
- コンパクトサイズの心地よさ。片手操作で画面の隅にまで指が届く
- 従来のiPhoneよりも約4倍強い本体は防水対応も万全
- ビデオカンファレンス用途としてはやや画面が小さい
- コンパクトなiPhone、SEと比べた満足度は?
- iPhoneの楽しみ方を広げる「MagSafeアクセサリー」
アップルは11月13日、有機ELの5.4インチSuper Retina XDRディスプレイを搭載する「iPhone 12 mini」の販売を開始する。iPhone 12 miniは“世界最小の5Gスマホ”であり、コンパクトスマホを好む日本のユーザーの手にも気持ちよくフィットしてくれそうだ。
コンパクトサイズの心地よさ。片手操作で画面の隅にまで指が届く
今年発売されるiPhone 12シリーズの4機種は、いずれも日本国内では4G LTEネットワークとの高い互換性を特徴とするSub-6(6GHz未満)の周波数帯による5G通信に対応する。

まだ国内で5Gが使えるエリアはさほど広くはないが、5Gで接続できる場所では動画の視聴や容量の大きなファイルのダウンロードなどが快適に行える。
国内では大手通信キャリアのNTTドコモ、au、ソフトバンクが2021年以降も5Gのエリアを積極的に拡大してくれることを期待したい。

iPhone 12 miniは“本体のサイズがミニ”なのであって、その実態は6.1インチのiPhone 12と同じ最新「A14 Bionicチップ」を搭載したほか、通信やカメラ機能も肩を並べるハイスペックなiPhoneだ。
アップルのサイトからSIMフリーの端末を直接購入する場合、容量が最も小さい64GBのモデルが7万4800円(税別)となっており、新たに発表された4機種の中で最も安く購入できる。5G対応iPhoneの入門機として位置付けられるだろう。
大きな特徴はやはり、片手で持ちながら画面の隅々まで親指でタッチ操作ができるサイズ感の心地よさだ。iPhone 12シリーズは本体側面のエッジを立たせたデザインになったので、ケースを付けずに裸で持つとグリップがとても安定する。
海外の人々に比べて、手があまり大きくないと言われている日本をはじめアジアの各地域で人気を集めそうだ。本機に注目している女性も多いのではないかと思う。

本体のサイズは4.7インチのRetinaディスプレイを搭載する第2世代のiPhone SEよりも少し小さく、4インチのiPhone 5sを横に並べてみると少し大きい。
画面上部のノッチ部分は引き続き残っているが、ディスプレイはオールスクリーンデザインとなっており、動画や写真は画面全体にイメージが広がる没入感が楽しめるほか、マップやメッセージなど全画面表示に対応するアプリではより多くの情報を一気に見ることができる。


背面に搭載するメインカメラは広角・超広角レンズを組み合わせたデュアルレンズカメラとなっている。iPhone 12シリーズは2019年発売のiPhone 11シリーズよりも明るくなった広角カメラを搭載している。
最も使用頻度の高い広角カメラが改良されたことで、暗い場所でも明るく色鮮やかな写真・動画が撮影できる。iPhone 11 シリーズから搭載が始まった、暗い場所の撮影をサポートする「ナイトモード」もiPhone 12 miniに継承されている。

サイズが大きいiPhone 12シリーズの他の端末に比べると、iPhone 12 miniのバッテリー容量は少なく、最大駆動時間は短くなる。とはいえ、iPhone SEよりもバッテリー持ちは良いし、筆者も数日使い込んでいるが、1日の外出中にいつも通りウェブやメールをチェックして、少し動画や音楽を楽しんでもバッテリーが尽きることは今のところない。
別売りの20W以上のUSBアダプターを使えば、30分で最大50%の充電が行える高速充電機能も備えているので、実用的には心配ないと思う。
従来のiPhoneよりも約4倍強い本体は防水対応も万全
フロントパネルのガラスには「Ceramic Shield」と名付けられた、強化ガラスの著名ブランドである米コーニング社とアップルが共同開発した新素材が使われている。
ガラスは細かな引っ掻き傷にも強く、「保護フイルムなどを貼らずにクリアな画面表示を楽しみたい」という期待にも応えてくれるだろう。
実際、iPhoneの強度は前世代の機種に比べて約4倍強くなっている。ただし、意図的に衝撃を与えた場合は言うまでもないが、立った姿勢で固い地面に落としてしまうとキズが付いたり、故障の原因にもなったりする。本機のコンパクトなサイズ、デザインの特徴を損なわないようなケースを装着した方が安心だろう。
iPhone 12 miniの本体はIP68等級に適合する防塵・防水・防滴対応だ。雨やシャワーによる水濡れに強く、キッチンや風呂場で使うこともできるが、念のため水に濡れた場合は水滴を軽く拭き取っておきたい。またケースを装着している場合は本体との隙間に水滴が残り、故障の原因になることもあるので注意が必要だ。

アップルはiPhone 12シリーズの発売に合わせて、米国の英語版ホームページで「Cleaning your iPhone」と題したガイダンスを公開している。その中で「70%イソプロパノール消毒液を使って外装を優しく拭く」ことについては問題ないと説明している。Lightning端子の本体に設けられている小さな穴の部分を濡れたままの状態で放置したり、iPhoneをまるごと消毒液等に沈めたりすることは厳禁とも書かれている。
ビデオカンファレンス用途としてはやや画面が小さい
iPhone 12 miniはスーツやパンツのポケットに入れて素早く出し入れできるサイズ感だ。エクスプレスカードとしてモバイルSuicaやモバイルPasmoを登録しておくと、交通機関の利用やモバイルペイメントがスムーズにできるのでおすすめだ。


モバイル通信は5GとギガビットLTEに対応するほか、Wi-Fiも最新規格の802.11ax(Wi‑Fi 6)をサポートする。屋外・家の中の両方で、それぞれの高速通信に対応する環境で快適なネットワーク接続ができる。画面が小さいので、大勢が参加するグループ単位でのオンラインカンファレンスや、YouTubeで開催されるオンラインイベントの視聴にはやや不向きかもしれない。別途、パソコンやタブレットを併用したい。
コンパクトなiPhone、SEと比べた満足度は?
コンパクトなiPhone SEと比べた場合、iPhone 12 miniとの価格差は3万円ほどある。高値に感じられるかもしれないが、5G対応や高機能なカメラ、ゆったりとコンテンツを表示できる高精細ディスプレイ、より強力な耐水性能など価格差に相応する価値は大いに感じられると思う。

あるいは操作性やデザインの好みでホームボタンが搭載されているiPhone SEの方が良いという声もあるだろう。またiPhone 12 miniが搭載する顔認証によるFace IDよりも、iPhone SEの指紋認証を使うTouch IDの方が外出時にマスクを着けたまま、画面のアンロックが素早くできるので便利に感じるかもしれない。
6.1インチのiPhone 12と使い勝手を比べてみると、筆者のように6インチ台のスマホに慣れてしまった人は、5.4インチへのサイズダウンに最初は戸惑うかもしれない。

筆者は特にソフトウェアキーボードの操作感、細かなWeb画面の文字表示に再度慣れるのに時間がかかった。iPhone 12 miniの発売後、店頭展示機などにゆっくりと触れてみて、使い心地を体験したうえで購入を判断してもよいと思う。
iPhoneの楽しみ方を広げる「MagSafeアクセサリー」
最後にiPhone 12シリーズの専用アクセサリーとして新しく登場するMagSafeアクセサリーを紹介したい。iPhoneの背面に搭載されている磁気パネルに吸着して固定できるアクセサリーとして、iPhone 12シリーズの発売と同時にMagSafe対応のワイヤレス充電器や本体ケースなどアップル純正品が発売されている。
中でもユニークな製品がレザー・ウォレットだ。iPhoneの背面にマグネットで固定できるカードケースにはクレジットカードや銀行のキャッシュカード程度に厚みのあるプラスチックカードが2枚前後入る。カードを1枚だけ入れた状態でも滑り落ちなかった。

ケースはiPhoneに磁力で吸い付いて固定されるので、カードに貼付されている磁気ストライプの磁気不良を引き起こさないか不安になるかもしれない。
だが、レザー・ウォレットは本体が磁気シールドになっているのでその点は心配がなさそうだ。レザー・ウォレットのパッケージに同梱されているガイドの通り、カードは磁気ストライプを外側に向けて収納するとより安心だろう。
iPhone 12 miniの場合は特にレザー・ウォレットを装着すると、本体背面にちょうど良い高さの厚みができるので、本体がさらに持ちやすくなる。アップル純正のMagSafe対応ケースであれば、ケースの上にレザー・ウォレットを装着することもできるので試してみてほしい。サードパーティのメーカーからもiPhoneの機能や使い勝手を拡張するMagSafeアクセサリーが続々と発売されることを楽しみにしたい。