
- 「Uber Eats」配達員向けの割引プランは12月末に廃止
- 社会問題となった配達員の事故や交通ルール違反
NTTドコモ傘下のシェアサイクル運営会社・ドコモ・バイクシェアが好調だ。2019年の利用回数は1200万回だったが、2020年は9月末時点で前年同期比約120%となる710万回を突破。新規会員数(数字は非公開)も前年同期比で約130%と成長している。
ドコモ・バイクシェアの説明によると、緊急事態宣言中の4月は3月に比べて利用が約2割ほど利用回数が落ちたものの、5月のゴールデンウィーク以降、特に土日や休日の利用が増えた。買い物や近場へのに、3密を避けた移動手段としてシェアサイクルが活用されたという。
「Uber Eats」配達員向けの割引プランは12月末に廃止
この成長の一翼を担うのが、フードデリバリーサービス「Uber Eats」配達員の利用だ。増える配達員を囲い込むべく、ドコモ・バイクシェアは2016年よりUber Eats配達員向けの割引プラン「特別会員プラン」を東京と大阪限定でスタートさせた。このプランでは、月額4000円で、1回あたり4時間まで追加料金なしでの利用が可能。一般利用者(月額会員)の場合、月額基本料金は2000円で、1回30分まで無料のため、長時間継続して利用する配達員にとっては非常に便利なプランだった。
好調を博した特別会員プランだったが、同社にとっては想定外の課題も浮上した。それが、「自転車不足」だ。フードデリバリーの配達員は自転車を長時間使うため、一般利用者が使う自転車が足りなくなったのだ。またシェアサイクルは電動アシスト自転車だが、長時間利用によって、電池の切れる自転車も続出した。ドコモ・バイクシェアの広報によると、同社の用意する自転車は全国で約1万2700台。これでも台数が足りない状況だという。
加えて「配達員のマナー違反」も顕在化してきた。Uber Eatsを巡っては、配達員による事故や交通ルール違反に関する報道が後を絶たない。実際に被害が出ていて、社会的問題となっている状況だ。
4月には東京都・杉並区で配達員が事故死し、5月には配達員が自転車で首都高速道路に侵入。10月に配達員に衝突され怪我をした女性が配達員とUber Japanを提訴したと報じられたのも記憶に新しい。
こうした状況を鑑み、ドコモ・バイクシェアではリスク回避のため、特別会員プランを12月末で廃止する。
新規の申し込みは、11月30日の午後5時で受付終了。すでに契約済みの場合は、12月末をもって解約となり、以降はIDが利用できなくなる。
ドコモ・バイクシェアでは、特別会員プランの廃止後、Uber Eatsなどフードデリバリーサービスの配達員に向けた新たな割引プランを提供する予定は現状ないという。
社会問題となった配達員の事故や交通ルール違反
ドコモ・バイクシェアの広報はプラン廃止の理由について、「自転車台数の不足」と「道路の右側を走る“逆走”など一般的なマナー違反が目立った」と説明するにとどまったが、国民生活センターにも多くの相談が寄せられている。
今年度、「外食・食事宅配」に関する相談は4月から10月末の間に549件。前年同期の231件から約2倍に増えている。 国民生活センターの広報は事業者名を明かさなかったものの、フードデリバリーサービスの「配達員とぶつかりそうになった」または「配達員とぶつかった」という具体的な相談があったと説明する。
月額課金のサブスクリプション型ビジネスには安定収入を得られるビジネスメリットがある。だが、このままUber Eatsの配達員による利用が続けば、シンボルである赤い自転車自体の評判を悪くしかねない。フードデリバリーが爆発的に普及した今年、年末に配達員向けのプランを廃止するドコモ・バイクシェア、そして10月になってようやく京都府警と共同で配達員に交通安全講習を実施したUber Japan。すでに事故や交通違反が横行している中での両社の決断は、決して早い対応とは言えない。