
2018年9月の創業以降、テクノロジー×原価管理という切り口で製造業の課題解決に取り組んできたKOSKA(コスカ)。同社では2019年3月より製造業の原価管理をIoTで自動化する「GenKan(ゲンカン)」のベータ版を展開してきた。
複数のIoTセンサーを活用することで“作業者の作業を一切変えることなく”作業の進捗や実働時間を把握。そこから得られたデータを元に従来は曖昧だった製造現場の実態を金額ベースで見える化できるのが大きな特徴だ。これまで自動車・電気部品から金属や樹脂、食品加工など20社以上にサービスを提供している。
この1年半に渡るベータ版期間で得られた知見などをもとに、KOSKAでは11月1日にGenKanの正式版をローンチする計画だ。同社によると特に多品種少量生産を行っている企業の課題感が大きかったこともあり、今回の正式版ではそこに焦点を当ててプロダクトの作り込みを行ってきたという。
正式版プロダクトの主な特徴はベータ版と同様だ。2種類のセンサを作業工程に組み込むことで、作業員にデータ入力などを強いることなく現場の状況を正しく把握できる。
具体的には作業指示書をRFIDセンサーの上に置くだけで工程の作業開始・終了時間を正確に取得。現場にカメラセンサーを設置し、作業員を自動で検知して実働時間を得られる仕組みを作った。

従来こうしたデータを取得する場合にはバーコードや日報などが使われていたが、それだと作業員に余計な負担がかかる上に、手作業が含まれるためデータの抜け漏れや精度の観点で課題があった。Genkanの場合は指示書をセンサーの上に置くだけでよく、ほぼ自動的に生産データを収集できる点がポイントだ。
同サービスでは受注ごとの工程進捗や実働時間に加えて、実際の原価も可視化される。ダッシュボード上では見積価格と実際原価を比較でき、製品ごとの損益決算が1日単位で可能。勘や経験だけに頼ることなく、実態を基に利益をきちんと確保できるような見積価格を算出するのに役立つほか、受注の判断や設備投資など、経営者が意思決定をする際の材料にもなる。


Genkanは初期費用無料、月額4.8万円からの定額モデル。7工程までが4.8万円、それ以上の場合は1工程ごとに3000円が加算される仕組みだ。
KOSKAでは2019年10月に既存投資家であるCoral CapitalとDEEPCOREより総額約2.5億円の資金調達を実施済みで、正式ローンチに向けて社内体制の強化を進めてきた。新型コロナウイルスの影響で延期にはなってしまったものの、今春には中国の工場との取り組みも予定していたそうで、今後は日本だけでなく海外の企業・工場での展開も見込んでいるという。