用途として想定しているのはアーリーステージのスタートアップにおける幹部人材の採用時だ。
たとえばビジネスサイド出身の経営者がCTOを新たに採用する際に、候補者の具体的な技術力を判断したい時。もしくは大企業のマーケティング部門で実績を残してきた候補者が、全くステージの異なる自社のCMOとしても活躍できるかを見極めたい時。そのように自分たちだけでは適切な見極めが困難である場合に、その道のプロの意見を聞けるサービスだと考えるとわかりやすい。
Professional Studioで代表取締役を務める市川龍太郎氏は、スタートアップで幹部人材採用時にミスマッチが生じる主な原因として「企業側に明確な基準がないこと」と「評価基準はあるものの候補者がそれを満たしているのかが判断できないこと」を挙げる。
特にCxO職などになると、そもそも企業側がそのポジションを担う人材にどのようなスキルや経験が必要になるかを細かく把握できていないことも珍しくないそう。評価基準がズレてしまうと必然的にミスマッチを誘発する可能性も増えてしまう。
また適切な基準は作れていても、候補者がそれを満たしているかどうかを見極めるのは簡単ではない。たとえば「外資系の投資銀行やPEファンド出身という経歴だけで、CFOとしてオファーを出してしまう」ということはよくありがちなのだという。結果としてエクイティファイナンスに関してはほぼ未経験の人をCFOとして採用してしまうと、お互いが不幸な状態に陥ってしまいかねない。
これらの原因によるミスマッチは、その道のプロの助けを借りられれば防げることも多いのではないか。Pro-Checkはそんな考えから生まれたサービスだ。

「採用が上手くいっている企業では技術顧問やVCの担当者など、自社に関係するプロフェッショナルの助けを借りながら候補者の見極めをしているところもあります。ただ、みんながみんな同じようなアプローチができるわけではありません。ミスマッチを防ぐ仕組みとしてリファレンスチェックサービスなども広がってきてはいますが、それだけでは『その人が本当にこのポジションで活躍できるのか』を見極めるのは難しい。そこはプロの人に見てもらうのが1番良いのではないかと考え、Pro-Checkを作りました」(市川氏)
Professional Studioの取締役を務める多治川友之氏が支援先のCFO面談を代行する様子も見ていたので、ニーズが大きいと感じていたそう。またXTechグループとして複数のスタートアップを立ち上げ・M&Aしてきた経験から幹部採用に関する知見も溜まってきており、そのノウハウを活かせるのも大きな強みになるという。
目指すのは「候補者の見極めが全て完結する」プロダクト
Professional Studioは2020年4月の設立。代表の市川氏は東京大学卒業後にRettyへ新卒1号社員として入社。その後ボストン・コンサルティング・グループを経て2020年1月にXTechへジョインした。
Professional Studioでは「スタートアップ幹部人材輩出のエコシステムを創る」をミッションに掲げ、9月から自社でもスタートアップ企業と幹部候補人材をマッチングする人材紹介事業をスタート。現在はこれにPro-Checkを加えた2つのサービスを軸にしている。

特にPro-Checkに関しては今後機能を拡張させるとともに、テクノロジーの活用も進めていく計画。ゆくゆくは「Pro-Checkがあれば候補者の見極めが全て完結する状態」を目指すという。
「現在のスキルやコンピテンシーのチェックに加えて、リファレンスチェックやストレスチェックなどもできるようにしたいと考えています。それらのサービスを月額定額で、ニーズに合わせて必要なものを組み合わて使える仕組みを作ることで、幹部人材の採用におけるミスマッチをなくしていくのが目標です」(市川氏)