
電動モビリティ機体を開発し販売する和歌山発ベンチャーのglafit(グラフィット)。これまでに電動バイクの「GFR」や電動キックボード風の立ち乗り電動バイク「LOM」をリリースしてきた。
家電量販店でも取り扱うGFRはglafitの看板商品だが、ユーザーには不満もあったようだ。GFRは電動バイクと自転車の切り替えができるが、自転車モードのメリットがあまりにも少なかったのだ。
GFRは現行法上では原動機付自転車に分類されるため、いかなる場合でも通行できるのは車道のみとされていた。車両の走行速度の速い幹線道路を走行する場合でも歩道や自転車レーンを走行することは許されず、電池が切れた場合でも車道の中央を走行する必要があった。
そこでglafitは2019年11月から2020年1月まで、政府の「新技術等実証制度(規制のサンドボックス制度)」を活用し、GFRの自転車モードが従来の自転車と比較して性能に差異がないことを証明するため、実証実験を実施した。
そして10月28日、結果として、電動バイクと自転車の切り替えができる「ハイブリッドバイク」が認められたことを発表した。自転車モードでは、従来の自転車と同じように、自転車通行可の標示がある歩道や自転車レーンなどを走行することが可能となった。ただし条件として、GFRに新たな機構を導入する必要がある。
この機構は、モーターが駆動しないことを電⼦的な制御のみでなく、電源をカットすることで担保する。GFRの電源を切り、自転車モードで利用する際には、交通標識デザインに沿ったピクトグラムが描かれたカバーでナンバープレートを覆い、⾃転⾞として走行中であるということを分かりやすくする。ナンバープレートのカバーの切り替えは、電源を切った状態で、停車中にのみ可能だ。

glafitでは2021年初夏を目途に、特許出願済みである機構の単体販売を開始する。機構を付した機体も販売する予定だという。販売前に警察庁が改めて確認、各都道府県警に対して通達が発出された上で運用が開始される。
glafit代表取締役社長の鳴海禎造氏は10月28日の記者会見で、今後も警察庁と綿密に連携し、GFRを「より電動にしていきたい」と話す。将来的にはスイッチ1つで電動バイクと電動アシスト付き自転車の切り替えができる機体の実現を目指すという。
鳴海氏によると、glafitはこれまでに約5000台のGFRを販売している。売上は約5〜6億円。新機構の導入は販売数増に繋がるかという質問に対しては「正直わかりません」と回答するにとどまったが、「車道しか走行できないのを知らずに類似商材を自転車として利用としているケースは多い」と説明し、新機構付きのGFRで類似商材を置き換えていきたい考えを示した。