
2020年は新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で、飲食業界におけるデリバリーやテイクアウトサービスの普及が一段と加速した。テイクアウトの事前注文・決済アプリ「PICKS」を展開するスタートアップ・DIRIGIOもこの波に乗る形で事業を拡大させた1社だ。
4月末時点の同サービス加盟店約2300店舗のうち、約1500店舗は今年の3〜4月に新規で登録。今はそこからさらに加盟店を拡大させ、約3500店舗が活用するサービスに成長した。4月〜10月の流通総額は前年比で20倍になったという。
DIRIGIOでは飲食店・ユーザーが抱えるテイクアウトの課題を解消するべく、双方に対して独自のアプリを開発してきた。飲食店にはスマホで簡単にテイクアウトの注文管理や売上管理ができるアプリを提供。ユーザーにはスマホからテイクアウトの事前注文・決済ができるアプリを通じて、店頭で長時間並ぶことなくサクッと食事を受け取れる体験を届ける。
そのDIRIGIOがPICKSで培ってきたノウハウや運営体制を軸に、飲食店向けの新たなサービス「Picks APP」を11月2日よりスタートした。
Picks APPのウリは「飲食店のアプリをノーコードで作成できる」ことだ。飲食店はお店のロゴや基本情報を用意するだけで、自店舗専用のアプリを開発することが可能。DIRIGIOによると申し込みから最短5日程度で実際にアプリをリリースできるという。
まずはPICKSと同じくモバイルオーダー&ペイ(テイクアウトの事前注文・決済)に対応した機能を中心に、ユーザーへのプッシュ通知やアプリ内通知の送信、お知らせやクーポンの配信機能などを搭載する。今後はテイクアウトに留まらず、予約やスタンプなど飲食店アプリに必要な機能を随時実装していく計画だ。
Picks APPの利用料金は月額2万円の定額制で、初期導入費用や売上手数料などはかからない。

DIRIGIO代表取締役CEOの本多祐樹氏は今回Picks APPを開発した背景について、コロナ禍で飲食店のあり方が変わり「顧客接点のデジタル化をどれだけできているか」が売上にも大きく影響するようになったことを挙げる。
「デリバリー、テイクアウト、ECなど販売のチャネルが多様化する中で、飲食店が新しい取り組みを始めても『そもそも顧客に伝える場所がない』という課題が出てきました。特にstay home期間は看板やチラシの効果がなっていたので、picksの導入店舗でもSNSやLINE@を活用して顧客との接点をデジタル化しているところがうまくいっていた印象です。こうした複数のチャネルをデジタル上で一箇所に集約して顧客に伝えられる場所が求められていると感じ、Picks APPの開発に踏み切りました」(本多氏)
本多氏の話では、以前から自店舗用のアプリを作りたいという声は多く、ニーズ自体は確信していたそう。通常飲食店が開発会社などに依頼して独自アプリを作る場合、モバイルオーダーの機能だけでも「初期費用で100万円、月額で数十万円かかる」といった例も珍しくなく、コストの面で壁があった。
またそれを乗り越えてアプリを作っても、バグが起きて顧客側に何らかの支障が出た場合、自分たちで全てを対応しなければならない。「その度に表側には見えないオペレーションコスト」が発生し、それが店舗の負担になるケースもあるという。
DIRIGIOとしては単なる受託開発の形で引き受けてしまうとビジネスとしてのスケールが難しく、その方向性を模索してきたそう。今回同社ではPICKSで培ってきたモバイルオーダーのシステムやデータベース、サポート体制をそのまま利用しながら店舗独自のアプリを作れる仕組みを構築できたため、“月額2万円で使えるノーコードサービス”としてローンチするに至ったようだ。
今後は他社との連携も進めながら、店内メニューの閲覧機能や来店予約機能、会員証やスタンプ、サブスクリプション機能などを順次実装していく方針。自社でも積極的に拡張機能を開発しながら、飲食店が必要とする仕組みが一通りそろったサービスを目指す。