「akippa」は2014年4月のローンチ。2018年11月に会員数100万人を突破し、そこから約2年を経て今回200万人に到達した  すべての画像提供 : akippa
「akippa」は2014年4月のローンチ。2018年11月に会員数100万人を突破し、そこから約2年を経て今回200万人に到達した すべての画像提供 : akippa
  • イベント需要は減少も、車通勤による駐車場ニーズを取り込む
  • 駐車場数は4万拠点を突破、代理店や保険の取り組みも加速
  • 2022年には累計1000万人目指す

駐車場シェアリングサービス「akippa」がコロナ禍で打撃を受けながらも、事業を伸ばしている。10月5日に累計会員数が200万人を突破。サービス上に掲載されている駐車場拠点数も累計4万拠点を超えた。

akippaは誰でも簡単に自宅の車庫や空き地、商業施設の空きスペースなどを駐車場としてシェアできるサービスだ。ユーザーはスマホやPCから各スペースを15分単位で借りることが可能。事前予約制のため当日現地で駐車場探しに奔走する手間もない。

同サービスは2014年4月にサービスをスタートし、2018年11月に会員数が100万人に到達。そこから2年弱で会員数が新たに100万人増加した。とはいえ、特にここ半年ほどは予想していない事態も発生し必ずしも順風満帆だったわけではない。

akippaの代表的なユースケースの1つで、同サービスにおいては稼ぎ頭でもあったスポーツやコンサートなど「イベント時の駐車場利用」がコロナの影響で減少。特に4月から5月に関しては緊急事態宣言が出されたことでイベント自体の開催が難しくなったため、それに伴い駐車場の利用も落ち込んだ。

akippa代表取締役社長CEOの金谷元気氏も「(会員数・拠点数共に)数は増えていますが、成長率を踏まえると本当はもう少し伸ばしたかったというのが正直なところです」と心境を語る。

それでも以前に比べて「通勤時の需要」が増えるなど、いくつかポジティブな兆候も見られた。秋口に入って徐々にではあるがイベント時のニーズも戻り始めている中で、ユーザーの利便性を高めながらさらなる成長を目指していく計画だ。

イベント需要は減少も、車通勤による駐車場ニーズを取り込む

駐車場シェアリングサービス「akippa」
駐車場シェアリングサービス「akippa」

イベント需要が減った一方で、緊急事態宣言をきっかけに活発になったのが車通勤時の利用だ。それまでは公共交通機関を利用していた人たちが、密集を避ける目的で自家用車での通勤に切り替えた。

東京都全体では2月に比べて、4月の緊急事態宣言発令直後の1週間で2.3倍、宣言解除後の5月末には4倍に増加。千代田区・中央区・港区の都心エリアでは、4月には2月の3.5倍だったところが、5月末には約5倍にまで拡大した。

宣言解除直後をピークにその数字自体は少し落ち着いてはいるものの、新しい層のユーザーがakippaに登録する1つのきっかけになったと言えるだろう。また通勤時やプライベートで知人宅を訪問する際など、日常的にakippaを使うユーザーが増えたことで定着率に大きな変化が生まれたという。

具体的には新規ユーザーが翌月に再度使う割合を調べたところ、3〜7月の数字が従来の1.5〜3倍に増えた。7月はまだイベント需要が戻ってなかったものの、既存ユーザーの予約件数については前年の数値を上回るなどプラスの要素も生まれている。

駐車場数は4万拠点を突破、代理店や保険の取り組みも加速

ユーザーの定着率の変化は利用用途が変わってきたことや継続して実施してきたサービスのアップデートなどの影響もあるが、予約できる駐車場が増えたことも大きいと金谷氏は話す。

コロナ禍で本業に打撃を受けたホテルなどの事業者が少しでも収益を確保するために、保有するスペースを駐車場としてakippaで貸し出す流れが加速。個人についても同様の動きが見られた結果、4〜6月には四半期ベースで駐車場の増加数が過去最高値を記録した。

「今までは供給が追いついていないことがネックで、使いたいけどすでに予約されてしまっていたということもありました。駐車場の数自体が増えたことで、ユーザーの選択肢が広がり、結果的にユーザー数や予約件数の増加にも繋がったと考えています」(金谷氏)

昨年から進めてきた施策も徐々に形になり始めている。akippaでは2019年10月にSOMPOホールディングスと資本業務提携を締結し、代理店との連携や「駐車場シェア安心保険」の共同開発などに取り組んできた。

SOMPOホールディングスと進める保険代理店との連携スキーム
SOMPOホールディングスと進める保険代理店との連携スキーム

足元ではakippaのパートナーとして駐車場開拓を行う損保ジャパンの保険代理店が約800店舗まで拡大。それ以外の代理店も含めるとパートナー数は全国で900店舗ほどに増えている。

並行して損害保険ジャパンと準備を進めてきた専用の保険も6月から適用がスタート。これによって駐車場内での事故においてユーザーの自動車保険が適用されなかった場合にも、要件を満たせば駐車場シェア安心保険が適用されるようになった。

「シェア保険の存在が駐車場オーナーの安心感にも繋がっています。(保険によって)駐車場を貸し出すハードルが下がったことも駐車場が増えた大きな要因の1つです」(金谷氏)

駐車場シェア専用保険も開発
駐車場シェア専用保険も開発

2022年には累計1000万人目指す

約2年前に100万人を突破して以降、プロダクト側でも定期的に新しい機能を取り入れるなどアップデートを重ねてきた。

たとえば8月には駐車場が欲しい地点にピンポイントでリクエストができる機能を追加。大規模なスタジアムの周辺など一部の駐車場においては、需要と供給の状態に応じて柔軟に料金を変動させるダイナミックプライシングの導入も始めた。

事業面ではスポーツチームや自治体との連携にも力を入れている。スポーツに関してはコロナ前後で状況が変わってはいるものの、akippaの導入がスタジアム付近の渋滞解消に繋がったような事例も生まれた。

一例をあげると長崎に本拠地を構えるJリーグクラブのV・ファーレン長崎では、スタジアム周辺に車が集中し、最大で4km・3.5時間の時間の交通渋滞が生まれていたのだそう。そこでスタジアム駐車場にakippaを導入して事前予約制に切り替えたところ、渋滞がなくなりサポーターや近隣住民の不満解消に繋がった。

現在はイベント人数に制限が設けられているためスタジアムに直接足を運ぶサポーターの数自体は限られる。ただ以前は公共交通機関を用いて来場することを推奨していたクラブが自家用車での来場を勧めるようにシフトしたケースなどもあり、事前予約ができるakippaが求められるシーンが今後広がっていくことも十分に考えられそうだ。

akippaとしては引き続きプロダクトの機能改善に取り組むと共に、駐車場の開拓を進めながらユーザーにとっての利便性を高めていく方針。「2022年に累計1000万人、20万拠点の達成を目標に事業を加速させていきます」(金谷氏)という。

akippa代表取締役社長CEOの金谷元気氏
akippa代表取締役社長CEOの金谷元気氏