
- デジタル化のネガティブなイメージを払拭
- 時代のニーズにマッチし、人気を獲得
- 画像処理のAI技術、ソフトとハードの融合が強み
- 要求レベルの高い日本で認められる製品づくりを
スキャナーを開いて綺麗に本や雑誌をセットし、蓋を閉じて印刷。さらに、取り込んだデータをパソコンで加工する──本や雑誌などを従来のフラットベッドスキャナーでスキャンする際は、面倒な作業が発生していた。
そんなスキャンの悩みを解決すべく、私たち「CZUR TECH(シーザー テック)」はワンタッチでスキャンを可能にする“オーバーヘッドスキャナー”の開発を行っている。
新型コロナウィルスの影響により経済の低迷が続く中、私たちはテレワークの普及という波に乗ることで前年比160%の売り上げを記録。これまでにハイエンドからローエンドモデルを含め4つのシリーズをリリースし、創業7年で総出荷台数は30万台を目前に控えている。
なぜオーバーヘッドスキャナーを開発しようと思ったのか。また私たちの開発するオーバーヘッドスキャナーが人気な理由、そして今後のビジョンについて話そうと思う。
デジタル化のネガティブなイメージを払拭
オーバーヘッドスキャナーと言われて、ピンと来る人の方が少ないと思うが、簡単に説明すると、本や雑誌を裁断せずに早く綺麗にスキャンできるスキャナーのことだ。
組織において「情報は紙で管理するもの」という価値観は根強かったが、近年「紙での管理は非効率」という価値観が強くなり、デジタル化が推し進められている。その一方、デジタル化が「面倒」「難しい」という初歩的な部分で躓いている人がいるのも事実。
そのデジタル化の「面倒」や「難しい」と言ったネガティブなイメージを払拭させるのが、私たちの開発するオーバーヘッドスキャナー「CZUR Shine(シーザー シャイン)」だ。

一見、CZUR Shineはデスクライトのように見えるが、れっきとしたスキャナーである。スキャン方法は簡単で、専用のアプリを起動した状態から作業用マットの上にスキャンしたい書籍や書類を置き、スキャンボタンを押すだけでいい。
スキャン時間は1〜2秒と早く、独自開発したソフトウェアがデジタル化した後の切り抜きや色補正、命名・採番などの“面倒な編集作業”もサポートする。また、OCR(光学文字認識)機能によりWordやExcelにも出力できるため、文字情報の検索や編集も可能だ。
時代のニーズにマッチし、人気を獲得
私たちは2019年5月に、デスクライトの機能も兼ね備えた超高速スマートスキャナー「CZUR Aura(シーザーオーラ)」のプロジェクトを応援購入サービス「Makuake」で開始した。
当時はオーバーヘッドスキャナー自体の認知拡大と、実用性向上の為にこれまでの製品に無かった折りたたみ式のデスクライト機能を持たせたことで広く注目を集め、たくさんの人から申し込みをいただいた。
それから1年が経ち、本体ディスプレイの除外など機能を必要最小限に抑えることで、前シリーズから500gも軽量化させたCZUR Shineを新たに開発した。
CZUR Shineは通常のコピー機とは異なり、折りたたみ式デスクライトとしても使用できるほか、場所を専有しない形状、そして付属カメラは紙資料の画面共有や手元の撮影が必要なオンラインミーティングにも活用できる。そうした点がテレワーク環境に適しているとのことでプロジェクト開始以来、すでにたくさんの好評価をいただいている。

もともとは個人の読書愛好家をターゲットに、軽量かつ快適なスキャン体験の提供を目的として開発してきた。しかし置き場所に困らない形状や使い勝手の良さから、時代のニーズにマッチした製品として評価されたことが今の人気に繋がっていると考えている。
画像処理のAI技術、ソフトとハードの融合が強み
大学時代に論文資料のコピーを取る際に感じた手間──これがオーバーヘッドスキャナーを開発するきっかけとなっている。
毎回、コピー機に重い本を押し付けてスキャンボタンを押し、ひっくり返してはまた押し付けてスキャンボタンを押す……。そんな作業を何時間も繰り返さなくてはならず、効率の悪さが苦痛となり、もはやトラウマになっていた。
当時、書籍用のスキャナーはハイスペックな商業用のものがほとんどで、個人で負担できる金額ではなかったことも不満に感じていた。そこで、誰もが購入できる便利なスキャナーを開発したい。そんな思いから生まれたのが、CZUR TECHのオーバーヘッドスキャナーだ。
スキャナーは大きく3つに分けられるが、私たちの製品は日常生活のほとんどの利用シーンをカバーできるオールラウンダー型に分類される。
・裁断型(専門性の高いもの)
・オールラウンダー型(様々な日常シーンにも対応)
・スマホアプリ型(移動時等の利用や導入の簡易さ)
効率性だけ見るとスキャン専用機である裁断型の方がはるかにスキャンのスピードが早いが、利用シーンの広がりではオールラウンダー型の方が高く、どこでも使える導入の簡易さを考慮するとスマホアプリに軍配が上がる。
今はまだ競合製品のハードの精密性に敵わないが、CZUR TECH独自の強みを活かして差別化を図っていきたいと考えている。
ちなみに私たちの強みは主に2つある。画像処理のAI(人工知能)技術と、ハードとソフトの融合だ。アルゴリズム研究やソフトウェア開発チームを中国・大連に有しており、独自開発した「本の湾曲補正」機能はユーザーからの評価も高く、裁断しない本や雑誌に至っては後加工がほぼ必要の無いレベルでスキャン可能となっている。
また、徹底的にユーザーの声を意識することで、過去4年間で実施したアップデートの回数は通算100回以上。名刺などの複数対象一括スキャンは、ユーザーからのフィードバックによって機能の追加が実現した。
深圳にあるグローバルマーケティングチームが、製品の機能やデザインを考えながらハードとソフトの調整を行い、広東省・東莞(とうかん)の製造チームと連携して形にする。私たちは2013年に深圳で創業したが、実際に製品がリリースされたのは2015年。創業以来、研究や試作を繰り返しながら試行錯誤のモノづくりを行っており、その結果私たちのスキャナーは「使い勝手がいい」と評判も高く、何より社内にもファンが多い。
要求レベルの高い日本で認められる製品づくりを
現在、中国を除くスキャナーのグローバル市場は、アメリカ、日本を筆頭にヨーロッパや韓国が続いており、その中でも特に日本市場は重要度が高いと考えている。
総合評価がされる日本では製品の価格や性能はもちろん、操作性、マニュアル、梱包やカスタマーサポートに至るまで、全てにおいて製品の要求レベルが高く、日本のユーザー欲求を満たすことは私たちにとって、とても刺激的である。
いま、CZUR TECHが大きく成長を続けている理由のひとつに、新型コロナウィルスによる時代の変化があったことは間違いない。誰もが予想だにしなかったテレワーク時代の到来により、今後オーバーヘッドスキャナーのマーケット拡大や競争の激化が予想されるが、私たちは競合他社をそこまで警戒していない。
最初にオフィス用品の軽量化、個人化の読みを見誤っていたら、ここまでの成長は無かったと思うが、経営者としてこの激動する時代の流れを先読みし、産業の方向性を見極めること自体、非常に難しい。だからこそ自分たちの強みさえ明白にすることができれば、自然とプロフェッショナリティーがブラッシュアップされ、自分たちの進むべき道が見えて来るのではないだろうか。

そのため、切磋琢磨し合える競合他社は良きライバルであり、これからも相乗効果により互いに向上しながらマーケットを盛り上げたいと考えている。悪質な製造や宣伝でオーバーヘッドスキャナーへの印象が悪くなること以外は基本的に大歓迎だ。
最後になるが、要求レベルの高い日本で評価された製品はどの国でも自信を持って販売できると確信している。今後も自分たちの強みを活かし、ユーザーに満足頂ける様なモノづくりを続けていきたいと思っている。

周 康(シュウ コウ)CZUR TECH CO.,LTD代表
大連理工大学在学中に大連荘傑コンサルティングを共同設立。その後、ホワイトハウスエンターテイメント株式会社を共同設立し、COOを務める。起業家ワークショップカフェの運営およびモデル起業家として活動を続ける傍ら、スキャナーの開発を進めるため2013年にCZUR TECHを設立。オーバーヘッドスキャナーの更なる普及活動に尽力する。